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女神の瀬音

君たちはもう知っていますか 見えない川の女神の名を
光の歴史のすぐそばで 人知れず しかし脈々と
地底を流れる水脈のように その方はいつもそこにおられる
 
人の魂の奥底に 絶えず流れているその川は
瀬音をたどることはできても 姿を現すことはない
どれほど焦がれ 目を凝らしても 女神は目にすることはできない
 
それなのになぜわたくしたちは その存在を識っているのか
かの君はなぜわたくしたちの 歌舞音曲を司るのか
失われた神々を想う時の このなつかしさは何だろう
 
その心こそ道しるべ その胸騒ぎが扉の手がかり
名前や形を安易に定めず 瀬音をたどる者を待っている
忘れないで 覚えていて その方はいつもすぐそこにいる

大切なことだから、文字にして後世へ伝えようとした人々。
大切なことだから、言葉にせずに感覚のままで後世へ遺そうとした人々。
私たち日本人は両方の人たちの血を引いている気がします。

現代の私たちは、文字情報で伝えられた歴史に慣れているので、もう一方の流れを探すときの気構えみたいなものを、自戒の意味も込めて、詩にしてみました。

2018年6月27日

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