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『徹子の部屋』フワちゃんの「徹子さんかわいい」が届くまで

もう1週間近く前のことだ。『徹子の部屋』(7月10日)のゲストがフワちゃんだった。

このマッチメイク、「暴走するフワちゃん vs 芸人を沈めてきた徹子」だと思って楽しみにしていた。でも、最後まで見ると全然違った。

フワちゃんが何度もドアをノックして、徹子もそれを受け入れている。この二人、すごく仲良くなったんじゃないかな、と思わせる最後だったのだ。

確かに、最初のドアノックはかなり強めだった。

いつものように自撮り棒片手に「おはぴよ~」と登場するフワちゃん。「令和時代のお笑い芸人、新しい人気者フワちゃんが今日のお客様です」と、「フワちゃん」を「クロちゃん」と同じイントネーションで紹介する徹子。まだしゃべってる徹子にフワちゃんは「来たよ~」と手を振り、「いっぱいアタシのこと調べてくれてありがと!」と礼を言う。

ハイテンションなフワちゃんに「なに食べたらそんなに元気になるの」「(お尻を出しても大丈夫!というフワちゃんに)それはあなたが言っていることであってね」と、徹子も応戦。

しかし開始2分半、徹子が「ん?」ってなる場面がくる。

徹子「テレビでは大物の方に会っても、物怖じせずに敬語も使わないってうかがったけど」
フワ「ふふふ(笑)そういうところがある。うちらって似てるから
徹子「ん?なにが似てる?」
フワ「トットちゃんも敬語あまり使わなかったから、あたしも徹子さんとお揃い」

「トットちゃん」とは、もちろん黒柳徹子のこと。

フワちゃんは小学校3年生のときに『窓際のトットちゃん』を読んで読書に目覚めたという。だから、この日『徹子の部屋』に出るのを本当に楽しみにしていたというのだ。

フワ「ほんとね、校長先生の愛の話もすっごい最高だったし、トットちゃんを包むママの話もすっごいよかったし、山のもの海のものの話も大好きだし、エヘヘ……。それを見て、すっごいこんなに楽しい生き方があるんだ!って、すっごくアタシの人生の本になっちゃったの」
フワ「アタシも、トットちゃんが退学になったように、上手に生きることがあんまり上手じゃなくて、なんかね、バイトを15回もクビになっちゃったの(中略)でもやっぱり、トットちゃんを読んで『ホントはすごくいい子なんだよ君は』っていう」
徹子「校長先生の」
フワ「そう、そうなの。あの台詞が言ってくれたように、アタシも最初バイトをクビになったときは悪い子って言われてたけど、いま、そういうちゃんとした生き方をテレビで見つけたらいい子になれたから、そういうのアタシの心でいつでも大切に思ってる」

テレビに出て、特に誰かから「いい子」と言われたわけじゃないけど、アタシが自分で思ってる、と言うフワちゃんに、徹子は「上半期100回もテレビに出るっていうことは、みんながあなたのことを”いい”って思ってるからだもんね」と声をかける。

子供のころ、本の中から自分を肯定してくれた人に、大人になったいま面と向かって直接肯定してもらう。こんなに幸せなことはないんじゃないだろうか。

「徹子さんかわいい」が届いた瞬間

中盤は徹子のリードで話が進む。

帰国子女のフワちゃんが、英語を覚えるきっかけになった「事件」のこと。アグレッシブな父と、ちょっと天然な母のこと。高卒で芸能人になる!と思うも「お前アホか!ベッキーも大卒だぞ!」と先生に言われて大学に進学したこと。性善説を知り「すっごいポジティブでギャルっぽい」と思って中国哲学を専攻したこと。

徹子「あたしも性善説好きよ」
フワ「え~ホント!うちら性善説同盟じゃん」
徹子「まぁあなたと同盟組みたいかどうかは別として(笑)」
フワ「ヴェ~~(笑)」

フワちゃんがちょっかいをかけては、徹子がそれをいなす。その様子も、芸人が爪痕を残そうとするもスベる「徹子の部屋あるある」の感じではなく、わざと否定して笑いに変えるコミュニケーション。それって相手を信頼していないとできないこと。

終盤。ポジティブの秘訣を話したフワちゃんは、「徹子さんもポジティブ?」と聞く

徹子「アタシは全然ポジティブね」
フワ「だよね(笑)思った」
徹子「アタシは母の体内に『反省』という文字を忘れてきたと、母に言われたんです(笑)」
フワ「アハハ(笑)かわいい。徹子さんかわいい」
徹子「どうも恐れ入ります(笑)フワちゃんにかわいいって言われた」

フワちゃんは番組冒頭からずっと「徹子さんかわいい」と言っていたのだ。

その言葉がようやく届いた瞬間だった。間違っていた「フワちゃん」のイントネーションも、すっかり直っていた。

徹子「今日、トットちゃんに会った感想はどうでしたか」
フワ「もうすっごい、チャーミングでラブリーで優しくて大好きでおっきくて、みんなに優しい。すっごいかわいい」
徹子「ホント?」
フワ「ホントに嬉しかった!もう全員に自慢する、今から帰り道会う人全員に自慢する」

♪ルールルと、番組テーマが流れ出す。いよいよエンディング。フワちゃんは「帰りたくない!」と椅子にしがみつく。

徹子「帰りたくない? でもこの音楽が鳴ったら帰らなくちゃいけないの」
フワ「ヤダー!じゃ一緒になって歌っちゃお。♪ルールールールルル~」
徹子「フフフ(笑)そうやってらっしゃい(笑)」
フワ「徹子さんも一緒に歌おう?」
徹子「やだ」

フワ「アハハハ!」
徹子「ウフフフ(笑)」

「歌おう?」から「やだ」が返ってくるスピードはとても速かった。「嫌です」でも「いや」でもなく、「やだ」。

大好きな人に「だいすき!」と言い続ける。その気持ちが届いて、短い時間で距離が縮まる。ポジティブな二人が共鳴する。その一部始終を見た。とても幸せな30分だった。

番組途中でフワちゃんが徹子さんにあげたピン止め、最後までちゃんと付けたままでしたね。


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