スターウォーズ スカイウォーカーの夜明け(2019)寸評・ネタバレあり


 スターウォーズ スカイウォーカーの夜明け(2019)を観た.「大変綺麗だけど巻き気味のダイジェスト完結編」でした.着地の姿勢を気にしすぎて,大胆さに欠ける.
 とりあえず字幕がかゆい.きらい.世界同時公開に合わせるために作業時間が犠牲になったのか,「その文脈でその意味を取るの?」と首を傾げる訳が目立った.レイが女言葉を喋るのも(新三部作一本目からだけど)違和感がある.日本のファンダムをよく知らないからどうでも良いけど,決めゼリフがイマイチ決まらないせいで,”引用したくなるセリフ”にはなってない.

 脚本,これで良いのかな.四十年の歴史の集大成がこれで良いのか?とにかく散らかってて,駆け足で,重みを積み重ねられていない.製作陣としては驚きの展開を提供したつもりであろう演出も,想定の範囲内だった.前作のライアン・ジョンソンが舵を切った”真新しさ”を軌道修正したい必死さが見てとれ,新三部作の間で連携がうまく行ってなかったのは明白だった.

  映像は素晴らしい仕事をしている.目から嬉しくなるような美麗な背景に,説得力はまちまちだけど概ね見事なCGと,着ぐるみの面々はしっかりマッチしているし.ふとしたショットの構図も綺麗だし,映像そのもののプロダクションバリューは総じて非常に高い.しっかりお金をかけて撮影したんだね,というのが伝わってきて好感が持てた.故・キャリー・フィッシャーの劇中での見せ方もさほど違和感なく処理していて,苦心して工夫したのでしょうね.

  劇伴についても,ジョン・ウィリアムズ作曲のメロディの数々が期待通りに鳴り響き,不満はない.スターウォーズらしさ,を存分に発揮している.

  キャストの演技では,主演陣の実力を再認識できた.デイジー・リドリーは大変美しく,芯の強さと迷いを体現していた.一流アスリートの肉体美を感じるほどに肌や筋肉が溌剌としているし,横顔のショットは惚れ惚れする.アダム・ドライバーはキャラクターの抱える二面性と爆発力を繊細にコントロールしていて,素晴らしい悪役を演じている.オスカー・アイザックは持ち前の美しい顔立ちを効果的に撮ってもらっていて,絵になる男だった.今回はしっかり活躍してたし.こうした主演陣の魅力的な描写の数々は,ディズニーがMCUで培った”キャラ物の魅力”を見事にスターウォーズに転化した好例と言える.


 では,以下ネタバレでいくつかボヤこう.



 もうね,エイブラムスが「ジョンソン余計なことしやがってからに!」と焦って仕切り直した話でしたよ.最初から全部エイブラムスがやればよかったんだよ.二作目の尻拭いに尺とられてるじゃん.ローズは扱いに困ったからポーにもフィンにもお相手を用意し,レイの出自もどうにか付け足して,気の毒ギャグ要因にされたハックスの使い道を捻出して,と次々に後片付けしてる.まああとはファンサービスに終始してどうにか体裁を整えた,という感じ.
 レイの出自は別に良い.今作のレイが多岐にわたって強すぎることも含めて,なんとなく納得しておく.ただ,パルパティーン皇帝の兵力は”隠れて準備していた”にしては強大すぎるし,無数のモブの皆さんの生活が心配.またレイとレンの間で互いに実体を伴うフォース感応チャンバラの多いこと多いこと.ライトセーバー同士のチャンバラを見てて,途中で飽きたのは今回が初めてです.せっかくかっこいいチャンバラなのにね.
 皇帝の魂が乗り移ってうんぬん,も土壇場でルールが変わるし,(まあご本人の攻撃を跳ね返しただけなのでセーフなのか?)レイ・レンの関係性は素敵なんだけど,とはいえキスに至るような間柄だったのかは甚だ疑問だし,最後の蘇生は無くてもよかったじゃん.
 ”レイの物語”としてはレイ本人の望みが描かれてないから成立してないんだけど,反面,”カイロ・レンの物語”は綺麗に綴じられた.この完結の先で,レイが何を求めるのか,宙ぶらりんのままだなあ.
 EP7以来,ファーストオーダーの雑兵の皆さんにも人間味を感じる背景を与えておきながら,いざ景気良く蹴散らすとヒャッホーと沸くレジスタンスの皆さんに感情移入するの,ちょっと危ういものを感じる.


 九作品の完結編の今作は,それぞれのキャラクターの抱える「なぜ?」や「どうやって?」が欠落しがちで,視聴者が各自で受け止め落とし込んでいく姿勢を求められていた.熱烈なファンでない僕にはNot For Meでしたね.ようやく血族の争いに終止符を打ったスターウォーズフランチャイズ,次の一手はどこに向かうんでしょうか.

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