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商人のDQ3【20】アミダくじの塔

 正式名称で呼んでもらえない、かわいそうな塔です。しかも攻略必須ではなく、ゲーム中では誰もその名前を口にしてくれません。
 なので「お金に厳しいDQ3」では、攻略に必須の重要イベントがある塔にしてみました。カンダタの発言で、強力に誘導する動線を設けて。


 シャルロッテたちが長旅の末、たどり着いた塔の名は「アープの塔」。西部開拓時代の保安官、ワイアット・アープに由来するそうです。

 なお、初期の「アミダくじ」はその名の通り、阿弥陀如来の後光の形をしていたそうです。びっくり。

「ありました、裏口です」

 アッシュ少年がホッとした様子で、カードキーを壁面の溝に通して読み取らせます。この世界でのアープの塔は、古代アリアハン超文明の遺産。銀色に輝く、機械仕掛けの高層タワーです。
 間もなくピッと読み取り音が鳴ったかと思うと、ガチャンとドアのロックが解除されます。

「本当に開いたでち!」
「正面から入らずに済んで、命拾いしたな」

 シャルロッテとクワンダを見て、マリカも胸を撫で下ろします。

「もう、機械の怪物はこりごりよ」
「あんな奴らと戦ってたら、命がいくつあっても足りないからな」

 一行が船で、アープの塔が遠目に見えるくらいの距離まで来たとき。突然爆発音が空気を震わせて、塔の前から煙が上がるのが見えました。
 ドラクエ3の世界にスエズ運河はありませんが、ソルフィンのバイキング船はパーティ全員で担げば陸路を移動もできる優れもの。その特性を活かして太平洋側へ回り込んでいたのです。

「ここで船を降りて、慎重に塔へ近付こう」

 ソルフィンの判断で、一行はカリフォルニア湾に相当する入り江に船を停め。ロサンゼルスのあたりにある、アープの塔へ警戒しながら接近します。

 するとそこでは、魔王軍の人型キラーマシンと、塔の入り口を守る巨大な機械のドラゴンが「OK牧場の決闘」を連想させるような激しい戦闘を繰り広げているではありませんか。

 魔王軍の側は、先日スーの村を襲っていたター○ネーターもどきの同型機が3体。驚異的なタフネスを誇る難敵ですが、1体はすでに巨大な機械竜に踏み潰されて爆発炎上しています。メタルドラゴン恐るべし。

「魔王軍、古代アリアハンの遺産をしぶとく狙ってますね」

 アッシュ少年の言葉に、シャルロッテはいざないの遺跡でオリハルコンのキラーマシンに挑んで返り討ちにあった魔王軍モンスターの無残なしかばねを思い出します。

「そりで、動かなくなったキラーマシンをどっかで見つけて強化改造したのを手駒にしてるみたいでちゅね」

 人型に偽装していれば、街などに紛れ込んで要人暗殺などの任務もこなせます。この世界の魔王軍は、少なくない数のモンスターに反乱を起こされて戦力を減らしていますが、それをアリアハンの遺産で補う魂胆のようです。

「ここは戦闘を避けて、裏口から入れないか探してみましょう」
「賢明な判断だな。熟練の冒険者は、無闇な戦闘はしないものだ」

 アッシュの判断を、ベテランのクワンダも高く評価します。

※ ※ ※

 塔内への侵入を果たしたシャルロッテたち。しかしすぐに、またげんなりさせられます。

「げげっ!」
「またキラーマシン!?」

 シャルロッテとマリカが、うんざりした様子で顔を見合わせます。幸い、まだ動き出してはいませんが、通路の両側には大量のキラーマシンがズラリと並んでいます。

「下手に近付けば、動き出すかもな」
「かと言って、迂回ルートもないか…」

 ソルフィンとクワンダも困り顔をしていると、アッシュ少年が道具袋から奇妙な眼鏡を取り出してかけ、あたりを見回しました。

「赤い光を避けて通れば、起動しないと思います」
「どこでちか、アッシュしゃん?」

 アッシュが奇妙な眼鏡をシャルロッテに渡して、かけてみるように促します。するとどうでしょう。

「見えない罠でちかっ!?」

 それまで何も見えなかったところに、眼鏡を通して見ると赤い光が複雑に張り巡らされています。赤外線ゴーグルでした。

「これも、いざないの遺跡でカードキーと一緒に見つけました」
「まさに、魔法の眼鏡だな」

 ソルフィンが、アッシュ少年から眼鏡を貸してもらって感心しています。

 こうして一行が、キラーマシンの並ぶ廊下を無事潜り抜けたと思ったとき。いきなりけたたましい警報音が鳴り響いて、壁の両脇に並ぶ一つ目が次々と赤く点灯し始めます。起動シーケンスに入る殺戮機械たち。

「だ、誰でちかミスったのは!?」
「あたしじゃないわよ!」
「とにかく走れ!」

 狭い階段なら、キラーマシンもいっぺんには殺到できません。一行は階段を駆け上り、襲撃を避けようとしますが。

「みなさん、止まってください!」

 キラーマシンの下半身を改造した車椅子で、階段を登れるようにもなっていたアッシュ少年が警告の叫びをあげます。

「わわっ、落ちまちゅ!」

 まるで子猫のように、クワンダに首根っこをつかまれてすんでのところでキラーマシンがひしめく下の階に落ちずに済んだシャルロッテが。目の前に広がるアミダくじのようなタイトロープをにらんで、難しい顔をします。

「これを渡るの?」
「渡らなければ、キラーマシンが押しかけてくるぞ」

 怖がる女性陣に、後方を警戒しながらクワンダが告げます。一方で、ソルフィンは無言でひょいひょいとロープを渡っていきます。さすがは、身軽な短剣使い。

 まさにサーカスのような、綱渡りの大冒険です。


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