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もうすぐ、処暑。

ツクツクホウシが秋に喧嘩を売っている

今年は梅雨明けのニュースより1週間程早くニイニイゼミが鳴きだし、夏の本番を教えてくれました。
ニイニイゼミから始まって、ヒグラシ、アブラゼミ、クマゼミ、ツクツクホウシ、とセミの声とともに夏が移ろっていくのを感じるのは、風情があっていいものです。

ツクツクホウシが鳴き出すと、いよいよ夏も終わりと感じます。
とは言え、このツクツクホウシ、ヒグラシが朝夕の時間帯に、少し物悲しげにカナカナカナ……とゆったりと鳴くのとは裏腹に、意外と早口でまくしたてるように「ツクツクホウシ」と鳴く御仁の多いこと。
「ツクツク」の部分が詰まってしまって、「ククククシー、ククククシー」と、倍速がかかったような速さで鳴くのです。
「ツクツクイーヨー、ツクツクイーヨー」と語尾(イの音)をあげて鳴き終わるまで、ひたすら早口言葉のようにまくしたてます。
そんなに慌てなくても、と思うくらいに。

向こうからやって来る秋に挑むかのように、せわしなく「今」を生きなきゃなのよ、と言わんばかりの機銃掃射型ツクツクホウシの合唱を聞いていると、なんとはなくこちらまで、夏の終わりを気忙しく感じます。

短いひと夏のために、長い長い時間を土の中で過ごして、やっと陽の光を浴びて輝くいのち。
この瞬間、いのちを繋ぐことのために一生懸命、相手を求めて鳴く。
誰に教えられたのでもなく、そうやってプログラミングされた遺伝子の情報でいのちを繋いでいく。
人間は考える、という能力を与えられたことで、遺伝子にプログラミングされているこの自然のメカニズムを無視しがちだけれども、純粋に生きる、というのはこういうことなのかな、と思わされる瞬間です。
今この瞬間、命をつなぐために、生きる。

やがて、文字通りツクツクホウシと鳴くようになってくると、ヒグラシの声とともに、夕闇に紛れそっと灯が消えるように姿を消していきます。

コオロギの声に秋が来たな、と感じるまで、あと少し。
闘いをやめるときは、命の灯が消えるとき。
残り短い時間を精一杯、生ききってね。


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