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高血圧 コーヒー1杯に驚きの真実

メイトウホスピタル 循環器内科 加藤公彦

コーヒーは世界中で広く愛飲されている飲料であり、その健康への影響については多くの研究が行われています。特に、高血圧の人々にとって、コーヒーの摂取が血圧に及ぼす影響は重要な関心事です。最近、大阪大学の研究チームによる大規模な前向きコホート研究が、この問題に光を当てました。*1
 ※「コホート研究」とは、あるグループを追跡して、病気の発生などの健康状態の変化を調べる研究のことです。


この研究は、日本人の健康と生活習慣に関する広範囲なデータを基にして行われ、特に高血圧患者におけるコーヒー摂取の影響に焦点を当てています。研究では、1万8,000人以上の参加者を19年間にわたって追跡し、その間の生活習慣や健康状態の変化を詳細に記録しました。分析の結果、1日に2杯以上のコーヒーを飲むことが、重症高血圧(収縮期血圧が160mmHg以上、または拡張期血圧が100mmHg以上)を持つ患者において、心血管疾患(CVD)による死亡リスクを2倍にすることが明らかになりました。一方、1日に1杯のコーヒーを飲む場合は、このリスクは顕著に上昇しないことが示されました。

この研究結果からは、コーヒーの摂取が一般的な高血圧患者において短期間の血圧上昇を引き起こす可能性があるにもかかわらず、一般健康集団では高血圧の発症や死亡リスクを低下させるという、興味深いパラドックスが示されています。さらに、重症高血圧患者におけるコーヒー摂取の影響は、カフェインによる一過性の血圧上昇だけでなく、カフェイン耐性やコーヒーに含まれるポリフェノールなど他の成分の影響も関与している可能性があります。

コーヒーに含まれるクロロゲン酸や他のフェノール化合物は、健康な人々においてコレステロール値の低下、血管内皮機能の改善、炎症の軽減などの有益な効果をもたらすことが知られています。しかし、重度の高血圧患者では、これらの保護作用がカフェインの悪影響を上回り、結果として死亡リスクの上昇をもたらす可能性があります。

この研究は、高血圧患者、特に重症の高血圧を持つ人々にとって、コーヒー摂取が健康へ与える影響について新たな知見を提供します。コーヒーの摂取量に注意し、1日に2杯を超える摂取は避けることが、特に高血圧の重症度が高い場合には重要であると言えます。また、この研究は高血圧患者だけでなく、一般集団においてもコーヒーの健康影響を考慮する際の貴重な参考情報を提供します。


最後に、この研究結果は、コーヒーがすべての人にとって健康リスクを増加させるわけではなく、摂取量や個人の健康状態に応じて異なる影響を及ぼす可能性があることを示唆しています。高血圧を持つ人々だけでなく、健康に関心があるすべての人々にとって、食生活や生活習慣の選択が健康に大きな影響を与えることを意識することが重要です。

*1 原著論文:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36542728/


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