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姉は一級建築士

今日は、姉の話をしたいと思う

私の姉は、一級建築士だ

いつか私が家を建てる時がきたら
姉が設計した家を建てるんだろうな~と
漠然と想像してきた

そして、今回ようやくその時がきた

人に対してこの言葉を使っている人を見たことがないが、
姉は“抜け感”を持っている人である
昔から、なんか助けてあげたくなるような
雰囲気を持ち合わせている

姉は覚えているだろうか?
姉が中学に上がったばかりの頃
外が暗くなってもなかなか帰ってこないことを心配した
小学生の私は、いてもたってもいられず家を飛び出し
中学校に向かって走り出した

姉なんかよりも、自分の方がよっぽど強く
何か怖い目にあっても対処できると信じていたのだ

家を出てすぐの角を曲がったところで姉と鉢合わせたのだが
「あれ~どうしたの~?」とへらへら笑う“抜け感”たっぷりな姉に
やっぱりこの人はなんか、助けが必要な人だと思った

そんな人に家を任せるなんて
怖くないのかと思われそうだが

姉はすごいセンスを持ち合わせた人である

幼い時から姉が描いていた絵は素晴らしく
何度真似ても少しも近づけることはできなかった
母のお腹の中から、美術的な才能を全部持って行くということが
科学的に可能なはずがないが、そうしたのだと思わざるを得ないほど、
大人になった今でも、私とは比較にならない才能を持っている

実家の壁には姉の描いた絵がたくさん飾られていて
「のりちゃん(私は姉をそう呼んでいる)って、本当に絵がうまいよね」と両親に言うと
「あなたのこの作品も素敵だよ」と小学生の時描いた愛犬の絵を
いまだに持ち出して褒めてくる
でも実はそれも、姉が描いていた愛犬の絵を真似たものだ

そんな風に、ちょっと慌てて気を遣う両親を見るのが楽しくて
私は度々姉の作品を褒めるのだが、
本当に素直にすごいと思っている
姉ばっかり羨ましい、みたいな気持ちは一切ない

そう思わせないのは、姉がセンスだけではなく
努力家であるからだと思う

建築学部に通っていた姉が
徹夜続きで死にそうになりながらも
どんな作業も丁寧に、絶対に手を抜くことなく課題に取り組む姿に
いつも感心していた
親の方が「もうそれくらいで十分なんじゃない?」と言うほどだった

それは、社会に出てからも続いた
有名な建築家の下で修業を始めた姉は
東京に一人暮らしをし、休みは週に一回
ほとんど会えない人になった

その貴重な休みを使って、
日本中の有名建築を見にいくのだから
勉強熱心なだけではなく、建築が好きなのだ

お陰で、長年見てきた姉の姿に裏付けされて
とても素敵な家にしてくれるに違いないという確信を持っている
あの姉に感じる“抜け感”は
他の才能を持つ姉が、神様に渡された弱点なのか
それとも、もしかして
人を巧みに動かすための戦略なのか
(急にぞくぞくしてきた)

姉という人を理解するには
もう少し時間がかかりそうだ

どちらにしても、今回の家づくりは
私たち姉妹にとって、とても特別な時間になるに違いない

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