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熊野はじめてガイド ~最初に知っておいた方がいいこと~

まず、熊野に興味を持っていただいて、ありがとうございます!
熊野は、私自身、旅人としていろいろなところを訪ねた中でも、最も好きな場所です。好きすぎて20数回も旅行で来たあげく、とうとう移住しちゃったくらい。
しかし、知人に熊野旅をお勧めすると、必ずと言っていいほど「???」という顔をされるのです。どうやら熊野は、とても掴みどころのない場所のようです。
そこで、はじめて熊野旅をしようとお考えの方に向けて、旅の計画前に知っておいた方がいいことを少しだけまとめてみました。
旅のプランにお役立ていただけたら、嬉しいです。

熊野ってどこ?

ほぼ紀伊半島の南半分という感じなのですが、実は、はっきりしません。

熊野という言葉で、あるエリアを表していた時代は、大化の改新前の「熊野国」だそうで……つまり、1400年前くらい?
「熊野本宮大社」とか「熊野市」とか「熊野川町」など、個別の地名としては現在もあります。
でも、どこまでが熊野かというと、実ははっきりしないのです。
そんなわけで、現在の私の勤め先「熊野市」観光協会には、熊野全体についてとか、エリア外の「熊野三山」のお問合せがよく来ます…… (╥_╥)

「熊野」という言葉の語源も所説あり、「熊」ではなく「隈」、つまり「すみっこの方」という意味だったのではないかとも言われています。
だとすると、「くまの」は、今の言葉でいう「ド田舎」とか「魔界」とか、そんなニュアンスでしょうか。
奈良が日本の中心だった頃、権力の手の届かないところとして「くまの」と呼ばれたエリアは、江戸時代くらいになると紀州藩の管轄になります。

暴れん坊将軍のご実家として有名な紀州藩、その中心は和歌山城です。
和歌山のお城から見て、近いあたりを「口熊野」、遠いところを「奥熊野」と呼ぶようで、その意味では、私の住む熊野市は「奥熊野」だと言えます。

思った以上に遠い!

奥熊野、つまり南紀の東側は、本州で最も東京から(時間的に)遠い土地のひとつです。
町や村を除き、「市」として東京から最も遠いと言われる和歌山県新宮市。
ここへ東京駅を起点に行くとすると、所要時間は5時間20分ほどです。
大阪まで2時間半で行けてしまう現代技術でも、奥熊野と呼ばれるエリアには、半日かかるのです。

こちらのマップによれば、北海道最北端の宗谷岬や、島根県の出雲大社より遠いようです。

私自身の個人的な経験でも、東京から直行便のある奄美大島より、熊野の方が時間がかかりました…。

じゃあ、口熊野、つまり和歌山市に近い西側であれば時短になるのかというと……一部の限られたケースなら、という条件付きです。

ケース① 東京から南紀白浜空港へ(東京駅から計算すると、約2時間半)
ケース② 大阪駅から紀伊田辺駅へ(特急くろしおを使って、3時間半超)

ケース①の、綺麗な海水浴場で有名な白浜は、近くに南紀白浜空港があり、羽田から1日2~3便が飛んでいます。
東京駅を起点にすると、2時間半くらいかかるでしょうか。
朝の便で行けば、南紀白浜空港に9時前に着くので、朝から動き始めて、本宮へ向かう古道を歩きたい人などには、良いルートです。高いけど。

大阪から入る場合も西側がお勧めではありますが、劇的な時短ではないです……。
大阪駅から特急くろしおで、古道歩きの起点駅でもある紀伊田辺駅までは、3時間40分ほどでしょうか。
東側の主要駅である新宮までは、同じ特急で行くと4時間半くらいかかっちゃうので、1時間弱ぐらいの時間短縮はできそうです。

じゃあ、どこから旅をスタートすればいいの?

そう、それがちょっと難しい問題でして…。
結論から言うと、「どんな風にすごしたいか」によってスタート地点が変わってくるのです。
熊野旅の難しさは、どこを起点にして、どんな風にすごして、どこで泊まって、どこから家に帰るのか、そういゔ旅のデザイン゙にあります。
なぜ難しいかというと、熊野エリア全体を網羅した情報が少ない(ほぼ無い?)から。
見方を変えてみると、熊野旅の醍醐味は、いくつものツギハギの情報を組み合わせて、自分で旅をプランすることにあるのかもしれません。
それこそが「どこか1つだけの権力に属することが無い国=くまの」の不便さで、熊野が秘境である所以であり、魅力でもあるのです。

とはいえ、ヒントや手掛かりはほしいですよね。
ですので、移動手段を何にするかと合わせて、旅のスタート地点をいくつかご紹介します。
あくまで、私の趣味の観点でご紹介していますので、参考程度にご覧いただいて、その後にぜひご自身で旅を組んでみてくださいね。

A.誰もが知る代表的スポットを見てみたい人

⇒紀伊勝浦駅からバスの旅

熊野で最も知名度が高いスポットは、おそらく那智の滝でしょう。
観光客の数も熊野エリア随一だったと思います。
紀伊勝浦駅を起点にして、那智の滝と那智大社を回ることもできるし、熊野三山めぐりの定期観光バスも出ていて、利便性はかなり良いです。

「でも、ちょっとくらい古道を歩きたいな」
そんな方は、那智山行きの路線バスにのって「大門坂」で下車すれば、古道を通って滝や大社へ行くことができます。
そして、なんと言っても、ポイントは勝浦は温泉地であること!
温泉旅館に泊まったり、外来入浴で温泉をハシゴしたりするのに、選択肢がとにかく豊富です。
漁港のすぐそばですから、マグロの美味しいお店も数々。
唯一の難点は、熊野という言葉のイメージほどの秘境感はあまり無いところでしょうか。時期にもよりますが、比較的、観光客の多いエリアです。

※このルートの観光情報詳細は、那智勝浦観光協会のWebサイトなどをご参照ください。(8/1からは 那智勝浦観光機構 で情報発信されるようです)

B.古道をがっつり歩いてみたい人

⇒南紀白浜空港or紀伊田辺駅からバス&徒歩の旅

いくつもある古道ルートの中で、道や地図が最も整備されたルートが中辺路(なかへち)です。
平安の昔、京都から上皇様や貴族たちが参詣したルートの、最後の一部。
古道といっても、ルートの一部は現代の道=車道になっているところもあります。
ウォーキングが目的の人たちは、やはり、古道らしい古道の入口、滝尻王子から歩き始めることが多いです。

滝尻王子から熊野本宮大社まで、全ルートを歩くと丸2日間。
途中、近露や野中といったあたりで、一泊する必要があります。
「でも、歩き切ることができるのか、心配……」
そんな方は、バスで一部をショートカットする事もできるし、今は宿から宿へ荷物の移送サービスもありますので、ご自身の体力に合わせて、旅のデザインをしてみてくださいね。
本宮へ着いた後の宿泊場所も、選択肢はいろいろ。
本宮大社から徒歩圏内のゲストハウスもいいし、バスで5分ほどの距離の温泉は3箇所もあります。
ただし、温泉に泊まる場合は、バスの時間に間に合うようにたどり着けるかにご注意ください。
直感を働かせてえいやっと選んでみるのも、素敵な出会いがありそうです。

※南紀白浜空港からのモデルコースは、以下サイトで紹介されています。

C.都市生活を離れて、秘境でのんびりしたい人

⇒新宮駅or熊野市駅からレンタカーでドライブ

ふぅ、やっと私のエリアをご紹介できます(笑)
都会から離れた熊野の中でも、最も田舎らしい空気と原初的な信仰の名残りを感じられる場所、三重県・和歌山県・奈良県の県境あたりは、まさしく秘境と言えるスポットがたくさん。
そこへ行くには、やはり車があると便利です。
バス&徒歩(あるいはレンタサイクル)で来られる方もごくごくごく稀にいますが、はじめてガイドに載せるほどの気安さではないです……。

このエリアでは、神社のご神体がびっくりするほど身近です。
新宮市では、熊野三山のひとつ、熊野速玉大社が有名ですが、そのご神体はそこから少し離れた神倉神社のゴトビキ岩だと言われています。
熊野市の丹倉神社は更にプリミティブで、あるのは鳥居と参道と小さな祠とご神体の岩だけ。

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瀞峡や丸山千枚田など、山あいの景色を見ながらのドライブは、視覚だけでなく、身体の感覚全てが籠もり野へやってきたことを感じさせてくれます。
個人的に、一番オススメな熊野のすごし方です。

正直に言って、不便だし、泊まるところの選択肢も限られます。
が、他のどこにも無い感覚を得られるところでもあるのです。
何か惹かれた方は、ぜひ一度、来てみてください。

何泊くらい必要?

これも難しいのですが(笑)、私が友人と話す時は「最低2泊、できれば3泊以上」と言っています。
来るだけで半日かかることを考えると、1泊というのは、もったいないし、滞在中の活動がとっても限られてしまいます。
そして、熊野エリアのあちこちには「ここだけ時間がゆっくり流れてる?」と錯覚するような、時間を忘れてしまう場所がたくさんあります。
ぜひ、時間を忘れてすごしていただきたいのです。
だからこそ、最低2泊、できれば3泊「以上」とお伝えするわけです。

いかがでしょう?
熊野の旅のプランニングに、参考になりそうでしょうか?
今後、私の大好きなエリアについては、スポットのご紹介なども載せていこうと思います。
皆さま、引き続き良い旅を!

オマケ:参考リンク集

熊野の各種情報について、ご興味あればご参照ください。

◆熊野古道エリアの網羅的な情報:熊野古道の旅コーディネーター 中山さん

◆中辺路・小辺路・高野山等:和歌山県観光連盟さん「わかやま観光情報」

◆伊勢路:東紀州振興公社さん「熊野古道伊勢路」

◆熊野に関する深~い雑学:み熊野ねっとさん


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