東方Project二次創作作品 家族になろうよ 13

 レミリアの血を目前にした咲夜だが霊力が限界だった。

 (あと数秒だけ保って!)

 乱暴に試験官を手に取り、木製のコルクを外す。普通の血液は鉄の匂いがするが、吸血鬼の血液はバラの香りなのが特徴だ。

 (お嬢様、咲夜は必ず乗り越えてみせます!)

 決意を込め、彼女の血を飲んだ。だがそれと同時に魔力が底をつき、足元からパチュリーの魔力を伴った電撃となって襲ってきた。

 「ぎゃああああああああああーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!」

 自然界のものとはまた違った構成で生み出された彼女の電撃は、厳密には電気ではなく電気に似せた魔力。なので絶縁体は意味を成さない。どちらかと言えばNARUTOの風遁螺旋手裏剣に火遁が乗っかって体内の細胞を燃やす形になっている。

 咲夜の体内も見るも無惨な光景に…ではなかった。早くも吸血鬼の血が効果を発揮していた。

 全身に激痛が走るも、殆ど同じ速度で身体が治癒されていく。吸血鬼が持つ強力な自動回復能力が発動していた。だがそのために常に激痛が襲ってくるにも関わらず、意識も飛ぶこともできない彼女はただただ苦痛を味わうだけになっていた。

 (痛い痛い痛い!! けど慣れてきた!)

 痛みを伴いながらも咲夜は出口に向かって歩き出す。吸血鬼の血が身体に馴染んだことによって自動回復能力が最大限に発揮されるようになってダメージよりも治癒の速度が上回ったことと、長時間浴び続けたことよって耐性ができたこともあったからだ。

 電撃の海を渡って生還した彼女の身体に力が巡る。今まで回復に回していた分が力となってどんどん加算されていく。

 (凄い…これが吸血鬼の力…でもヤバい)

 力の加算が終わらない。いや、それどころか乗算されているようで爆発的に力が身体中を駆け巡る。その力によって全身が軋み、痛みとなって脳に緊急信号を飛ばすも止まる気配がない。

 やがて膝をつき、息も絶え絶えになり、心臓が爆発しそうになるほど速くなるのが分かった。霊力を使って抑え込もうとするも吸血鬼の力は圧倒過ぎて全く太刀打ち出来ない。

 (これが吸血鬼………)

 いつも側に吸血鬼がいた。500年生きてるが見た目は幼女で、ワガママで、カリスマに溢れ、ドアノブカバーを被った世界で最も愛しい人。

 だから気付かなかった。吸血鬼の本質に。その血の強さに。

 これ以上は保ちそうにない。そして彼女は願った。

 (お嬢様…もし良ければ…私を殺してください。不出来なメイドを…お許し…)

 そして彼女の感情は消えた。

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