寝台"昼行"列車001ьタシケント→アルマトイ
この記事はりんのテュルク旅シリーズの一部です。ウズベキスタンやカザフスタン、中央アジアの寝台列車に興味がある人はリンクをポチッと。
【概要】
寝台だけれど時間的には昼行便な列車001ьです。始発はタシケント北駅(Ташкент Пасс Центр)、早々にカザフスタン国境を越え、キルギスとの国境沿いを走り、終点はアルマトイ-2駅。アルマトイ-2が駅名です(アルマトイ-1もあります)。
この列車の予約クラスはリュクス(中欧でいうSchlafwagenに当たる)、クペー(Liegewagen)と座席(ベッドではなく椅子)の3種類。ヒヴァ→タシケント同様、シングル予約というものがなかったので、リュクスのベッドを2台買って1室占拠しました。今回も始発のタシケントから終点アルマトイまで通しで乗車。2024年10月15日04時30分発車、22時02分到着、走行時間17時間32分、走行距離約1000kmです。2023年ごろはまだ夜行な時間帯に走っていたようですが、ダイヤ改正であえなく残念な発着時間になってしまったようです。
1室=ベッド2台分で合計94.16英ポンド。予約方法についてはこちらを。カザフスタン国内を走る上にカザフ鉄道の運行なので、カザフ鉄道からの購入も可能だと思います。
詳しい経路はこちらの地図を。
【なぜこの列車?】
早朝発の夜到着で日中の時間を丸一日潰すダイヤ、あまり魅力的ではありませんよね。ちなみに車両はTalgoの新しいやつなのですが、レトロファンのワシはあまりそそられない。いいところなしに聞こえますよね?実はこの列車に乗る予定ではなかったのです。前日の夕方に出て15日の夕方にアルマトイに着く369Ф(カザフスタンを突っ切ってノヴォシビルスクまで行くよ!)に乗りたかったのですが、なぜか直前までチケットがずっと解放されず(多分当日まで結局解放されなかったと思われる)、予備に取っておいた001ьで移動することになったのです。大体8日に一本しか走らない369Фに合わせて旅程組んだくらいなのに………(涙目)。運休なのかなんだったのか、詳細は一切不明。ウズベキスタン鉄道、カザフスタン鉄道、ロシア鉄道のどこでも買えませんでした。とはいえ001ьがいてくれたおかげで旅程崩壊と飛行機は避けれました。ありがたい!
【タシケント北駅】
ヒヴァ→タシケントの列車で到着したタシケント南駅ことТашкент-Южныйとは別の駅です。タシケント、アルマトイ、アスタナなどの大都市ではターミナル駅が2つある(うえにお互いの連絡が悪いし、市街地からももう1つの駅からも離れている)ことが多いので要注意です。
【いざ乗車】
まだ外も真っ暗な朝4時という時間帯でしたが、駅ナカのカフェや売店も空いていました。たくましい。ATMもあり。閑散としているかと思いきや、待合室はかなり埋まっていました。
もうそろそろ乗車案内のアナウンス来るかなーと思っていると係員さんに声をかけられ、チケットを見せるともう列車がいるとのことだったのでホームへ。
ホームの端から奥のホームへ渡る方式だと、車列の真ん中に配置されているリュクスの客(一番金出してる)が一番歩かされるという…。列車が駅舎すぐのホームに来ないとこういう革命が時々起こります。あとは手前にいる列車に乗車からのそのまま反対側のドアからすぐ下車で通り抜ける方式もアリですが、今回のように通り抜けた先も線路だと意味ないです。
そして自分の車両を見つけたら、ドア前に立ってる車掌さんにチケットとパスポートを見せて乗車。自分のコンパートメントに荷物を置いたところで車掌さんが来た。パスポートを渡してくれと。見せると車掌室に持って行こうとする。うわー、これパスポートを人質に賄賂を要求するパターンだったら嫌だなぁ…と思いつつ車掌室までついて行き、開いたままのドアから見つめる。どうやら乗客名簿と突き合わせていた模様。無事返却されました。越境するのでガッツリチェックが必要だったとのこと。そして、すぐカザフスタン国境に着くから、頼むから寝ないでくれと。
片側にベッド2台で洗面台付きという、中欧のSchlafwagenのような形式。
洗面台の蓋をしめればミニテーブルになるのも中欧でよく見るパターン。
【国境越え】
発車して30分ほどすると停車。ウズベキスタン出国の手続きが始まりました。こんなにすぐならそりゃ発車時に寝るなと言うわな。今回の出国審査は、車内に乗り込んできた国境警察の人にパスポートを預ける方式。手元に戻ってくるまで1時間以上かかりました。まあ長い列車なので、その分乗客も多いとなると当然なのかもしれませんが。その間税関職員と警察犬が来ました。税関職員の質問はドローンと薬。頭痛薬やピル、抗アレルギー剤はもちろんビタミン剤もすべてチェック。ウズベキスタンが医薬品の持ち込みについて厳しめなのは知っていたけれど、出国時もこんなにチェックするのかと。ピルについては既婚なのかもきかれたという。パスポートのコピーか写真も見せろとも言われ。なのに何も記録を取ったりはしていないという謎。やることやってるだけというよりちょっと嫌がらせでは?ような雰囲気もあり、あまりいい気分ではなかったですね…。もちろん大丈夫なお薬しかもっていなかったので無事終了。この後はワンコが何回か来て一通りクンクンしていきました。パスポートも無事帰還。
今度はカザフスタン側最初の駅で入国審査です。登場したのは、立派なカメラが入ってるのかな?くらいの大きさの黒い革のボックスを持った国境警察官。パスポートを持って行くのかと思いきや、コンパートメント内でワシの隣に座った。ボックスを開けるとキーボードと画面のあるスパイの通信道具のようなものが出てきた。うわっ、めっちゃ写真撮りたい!でも絶対ダメって言われるやつ!いやきいてみるだけきいてみるか?と思ってると、パスポートを開いて読み取り始めた!おお!なんかすごいイイ!カザフスタン初めてか、など普通の質問を2つ3つ投げたのち、スパイボックスで顔写真を撮ってパスポートにスタンプ押して退散。あっさり終了。
陸路の出入国ということもあり賄賂の要求などいろいろ警戒していましたが、無事通過。車掌さんからも寝てよいとのお達しが出ました。
【車内設備】
毎回恒例の車内ツアーです。まずはベッドメイク後のベッドです。マットレスはへたり具合が少なく、順当に「ちゃんとしてる」という感じ。
新しい車両なので、おトイレも現代的です。お外にポイしないので停車中でも街中でもいつでもおトイレに行けます!日本の列車でもよくある、ボタンを押すとズボッっと吸い込むタイプです。
なんと、給湯器がなかったです。旧ソ列車名物なのに。ウォーターサーバーがお湯も出してくれたものの、ぬるい…。お茶もうまく作れないし、多分カップ麺なんて絶望的かと。それと、窓が開けれない仕様でした。なのに車内は地味に暑い。凍えるよりはいいのかもしれないけれど…。コンパートメント内にいる間はパン一という形になりました(ショーパン持ってくればよかった…)。
ちなみにネット(モバイル通信)は、人間が居住している痕跡のあるエリアにいる間は繋がりましたが、駅と駅の間の平原では無力でした。
【金はあるがテンゲはない】
この列車には食堂車がありました!もちろん突撃しました!何があるのかなぁ、ワクワク。カウンター越しに呼ぶこと数回、やっとおばちゃんが出てきた。しかし言葉が通じない。おそらくカザフ語。おばちゃんに呼ばれて出てきたおじちゃんはロシア語と英語が少し通じた。現金オンリー、そしてウズベキスタンスムは不可とのこと。は?この列車ウズベキスタンから出発してるんだが…。カザフスタンテンゲを持ってない、ドルやユーロで払ってもいいかときくと、カード端末を持ってきた。なんだ、あるじゃん。テストとして100テンゲ(ごく少額)を支払ってみる。しかしネット環境が悪いのか、一般的なカード決済ではなくカザフスタン国内のガラパゴス決済手段専用なのか、うまく行かない。食堂車………。
その後乗客の誰かに両替か代理決済をお願いしようかとたくらむも、こんな時に限って誰とも遭遇しない。車掌さんは車掌室で枕抱えてスヤスヤしてました。国境付近で出現するらしい両替商も現れず。本当、ついてない。前日にバザールで買っておいたサモサやみかん、ナッツを貪る。多めに食料と水を持ち込んでおいてよかった。
この列車、同じルートを走る他の列車と比べると停車駅が少ない上に各駅での停車時間も合計走行時間も短いのですが、その分遅延が出るとただでさえ短い停車時間がゴリゴリ削られて、売店が遠いと買い出しもできなくなります。暑い車内から外に出てリフレッシュも叶わず。タバコの一本すら吸えなくてスモーカーオヤジたちからもブーイングの嵐でしたよ。
【平原を走り、そして到着】
国境を越えた後は、シムケントやシュなどの主要駅にのみ停まりながら、キルギスとの国境に沿って一路東へ。カザフスタンは広いスタン。こういう風景がずっと続きます。
平原の向こう側に山が見えるのは、カザフスタンの中でも南の国境すれすれを走るこの路線の特色かもしれないですね。
夜含めての17時間ならゆっくりできていいねといった感じですが、昼の17時間は長いですね。アルマトイ直前で謎に停車を繰り返すどこかのドイツ鉄道みたいな仕草も食らい、最終的には1時間の遅延に。ともあれ、無事にアルマトイに到着。
食堂車使えなかったわ車内は暑いわ給湯器はないわ、そもそも乗りたい列車に乗れなかったと不運が重なった移動でしたが、設備が新しく車内が清潔なのは揺るがない長所だと思います。そして、ガッツリ寝るわけではなくても、足を伸ばしたりゴロゴロできる寝台車は昼行便としても優秀だと実感。ドイツ国内で定期的に片道6時間の距離を列車移動するのですが、これを座席ではなくベッドで乗れたら助かるなあと。
思い通りに楽しむとはいきませんでしたが、車掌さんは親切だったし、無事国境を超えることができたのでヨシ!今度はテンゲも持って行くぞ!