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YCCの解除はどうなるか

 イールドカーブコントロール(YCC)については昨年12月にこの政策が市場のターゲットになる政策だと書いたが、いまではこれが常識となっている。上限金利までに余裕がある今こそYCCを解除すべきだとの議論もよく出てきている。植田日銀総裁も6月の記者会見でこの政策がフォワードガイダンス的なものにそぐわないとの認識を示していた。したがって7月の決定会合でどうするかはふたを開けてみないとわからない。
 現在市場や評論家の議論よりも日銀総裁は緩和的なスタンスを維持している。おそらく過去の緩和から引き締めへの転換が早すぎた、(本人が引き締めへの転換を反対した)経験が今に影響している。東大大学院の渡辺勉教授がテレビ東京のモーサテサタデイに出演し物価について説明していたが、それによればCPIは計数的に上昇してきているものの、上昇していない種類の物価が大半とのことである。これはなかなか日本のノルムは動かず、インフレにならないことを示している。評論家の方々はYCCは解除すべきだとの意見を言う人が多いようだが、長いデフレを脱却できるか、または欧米のようにコントロールの難しいインフレになるか、今度の7月の政策決定会合は歴史的な決断になるかもしれない。本来はYCC解除は金融引き締めではないが、もしYCCを解除すればマスコミは「引き締め」と騒ぎ立て、結果としては影響が大きい決断と思われる。FRBは金融緩和からの転換が遅く現在の米国のインフレを招いたと言われている。
 7月の日銀政策決定会合でYCCを解除したことにより、再びデフレから抜けださないかまたはインフレを防ぐのか、YCCを維持したことによりデフレから脱却できるかまたは日本も高いインフレの世界に入っていくのかどうなるでしょう。どちらの決断がどちらの結果になるかは歴史が証明してくれるでしょう。もしYCCを維持したことにより日本がデフレから脱却することになるストーリーになれば、世間の意見に妥協せずに成功した歴史にのこる総裁になるかもしれない。