リスポーン

僕が大学生の頃に所属していたサークルに同期で幹事長を務めていたS君という人がいます。S君はとても責任感が強く面倒見の良い人で、その上誰とでも気さくに打ち解けるのでみんなから親しまれていました。そんなS君ですが、お酒を飲むと豹変し、気が狂ってしまうという欠点がありました。これはそんなS君がサークルの飲み会で飲み過ぎた時の話です。

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僕が所属していたサークルはスキーサークルで、オフシーズンの春から秋にかけては毎月のように飲み会をしていました。飲みサーという程ではありませんでしたが、しばしば激しい飲みになり、酩酊して帰れなくなる人が出ることもありました。

当時の僕はお酒に強いという自負がありましたが、幹事長のS君は僕以上に飲む人でした。ただし、理性を失うことも多く、おしぼりを天井に投げつけたり、お店で上裸になったり、横断歩道で奇声をあげるなど軽犯罪スレスレの行動をとることもありました。

ある時のサークルの飲み会で、S君がしこたま飲んだ時がありました。お店を出るとS君は例のごとく正気を失い、叫びながら俊敏な動きで高速移動をし、すばやさを2段階あげていました。

見かねたOBの先輩が車に轢かれては危ないということでみんなにS君を捕まえておくように言いました。ですがS君は拘束されることが嫌だったようで、一瞬の隙をついて僕らの手をかいくぐり、夜の街へと疾走して失踪しました。

携帯でも連絡がつかず、こうなってはもうどうしようもないとなり、S君の安否は不明なままその日のサークルの飲み会はおひらきになりました。僕らはS君が車に轢かれて潰されたカエルようになってやしないかと心配して気を揉みながら他の同期の家で飲み直してぷよぷよをしました。

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翌日、サークルのグループLINEにS君から「無事です。」という投稿があり、一安心して「昨日はあの後どこ行ったの？」と聞きました。S君は「覚えていない。」と答え、続いて

「起きたら神社にいた。」

と返事を送ってきました。

僕らはそれを見て、どこかの親切な人がS君の死体を神社まで持って行って蘇生したか、神社がリスポーン地点として登録されていたんだろうなと思いました。

僕はゴミ捨て場でしかリスポーンしたことがなかったので、神社にリスポーン地点が登録されているS君が少し羨ましかったです。