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かわいい父と激しい母と私の介護日記(21)

退院の日

敗血症や血便での絶食を乗り越えて、父の退院が決まった。

当日は、母と2人で病院へ向かったが、コロナ感染対策で、病室へ行けるのは1人との事。荷物が沢山あるので娘さんの方が、と言われ私が病室へ向かう。

前回は午後だったが、今日は午前中の退院で病棟はナースさん大忙しの様子。
前回は荷物がまとめてあったが、今回はまだ手付かず。

それでも、父を病衣から私服へ着替えるのを手早くやってくれた。
その間もナースコールが鳴りっぱなしだ。
早く支度して出てあげないと、急いで荷物をまとめてるのに、父は
「クシないの?頭ボサボサ!」
ハイハイ、クシだよ、と探して渡す。
「ポマードないの?外出たらこれじゃあ恥ずかしいよ。」
「もう、急いでるから我慢してよ、誰も見てないよ。」と私が言うと、諦めた様子。
「お母さんは?来てないの?」
やっぱり。父は母が大好きなので、私だと不満なのだ。
「下で待ってるよ。だから早く行こう。」

すると、「待って、これじゃダメだよ。」見てみるとバルーンカテーテルが以前と変わっていた。バルーンとカテーテルが一体化していて、外せないタイプだった。

ナースさんが、「こちらの方が尿路感染しにくいので、変わってます。」
と、尿の廃棄の仕方を説明してくれた。

その事を父に説明する。
以前は、下着の中にカテーテルが隠れて、外からは全くわからないタイプだった。今回はカテーテルもバルーンも出ているので、父はイヤなのだ。

「感染しないようにだから、仕方ないよ。」と言うと、父は少し考えて諦めたように小さく「わかった。」と言った。

この時の表情、忘れられない。
私も辛かったけど、父はもっと辛かったはず。でも、また感染して敗血症になったら今度は、無事に帰れるかわからない。でも本当に、生きるって何なんだろう。もっと人間らしくいられる装置?開発されないかな。

とにかく父をつれて、ロビーへ降りると母がいて、父はやっと安心した様子だった。

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