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雨の日に。

きのう、雨降りでした。


電車の中から、ぼんやり空と灰色の街を見ていたら、

高層ビルとビルの隙間に大きな大きな金色の龍がいたんです。

ガラス張りの建物に寄りかかって、目をつぶって休んでました。

ウロコ一枚一枚が、ちょうど私の頭ぐらいの大きさで

呼吸にあわせ、きらめきを放っていたのです。


息を呑んだ私を、ちらりみて

雷のような速さで空へ登っていきました。

本当です。


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きのう、雨降りでした。


突然だったので、私は傘も持っていなくって

お店の軒下でぼうっと待ってました。


そこに、小さな黄色い傘をさした男の子がやってきて、私に傘を渡すんです。

驚いていると、傘を無理やり持たせて

彼は同じように走っていなくなりました。

傘の取っ手をよくみると、ひらがなで私の名前が書いてあったのです。


そういえば

彼は小学生のころいたずら好きだった石崎くんによく似ていました。

本当です。


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きのう、雨降りでした。


ビニール傘につたう一つの滴が

あんまりにもキラキラとしていたので顔を近づけてみました。

そのきらめきをよく見ると映っていたのは、

大学生のころに付き合っていた彼氏の部屋でした。


よく晴れた夏の日、ケンカした彼氏が出て行ったときの彼の部屋。

まるで殺人を犯してしまったような私の顔も、しっかり見えました。


もっと見たい、と顔を寄せたら、傘のバランスがくずれ

その一滴は、星のように流れていきました。

本当です。



#超超短編

#ポエム

#雨の日


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