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突然スマホを取り上げられ、雨天の新宿に放たれた話。

実際にタイトルの通りである。しかし、そんなに乱暴な物ではなかった。

真実はこうである。
新宿のApple StoreにiPhoneを修理に出した、ただ予想外に混んでいて3時間半の間、アナログ的な生活を強いられてることになったのだった。

ある日、気がついた。最近、スマホの電池の減り早くね?
僕が使っているのはiPhone11 Pro Maxだ。キャリアの48回払も残すところ、後2回。つまりだいたい4年間の付き合いになる。
購入と同時に加入したApple Careも未だに払い続けていたがこれと言って今までトラブルは無し、しかし、不要と解約をした途端、医療保険と同じく不調にブーブー言い出すに決まっている。

Apple Careに入っているとバッテリーの交換が条件付きで無料になる。
その条件とは、バッテリーの最大容量が80%を切っていることである。

僕のiPhoneのバッテリー最大容量は79%。まさに替え時だった。

修理を受け付けてくれるところは、Apple StoreとAppleの修理代理店を認定してもらっている所。
僕は新宿までの定期を持っているから、新宿のApplet Storeにお願いをすることにした。

来店予約を事前に済ませておいた。 (来店時は絶対予約したほうが良いです。激混みなので)
23日の15時から、と予約をしておいたので受付を済ませて椅子に座っていたら名前を呼ばれた。 (病院と同じシステムと言うとわかりやすい)

問診を済ませ、データが消えても文句は言いませんよ、という承諾にサインをしたらいよいよ入院(修理)です。
値段もやたらと「Apple Careに入っているから無料ですよ!」と強調していた。見せてもらったが自費だと1万3000円くらいだった。
今までのApple Care代と比べたらさあどうでしょうという金額だが、たまたま端末が無事だったと考えて納得する。

事前に見た情報では、大体1時間くらいで終わるというのも見たからほぼ手ぶらで出掛けていた。しかし、退院時間(引き渡し)は18時半だという。ここまで来たら承諾するしかなかった。

さて、僕は新宿にアナログな人間として放り出されたわけです。 (クレカは持ってる)
腕時計はしていたから約束の時間はわかった。しかし、ネットを見るすべはなく、誰とも連絡は取れず、SNSもチェックできない。支払いのときの鳴き声は「PayPayでー」、残り時間は3時間半。

まず紀伊国屋書店に向かった。
各階をのんびりと眺め、いつも立ち止まってしますSFコーナーの棚の前で吟味の末に、いずれ買おうと決めていた神林長平『帝王の殻』を買った。

続いて向かったのはALTAに入っているHMVレコードだ。
僕は良くここで中古のレコードを買い漁っている。主に100円コーナーで。
100円コーナーのレコードは夢がある。ザ・ビートルズとかローリング・ストーンズとか、なんかそういうめちゃくちゃ有名なのはないけれども、さだまさしとかかぐや姫とかアリスとか吉田拓郎とか松山千春とか矢沢永吉とか所謂邦楽のアーティストは探せばなんとか出てくる。
間違いなく今の日本の音楽の礎を築き上げた人たちだがなぜか100円コーナーでよく見る。

1枚のLPならもちろん100円、2枚組のLPなら1枚50円。片面換算なら1面なんと破格の25円。お得♡
サブスク化されていないライブ盤も見つけたりするので探しがいがある。

買い取りの段階でなんとなくジャンル分けされているのか、それとも買い取った瞬間、値打ちのあるものだけ引き抜かれて後はそのまま売り場に並ぶのか似通ったジャンルのレコードが集まっている事がある。
その法則に気が付いたおかげか、演歌とかクラシックの脈に当たったときは飛ばすと時短になる。

100円コーナーで探し始めた当初はさだまさしを探していたが、そのうちにかぐや姫もアリスも小椋佳にも興味を持った。大体、フォークロックのエリアがわかってくるのである。

そして、今日買ったのは谷村新司の『昴』、『喝采』、かぐや姫のシングル『神田川』だ。大体30分は時間を潰せた。
この日のお会計は340円(消費税と袋代込)

その後はほぼ彷徨い歩くだけだった。
西口のハンズをざっと見て回り、コーヒーを飲もうと思って東口に戻っては来たけれどもスタバもタリーズの人で溢れかえっていた。ルノアールも混んでいた。座れるとこをも皆無。全部、雨が悪い。

結局、また買い物をしているうちに18時半になった。
再びApple Store新宿に舞い戻りiPhoneを回収した。
その時間でも相変わらず激混みだったので予約だけはしていった方がいい。まじで。

そのうちiPhone自体も変える。


さて、僕が買ってきたレコードの補足ですが、谷村新司の『昴』は以前買った事があって実はすでに1枚ある。しかし、今日また買ってしまったのには理由がある。買い間違いではないことは強調したい。

昴って他になに入ってたっけと、後ろの曲リストを見たときにふと帯の余白に文字が書いてあることに気がついた。
そこにはこう書いてあった。

55.7.13(日)
   購入
買うか買うまいか.
迷っていたレコードでした.
7/12(土)「さんりんしゃ」
で ぐう然、 お逢い
しました.
何も しゃべることが
できなかったけれど
とても感激しました.
やっぱり やっぱり
ステキな. あなたです.
又, お逢いできる日
が来ることを祈って
                 …..。

レコード帯に手書きの文字

これを読んで何故か買わなきゃと思った。
今までも買った中古のレコードの内袋に買った日と値段を書いた物を手にしたことがあるがそれとは違う。

濃い物語を感じたからかもしれない。
元々の持ち主は昭和55年(1980年)に買ったのだと思う。今から、40年前だ。
中古売り場にあるということは、手放したということ。買ったときの日記が書いてあるくらい思い入れがあるのに売ってしまったということは、その人の身になにか合ったことを考えてしまう。

青春の頃に出会ったとして、それから40年たってその人は今いくつだろうか。だっただろうか。

店頭で見たときは、「さんりんしゃ」という場所で出会った“ステキなあなた”は谷村新司さんのことだとなんとなく思った。憧れの人にぐう然、見かけて遠くから声も掛けられずただ見ているだけ。そしてその次の日に『昴』のLPを見つけて買ったに違いない。
全部憶測でしかないけれども。

しかし、家に帰って改めて見てみると谷村さんではなく、その当時好きだった人、密かに思いを寄せていた人であっても違和感がないなと思った。
(まあ、でも又お逢いできる日が来る事を祈って、とあるから谷村さんか)

どうであれ、このレコードの帯に書かれた日記に惹かれて買ったことには間違いはない。

(丁度、LPを聞きながら書いているが、今最後の曲、昴が丁度流れています)

僕ならこんなに素晴らしい思い出がある物はレコードに限らず手放しづらい。盤面もすごくキレイで大切に扱われていたんだなと思いました。

完全に推測であるが、やはり当時の持ち主が亡くなり、それで売却されてしまったのでないか。

そして、谷村さんは去年亡くなられてしまった。
もしも、あちらの世界があるならお逢いできていることを願ってしまう。

と長々と1枚の中古レコードに思いを馳せてしまいました。

余談。
もう1枚買ったLP『喝采』のジャケットがすごくカッコイイ。
(すごく近くにあったからもしかして、『昴』と同じところから来たのかも)

僕はこのLPに入っている『陽はまた昇る』という曲がすごく好き。

夢を削りながら 年老いてゆくことに
気が付いた時 はじめて気付く空の青さに

谷村新司『日はまた昇る』

情緒的なイントロからの歌いだしの歌詞がとても好き。

中古のレコードに文字が書いてあったら、それは物自体の価値が下がってしまうはずだ。本人の直筆サインとかでない限り。
今回のような、日記のような思い出だったり、値段とか、自分の名前とか。
たぶんそういうのは有無を言わせず100円コーナー行きなのだろう。

ちなみに僕は値段とか書いてあると「僕はそれより安く、1000円で買ったけどね~」と思ったりする。

おわり。



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