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(5)松戸のソーシャルファーム日記 心を癒す農業の場として

 3月9日、火曜日。朝は14℃と寒くダウンジャケットと手袋が必要なくらいだったが、ハウス内に入ったら19℃まで暖かくなった。土日は休みで月曜は自宅待機日。3日間来ないだけでブロッコリーの葉が目に見えて伸びてた。

朝から会議

 水やりの準備をした後。今日は朝から農場長さんたちの会議で、その間は待機だ。同じ班の人といろいろ話した。どうやら彼女も私と同じく、初めて最初から障害者枠で入ったらしい。障害に理解のない職場はつらいものだ。

 前の職場では途中からADHDだと分かり、障害者枠での雇用となったが。現場の人たちは最後まで冷たい人もいたし、知的障がいのある子たちもダンボールのテープはがしとか、そんな仕事しかさせてもらえなかった。彼らにこそ、今通っているような農園が向いていると思う。

 私はどこの施設から紹介されることもなく、自分で探してここに入ったと話すと、ずいぶん驚かれていた。

スーパーの野菜と違ってた

 11時を回ってから、水菜の収穫に入る。根元を引っ張って、軸をハサミで切るのはチンゲン菜と同じ収穫方法だ。ただこちらは量が多い。出荷前の洗いも含めて結構な手間となり、午後は水菜とサニーレタスの洗いと脱水に袋詰めでまるまる時間を使った。

 本社に送られる野菜の中には、絹さやとスナックえんどうもあった。一見して見分けがつくのかとも思ったが、絹さやは中のつぶつぶが透けて見えてスナックえんどうはさやが厚い。グリーンピースに近いようだ。

 ここの野菜は一般のスーパーに並ばず、直売所などもない。農園の区画を借りている雇用主の会社に送られて社員食堂で使われたり、本業がホテルや飲食業の場合はお店で出すこともあるらしい。

 自分が野菜を育て、送り出す側になると。スーパーの野菜を見る目も違ってくる。チンゲン菜は見栄えがよくなるよう処理してあるし、水菜には茎がすごく長いものがある。たぶん種類が違うか、特別な手間をかけているのだろう。本職の農家さんには叶わないな、と思った。

農業セラピーの場として

 外部からの批判を受けて、野菜の品質向上に留意している。柏ファームでの説明会や農場体験では、確かにそう聞いた。けれどソーシャルファームには、別の役割があるのではと私は思う。だから本職の農家さんと過度に張り合う必要はない。ここの農園は初心者向きで、肥料は液肥のみと簡略化された部分もある。

 注目したいのは、アグリセラピーや園芸療法の場としての意義だ。甥っ子や姪っ子がいる私には分かるが、新しい命の成長を見守るのは心癒されるものだ。植物なら成長はもっと早い。今は他の人の育てた野菜を収穫させてもらっているが、いずれ種まきから関わったオクラなども芽を出すだろう。

 今回はかなりお土産をもらった。水菜にほうれんそう、サニーレタスに春菊。水菜はゆでたのをそうめんつゆで頂いたり、レタスと一緒にサラダに。ほうれんそうは元からおひたしで頂いているから、それに使われたのだろうか。家計の助けになるのもありがたい。

 農園ではたらくスタッフさんの6割は、知的障がいのある人。彼ら彼女らへの配慮は、十分にできていると思う。基本的にピュアな子たちだ。中には好奇心から際限なく周囲に話しかけてしまう子もいるが、私も出来る限り面倒を見るようにしている。時には思わぬ知識を得ることも。作家の私には、何かと新鮮な体験だ。

 今後の課題は、ADHDなど精神障がいを持つ人へのケアだろうか。適応障害で苦しむ人に、穏やかな農園は助けとなるかもしれない。もちろん農場長さんや、エスプールの社員さんたちへの負担も相応にある。彼らは普通に、5日間出勤だとも聞いた。緊急事態宣言が明ければより忙しくなるだろう。心に余裕のある私も、何か支えになれればと思う。

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