『ベルリンうわの空 ウンターグルンド』を読んでベルリンの路線図を味わう
香山哲さんの『ベルリンうわの空 ウンターグルンド』を読みました。楽しみにしていたので、じんわり味わいつつも、それでいてあっという間に読んでしまった。余韻にひたる……。
前作『ベルリンうわの空』がベルリンの日常や文化の「体験記」とするなら、今作はベルリンの「生活」をより深掘りするもの。「地下の空きテナントに“清潔スペース”を作る」という活動を通して触れる、ベルリンの公共・福祉・社会保障。異文化をゆったりと、押しつけがましくなく、それでいてはっきり伝えてくれるたたずまいは、ベルリンの住人たちのスタンスと通じていて、日本にいる自分もここから何かインストールしたいな、と思うのだった。
で、この『ベルリンうわの空』シリーズ、読んでいると交通機関がちょくちょく出てくる。登場人物たちが会話する舞台として。そして、さまざまな人たちが居合わせる「社会」として。
例えば「ウンターグルンド」の21ページ。Sバーンの駅を聞かれて答える場面。次のページをめくると連節バスが止まっていて、その次のページには「U」と書かれた地下への入口がある。
ドイツにおいて「Sバーン」は地上鉄道で、「Uバーン」は地下鉄だ。路線図はこうなってる。地上を走る環状線に、網の目に走る地下鉄たち(以下、路線図はベルリン市交通局から引用)
ちなみにドイツ語で路線図はLiniennetz(ラインネットワーク)。Google画像検索でLiniennetzを検索するとドイツの路線図がたらふく出てくるので覚えておくと幸せになれます。
鉄道のほかに重要な交通機関といえばトラム(「ウンターグルンド」なら85ページ)。路線図を見ると、ベルリンの北東部を中心に走っていることがわかる。
ドイツ語の駅名ってとても長くて、路線図も文字が占める量が尋常じゃ無い。でもドイツの路線図は縦横斜め45度のダイヤグラム型を守りつつ、駅名もきっちり入れ込む。これはベルリンに限らず。お国柄なのかなぁと思っている(あとスイスの路線図もエグい)
ベルリンはバスもたくさん走っている。路線図はめちゃくちゃデカいので一部だけ抜粋。これもダイヤグラム型。ベルリンテレビ塔などのランドマークもあって、観光客に優しい。
「ウンターグルンド」の202ページに「ナハトブス」という乗り物が登場する。綴りはNachtbus。夜間バスのことだ。
夜間バスの経路はさっきのバス路線図にも書いてあるんだけど、それとは別に地図ベースの路線図も用意されている。
地下鉄路線図がダイヤグラム型で描かれがちな一方、バス路線図は地図ベースで描かれがち。駅と駅とのつながりが分かれば用が足りる地下鉄に対し、バスは地域に密着しているだけに「ここに来るのか」「ここを通るのか」をきちんと把握したい。
視認性の高いダイヤグラム型とは別に、地域性を考慮した地図ベースの路線図も用意しているのはとてもユーザフレンドリーだなぁと思う。
路線図を見て、さらに物語に戻ると、登場人物たちがこの線の上を行ったり来たりしてるんだろうなぁ、と思える。主観から俯瞰に視点が移る感じ。『ベルリンうわの空』をより楽しめるんじゃないかと思うのです。
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