見出し画像

ドラクエウォーク運営さん、ガチャによる搾取をやめてください

非常識な「常識」

 5万円と少しかかります。
 ガチャで、ピックアップ武器ひとつを確定入手するまでの必要金額。

 10連ふくびき1回に3,000ジェム必要×20回=60,000ジェム必要で、一番お得になる1万円のジェムパックG(ジェム10,000個+おまけ1,720個)を5回購入して、58,600ジェムになりますので。

 途中で運良く目的の品が出る可能性については、ここでは考慮しません。出ない人は出ないので。

 ゲーム内のアイテムひとつに、据え置きゲーム機本体くらいの「定価」がついているのです。一般常識から逸脱していないでしょうか?
 50,000円あったら、他にどんな有意義なお金の使い方ができるでしょう?

 この記事を書いている時点で、私はイベントなどで無償配布されるジェムを13,000ほどためていますが、それでもニンテンドースイッチ本体より高価です。

 これが、ガチャゲー業界における「常識」です。

 コンプガチャ問題など、世間からの多大な批判もあって大手各社は業界団体で自主規制を設けました。そのガイドラインに従ってもまだ、このありさまです。

 これは法律でないので、団体に属してない企業への強制力はありません。未加盟企業には、ガチャを一定回数回せば強力なキャラやアイテムを必ず入手できる「天井」を設けてないところもあります。やりたい放題です。
 もうひとつ、疑問があります。このガイドラインはオンラインゲームユーザーの声を反映したものと呼べるでしょうか。たとえば、上限金額を5万円に決めた合理的な根拠をユーザーに対して説明できるでしょうか。おそらくできないと思われます。密室で物事が決まる、政治の世界みたいですね。

 ドラクエウォークのふくびきはまだ良心的な部類かもしれませんが、ゲーム業界を代表する企業のひとつとして。スクエニさんは、この程度では満足しないでください。かつて一時代を築いた「高貴なる者の責務」です。

 まだまだ、一般常識との溝は深いのですから。

私とドラクエウォークの関わり

 私がドラクエウォークを始めたのは、2020年の3月末から。ちょうどコロナ禍でステイホームが叫ばれていた時期に、運動不足解消のため散歩のお供として始めました。今では生活の一部です。
 ドラクエウォークも「外に出て遊ぶ」ゲームのため、コロナから多大な影響を受けながらも自宅で遊び易くなる工夫と改善が多々見られ、ソシャゲ業界の中では珍しく好感の持てる部分もありました。

 それまでほとんど近所を散歩してなかった私は、ドラクエウォークをきっかけにいろいろな発見をしました。地元の文化や歴史にも大いに興味を持つようになりました。それらを元ネタに、小説「悪い夢はネカ魔女がMODりますの(略してワルネカ)」を書いています。

・なんで現実とゲーム世界が重なってるの? → あれは夢の世界
・こころって何? → 結晶化した「思い出」。共に戦う相棒にもなる
・伝説の武器が何本もあるよ? → 神霊の宿った形代(レプリカ)だから

 などなど、ドラクエウォークから得た創作アイデアはたくさんあります。強敵攻略やレベル上げだけが、RPGの楽しみ方ではありません。RPGは想像を刺激する遊びなのです。

用心深くなった消費者

 ドラクエウォークではたくさんの攻略動画がアップされています。その流れで、他アプリの炎上騒動について解説した動画もたくさん見ました。
 従来のゲーム雑誌では、決して報じられないニュースの数々。広告を掲載している企業に「不都合な」情報を扱うわけにはいかないからでしょう。

 ですが「何年何月にサービス終了したゲーム」系の動画は、貴重な失敗事例のサンプルに満ちています。ここで紹介されたゲームと同じ間違いを繰り返さない努力をすれば、間違いなく長寿運営の助けになるはず。

 ご本人たちにそういう意図は無いのかもしれませんが、動画配信者さんの果たす役割は大きく、あなどれない影響力があります。崇高な使命感でなくただアクセス数を稼げる動画を作りたい動機でも、一種の独立系ジャーナリズムとして機能する様子は、週刊誌に通じるものがあるかもしれません。

 また、コメント欄に寄せられる視聴者の声は「民意を映す鏡」ともなります。ひどい政策は炎上する、その点では運営型ゲームも政治の世界と変わらないように思えます。炎上によって運営が火消しを迫られる様子は「ゲームの民主主義」と呼べるかもしれません。

 いちユーザーの目から見れば、暴論かもしれませんが「スクエニの知的財産を使っている商用ゲームは、開発や運営がどこでもスクエニのゲーム」と思われるのではないでしょうか。スクエニさんのガチャゲー全てに疑いの目が向いている状況です。

 多くの動画配信を通じて、消費者は賢く用心深くなったでしょう。運営の思惑に踊らされることなく、今度のガチャにはジェムを使うべきか、次のガチャまで無償配布のジェムを温存すべきかを慎重に比較検討する程度には。

 さらに、長年に渡って様々なメディアでガチャの問題点が報じられ続けた結果、消費者はガチャに対してこれまで以上に強い警戒心を抱いていると私は考えます。多くの人が無課金ユーザーでいる根拠です。私もゴールドパス購入で運営さんを応援していますが、ガチャに有償ジェムは使いません。
 射幸心や収集欲を煽って必要以上の浪費を誘うやり方は、現在の環境に合わなくなってきているでしょう。ドラクエウォーク的な表現をすれば、ユーザーに「ガチャへの耐性○%」がついたのです。

 追い打ちをかけるように、海外でも「フェアな販売方法でない」との観点からガチャの法規制が進みつつあります。ガチャにこだわることは、海外進出の可能性を自ら潰すことにもなりかねません。

1人から5万円より、10人から5000円を

 私はドラクエウォークが今後も長く、ユーザーに愛されるゲームになってほしいと願います。位置情報ゲームには、GPS搭載のスマホでしか遊べない強みがあります。しかもドラクエウォークは、先行のポケモンGOともかなり違った内容に仕上がっています。これが「出来損ないのガチャゲー」として短命に終わってしまうのは、もったいないではありませんか。

 ドラクエウォークはサービス開始時の100億を超える爆発的な売り上げですでに開発費を回収しきったのではないかと思われます。でしたらその有利なポジションを「次」に向けた実験の場として活かすべきです。

 ドラクエウォークほどの大型タイトルともなると、人件費やその他の運営費も相応にかかるでしょう。けれど、渋い渋いと誰もが口をそろえて不満をこぼすような「ガチャによる搾取の場」で終わってはいけません。

 私の考える長期運営の処方箋は、以下の通りです。

1人から5万円取るのではなく、10人から5000円ずつ出してもらう

 射幸心を煽らない、寄付やクラウドファンディングに近い立ち位置です。私たちは運営を続けていくのにおおよそいくら必要で、その財源はここから確保しています。そういった「説明責任」を果たすことも必要でしょう。
 極端な話ですが、ユーザーからの寄付だけで運営しているウィキペディアやChange.orgのように。

 ただし、多くのユーザーがガチャ搾取に強い警戒心を持つ現状では無課金の人に少しづつお金を出してもらうことも難しいと思います。特に、以下のふたつは問題でしょう。

画像1

 一番クセモノなのがこの「有償ジェム1,500個で★5装備1枠確定」です。運営側の目線からすれば、通常ふくびきの半額で★5がひとつ確定だからお得じゃないか、と思いますが。わざわざ有償ジェムを使う価値を見つけられません。
 たいていの場合は、ピックアップではないSP装備が1個出て終わりです。1,500円騙し取られたような気分になります。これなら無償配布されるジェムを使うか、歩いた歩数でたまるウォークマイレージをふくびき補助券に交換し、普通の10連ふくびきを回す方がいいでしょう。

 またSP装備も、通常の期間限定ふくびきから十分な数が出ますのでわざわざ個別のふくびきにする必要性を感じません。ふくびきから除外された装備がマイレージで交換できるようになりましたが、サービス開始時からある「型落ち品」は全部、マイレージ交換可能にしてもいいくらいです。

 さらにはイベントのたびに配布される「ふくびき補助券」や無償ジェムも結局は、有償ジェムでガチャを回させる「呼び水」でしかないのでしょう。せっかく歩いてためたウォークマイレージも、ふくびき補助券に交換してガチャを回した途端にゴミと化す。このやり方では、ユーザーはますます警戒心を強めるばかり。
 では、どうすれば無課金の人が警戒を解いて、財布のヒモを緩めてくれるでしょうか。答えは簡単です。

ほしいものを直接、選んで買える

 これだけです。ただし現状のゲームバランスは、強力な装備がなかなか手に入らないことが前提になってるでしょうから上手く折り合いをつける必要があります。そこで、こうしてみてはどうでしょう。

ガチャ vs それ以外で、売り上げを競う対決イベントに

 最近、バレンタインで「りゅうおう」と「ゾーマ」のどちらからチョコをもらいたいか、というユーモアのあるイベントがありましたね。人徳の差で勝敗は明らかだったと思いますが。
 こんな感じで「スクウェア・エニックスが脱ガチャ依存に向けた壮大な実験に取り組んでいる」と報道されるような「通年イベント」を仕組んでやりましょう。企画が良ければ、宣伝効果も見込めます。

 ガチャに代表されるランダム型アイテム販売方式と、ほしいものを直接選んで買える販売方式を数年間並行してテストし、売り上げやユーザーからの反響を見て「今後のスクエニ産ガチャゲー全体の」方針を検討するのです。
 それぞれの「陣営」には、以下のような特徴が想定されます。

ガチャ陣営(チャンピオン側)

・期間限定イベントなどで真価を発揮する、最新の高性能装備を手に入れてすぐに使える。

・ガチャなので、入手はかなり運に左右される。運営側にとってもバクチ要素が高い。

・短期的には売り上げを得やすいが、長い目で見るとユーザーとの関係を険悪にし警戒心を強める。フリーライダーを増やしやすい。

・海外展開には不利。将来的に、日本でも法規制の実現で運営会社にとって不本意な形で市場を引っかき回される可能性がある(格安スマホ業界が壊滅するような形で)

・将来、ゲーム業界を目指す若者が減る可能性がある(親世代がガチャの害悪を知っており、進路選択に強く反対する。それ以前に夢がなくなる)

脱ガチャ陣営(挑戦者側)

 ガチャ以外の課金要素であるゴールドパスが売り上げの主役になるため、以下のテコ入れを行います。

・ゴールドパス購入者は、ふくびき補助券で回した10連ふくびきにも「スタンプカードの半分まで」スタンプがつく。これでためたマイレージが一瞬でゴミと化す徒労感から解放される。

・ゴールドパス購入者は、最新装備の「見た目だけ版」をセットで安く購入できる。これは見た目装備の欄にしか装備できないが、その装備がしばらく後に復刻されたとき安価で「本物にアップグレード」できる。旬の時期は逃すが、少ない金額でほしいものを確実に入手できる。運営側には1粒で2度おいしい。

・過去のガチャ産装備のうち、現在の環境では性能が劣る「型落ち品」は、マイレージ交換で入手できたり、安価で直接セット購入できる。

・多くのユーザーに広く浅く課金してもらうことで、ガチャのイメージが「射幸心を煽って搾取する」から「寄付に対して返礼品を渡す場」に変化する。少数の重課金ユーザーで多数の無課金ユーザーを支える、年金問題のように歪な構造が改善される可能性がある。ガチャの法規制が実現しても、生き延びる可能性が高まる。海外展開にも有利。

・1日1回、フィールド上で弓矢を使って遠くのイベントスポットを狙い撃つ(タップ)できるようにする。ゴールドパス所持者は、1日3回まで回数が増える。さらにどこの「的」がタップされたかは運営側に送信される。こうすればプレイヤーが私有地などに立ち入るのを予防でき、同時にイベントスポットの配置を見直す参考データも得られる。歩いて到達困難な場所は、必然的に弓矢で多く狙われるので。

運営の方針に「介入」する根拠

 すべての運営型ゲームは、ネット上にユーザーの「コミュニティ」を発生させる。
 運営会社は、運営型ゲームの「政府」にも等しい存在。ユーザーは国民。そこには必然的に「民主化運動」が起こる。コミュニティが成熟し、世論が形成されれば、一方的な強権支配は許されない。
 これが「ゲームの民主主義」です。

 そして日本では、頭の硬いお役所よりも「民間企業の創意工夫」が信頼できる。私はそう考えます。2021年2月現在、私はこの記事に書いたプランを実現させるためChange.orgでの署名キャンペーン立ち上げを検討してます。署名の送り先は消費者庁ではなく、スクウェア・エニックスです。

ユーザー側もひとつ、反省することがある

 私は、ユーザー側に都合のいいことだけ要求して終わるつもりはありません。知り合いにゲーム業界で働いていた絵師さんもいますし、あるゲーム会社の社長さんとも過去に交流がありましたので。

基本プレイ無料が、ガチャという怪物を生んだ

 ゲーム開発には、お金がかかります。ましてや運営型ゲームは終わりの見えない長期戦ですから、資金でも人員でも相当の負担が生じます。そのために追加パッケージがあったり、有料DLCがあったり、完全版があるのは否定しません。ガチャも、その中のひとつでしょう。
 ゲームには、関わる人の血と汗と涙が流れているはずです。だから、無賃乗車でおいしいとこだけいただこうってのは失礼にあたります。

 けれども、ユーザーが納得いく形での「説明」と「お金の集め方」はセットであってほしいものです。「論語と算盤」。

 2024年、日本資本主義の父・渋沢栄一が1万円札の顔となる頃には、彼の志「道理にかなった商売」が浸透する世の中であってほしいですね。

アーティストデートの足しにさせて頂きます。あなたのサポートに感謝。