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商人のDQ3【76】インディペンデンス・デイ

「ヴィンランドの勝利だ!」
「独立ばんざい!!」

 ヴィンランドの街が、独立戦争の勝利に沸いています。シャルロッテたちの努力もあって本土ではほとんど大規模な戦闘になりませんでしたが、実際のアメリカ独立戦争初期にあった駐留軍との小競り合いはあったようです。

 ヴィンランドの少数精鋭エジンベア城を急襲し、国王が敗戦を認めて書類に調印したと。ヴィンランド各地を旅した経験のあるソルフィンと住民の代表たちが各地をキメラの翼で回って、正式な書類込みで情報を伝達して。大きな混乱もなく、エジンベア軍は武装解除退去に応じる段取りとなりました。

 ですが、問題はまだ山積みです。

「なんと、わしの首さえ要らぬとは」
「オレたちは、エジンベアに対等で公正な取引相手であってほしいだけだ」

 エジンベア王とソルフィンのやりとりを見て、シャルロッテが満足そうにうなずいてます。誰より暴力と略奪を嫌うソルフィンなら、今後も良い関係を築いていけるでしょう。

「申し訳ないが、ボストン茶会事件の賠償については…」
「わしの身代金と相殺だと思って、請求せんよ」

この時投棄された茶の損害額は1,000,000ドルに上るといわれ、この事件には植民地人の間においても賛否がわかれ、東インド会社の賠償請求に対してベンジャミン・フランクリンは私財をもって「茶の代金(茶税分を除く)」の賠償を試みようとしている(結局賠償はされなかった)。

 何とも手痛い授業料だったと、のちにエジンベア王は振り返ります。植民地側の人々が求めた「代表なくして課税なし」も、元はといえば自国が決めたルールを自分が守らなかっただけでした。

人民が自ら選出した代議士の承認無しに政府が人民を課税することは不当であるという理念自体は、13世紀に制定されたマグナ・カルタに由来するもので、以来イギリス法において長らく人民の権利の一つとして保証されてきていた。

 戦争が終わったら、ノーサイド。これまで敵味方に分かれてた相手とも、まともな関係を修復しないといけません。それが外交というもの。

懲罰復讐の感情に囚われたら、それが新たな戦争の火種になるでち」

 以前、ポルトガとバハラタの間で和平交渉の場に立った経験を叩き台に、シャルロッテが今後の対応について、双方の得となる提案をします。

「魔王軍がいる以上は、人間同士で団結しなきゃな」
「じゃが、奴隷問題はヴィンランド側にも頭が痛かろう」

 ヴィンランド経済を支える大規模農業、プランテーション。その働き手はエジンベアの手によって、アフリカから運ばれてきた奴隷たちでした。

 現実の歴史では、アフリカにおいて現地人同士の間で起きた戦争において敗者が奴隷とされ、海外に売り飛ばされました。しかし、これはアフリカの人口バランスを大きく歪め産業発展の妨げともなりました。

 こちらの世界だと、暗黒大陸ネクロゴンドに魔王軍が居座っているせいで人類側の産業発展は妨害され、生き残った人々も迫害され続けます。そこをうまい話があると言って、奴隷商人が海外への「出稼ぎ話」を持ちかける。発端は違っても、結局多くの奴隷たちが劣悪な環境の中で海を渡り、ヴィンランドへとやってきました。

「奴隷しゃんが航海の途中で死んでも船主に責任も賠償もなしなのは論外でち。ブラックな派遣業者には、お仕置きでちよ」
「その件については、こちらでも善処しよう」

 奴隷もとい人材派遣業は、エジンベア経済の要。国王もさすがにこの機会に歪みを正すつもりのようです。金の卵を生むニワトリを殺してしまったら元も子もないと。

「オレたちは、奴隷への差別を禁止し。対等な市民として受け入れ、衣食住の向上に努めてきたが。その分、全体の生活水準向上は緩やかだ」

 極端な格差が生まれにくくしている代わりに、みんな平等に貧しい理想への途中経過として避けられないけどねと、ソルフィンが語ります。
 でも彼らの努力のおかげで、ヴィンランド合衆国では南北戦争が起こらないかもしれません。あれも奴隷の扱いを巡って起きたことですし。

 やっぱりこの世界は、お金に厳しい。なかなか思い通りにはいかないものですね。

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