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[トップインタビュー]CEO Scottに聞く、Infobloxの次なる戦略と日本市場への期待

2024年7月上旬、InfobloxのCEOである Scott Harrell が来日しました。
 
Scott Harrell は 2023 年 1 月に CEO として Infoblox に入社、それ以前はCisco Systems と Intel でリーダーシップを 20 年以上務め、ポートフォリオ管理分野で幅広い役職を歴任した経験豊富なリーダーです。Cisco では 200 億ドル規模のインテントベースネットワーク事業のシニアバイスプレジデント兼ジェネラルマネージャーとして、エンタープライズ、IoT、データセンター市場にわたって全ポートフォリオおよびエンジニアリングチームを統率しました。それ以前は、Cisco のセキュリティポートフォリオ部門で製品管理チームを指揮していた人物です。
 
来日に伴い、2024年9月26日(日本時間)に新たなサービスをリリースした背景や今後どのような戦略をもってDDI(DNS、DHCP、IPAMの総称)やDNSセキュリティ市場を再定義し舵取りをするのか、また日本市場への期待を伺いました。

インタビューするカントリーマネジャー 河村 浩明(左)と CEOのScott Harrell(右)




Infobloxの次なる戦略


―4つのコアとなる理念を使い、我々が目指すべき方向性を示唆してきました。今後も継続して大きく成長するDDIとDNSセキュリティの市場*において、どのように市場を再定義し、急速に変革していくのか教えてください。


Scott 
まず一つ目のキーワードは「シンプルさ(Simplicity)」です。DDI(DNS、DHCP、IPAMの総称)は、名前解決やIPアドレスの払い出しのような基本的なものであるにも関わらず、歴史的に実装が複雑で運用や移行が非常に難しいものでした。多くのネットワーク担当者は我慢して運用しているのが実態ではないでしょうか。
 
複数のクラウドを利用し、IT人材の確保が難しく、高度な自動化が必要とされる現状があり、また別の側面としてサイバーセキュリティの観点からは可能な限りレジリエンス(回復力)を保持する必要がある今日では、現状の環境では事がなりなくなっています
 
そのためには、コアとなるインフラストラクチャを変更する必要があります。
 
私たちInfobloxは、この変更をシンプルに実現することを今後強力にサポートします。具体的には、100% SaaSで提供することでコストと時間が掛かるハードウェアの設置を排除し、またユーザーインターフェースを刷新しAPIを最新化するための投資をしています。
 
そして、複雑さゆえ、これまで安易に移行することが困難であったMicrosoftやBINDからの移行を簡素化してきています。その結果として、専門的な知識を持ったIT人材がいなくても運用が楽になるよう自動化を推進し、またオンプレミスとマルチクラウド連携を推進することで、複雑さから解放されるでしょう。DDIは全般的に非常に複雑になってしまっていますが、そのような状態を変えていきます
 

Infobloxの新たなメッセージ



―複雑になりすぎてしまっているコアネットワークをシンプルにすることの大切さやそれを推進していくInfobloxの考え方に共感します。2つ目のコアな理念として「柔軟性(Flexibility)」を掲げていますが、具体的に教えていただけますでしょうか。

Scott 一つ目のキーワードである「シンプルさ(Simplicity)」を実現するためには、「柔軟性(Flexibility)」が必要ということです。この分野の多くのベンダーは、お客様の環境をすべて自社で囲い込もうとしており、お客様のIT環境のサイロ化が進んでいると感じています。一方で、現実の企業ネットワークはダイナミックであり、複雑で、既に何年も前から導入されている環境が多く残っており簡単に全てを変更することは難しい状況です。DDIの領域は、最初にポリシー設定をし、いかにして1年、2年、5年とシステムを触らないようにするかに焦点が当てられてきました。しかし、現実にはあらゆるものがダイナミックになっているため、それでは上手くいかなくなっています。
 
Infobloxでは、クラウドネイティブDNS(AWS、Azure、GCPなど)、従来のオンプレミスソリューション(Windows、BIND)、外部のDNSソリューション(Cloudflare、Akamai)、そしてもちろんInfobloxのDDIソリューションを全て単一画面と単一APIから利用できることを実現していきます。
これにより、お客様はより既存の環境を活かしつつ、より柔軟なコアネットワーク環境を実現することができます。
 

UNIVERSAL DDI MANAGEMENTで実現する統合管理


  
―確かにあるお客様では、システムの都合上、AWSのRoute 53やAzure DNSに加えて、権威DNSにBINDを利用している場合もあり、DNS管理だけでも複数のツールを使いこなす必要が発生しており、ますます運用負荷が増大していると聞く機会が多くなっています。そういったあらゆる事情で複数の環境にあるDNSを統合管理できることは、ネットワーク担当者だけでなく、クラウド担当者やセキュリティ担当者にとっても利点があることが理解できます。
 
 
Scott はい、その通りです。上記を実現していくために3つ目のキーワードである「AI-Power」が重要になってきます。AIについて考えてみると、機械学習、大規模言語モデル、ディープラーニングなど、さまざまなテクニックがあります。セキュリティの分野では、脅威を検知するために長い間使われてきたテクニックですが、DDIの分野やセキュリティの運用を簡素化するために必ずしも大々的に使われてきたわけではありません
 
データセットが本当に大きくなったとき、それを行う最善の方法はAIを使うことです。
 
ネットワークもセキュリティも導入後の運用が大切です。長期的に運用するためには、非常にシンプルでなければなりません。そこにAIを最大限駆使していきます。
 
セキュリティの最大の問題のひとつは、脅威を検知するだけでなく、どの脅威に最も注意を払うべきか、またその理由は何かということを教えてくれることです。
AIを活用することで、従来行われてきた検知だけでなく、オペレーションを簡素化することも可能になります。これは簡単なことではありませんが、実現すれば非常に強力です。
 

Infoblox Inc. CEO Scott Harrell(スコット・ハレル)


―Infobloxが提供しているDNSやDHCP、IPAMのデータは、希少で貴重なデータであるため、オンプレミスに加えてクラウド環境においてもそれらのデータを、AIを利用し可視化していくことは、柔軟性やシンプルさを実現に寄与できるとわかりました。最後のキーワードは「フォース・マルチプライヤー(Force Multiplier/力を増強させる存在)」ですが、これのキーワードにはどのような背景や趣旨があるのでしょうか?

 
Scott 世界で最もレジリエンス(回復力)があり、最も信頼できるサービスが必要だとすれば、それはDNSとIPアドレス管理です。
 
外から来た私にとって目から鱗だったことのひとつは、私たちのシステムを取り巻くすべてのものをより良いものにするために、顧客がどれほど私たちのシステム内のデータに依存しているかということです。 他のセキュリティツールであったり、他のネットワークツールであったり、Configuration management database(CMDB)であったり、私たちが知っていることを知りたがっているあらゆるものと連携していくことでより高い価値をお客様に提供することができると信じています。
 
私たちはプラットフォームとしてとてもオープンで、それを誇りに思うべきですが、現実にはもう少し努力すれば、もっとユニークな方法でユースケースの解決に貢献することができます。
 

エコシステムパートナー様一覧


例えば、脆弱性スキャンは、環境全体を何度も再帰的にスキャンしなければならないため、歴史的にうまく機能させるのに苦労してきた業界のひとつです。その結果、返ってくる結果には多くのノイズが含まれ、取りたいアクションをピンポイントで特定するのは非常に難しい。しかし現実には、脆弱性スキャナーの機能をもっと向上させる情報はたくさんあります
 
私たちは、デバイスがネットワークに接続されたときを知ることができるため、より良いものにしたいと考えています。やりたいことは、ネットワーク上に新しいデバイスが発見された時に、そのデバイスが企業のネットワーク環境でいろいろなことをするようになる前に、即座にスキャンしたいということです。私たちはその選択的スキャンを支援することができます。同様に、DNS経由でエンドポイントからの不正な接続を確認し始めたら、突然そのデバイスをスキャンしたくなるかもしれない。脆弱性スキャナーでスキャンすることは非効率です。コーヒーポットの脆弱性を理解していないからです。
 
そのため、時間を無駄にし、さらに仕事を増やすことになります。そのような機器をスキャンすれば、そのような事態を避けることができます。私たちを取り巻くエコシステム全体がより良く機能するよう支援するこの能力は、本当に情熱的なものです。
 
私たちは、顧客がよりセキュアになるようサポートします。そして、より効率的なオペレーションを可能にします。そして、私たちが持っているデータは私たちのものではなく、私たちの顧客のデータであり、顧客のデータである以上、それを顧客の役に立つように使うことが私たちに課せられた義務だと思います。
 

Infoblox エコシステム アーキテクチャ

 
そしてそれは、フォースマルチプライヤーの大きな部分を占めています。
このカテゴリーには他にもいろいろなものがありますが、もし私たちがこれだけを達成することができれば、私たちを取り巻くエコシステム全体をより良いものにすることができると思います。


日本市場への期待

  
―とても共感できるコアとなる理念のお話、ありがとうございます。どのような戦略を今後展開していくのかわかってきた上で、日本市場についてどのように見ているか聞きたいと思います。
 
Scott 日本のインフラは素晴らしい人々の技術力も素晴らしい。そして東京は驚異的で、東京ってそれだけでどれだけ印象的で、他の国の追随を許していない。一方で、テクノロジーの面では驚くほど導入が進んでいると思いますが、インフラストラクチャが複雑すぎると感じています。これは面白いパラドックスで、世界最高のテクノロジーがあるのに、文化的なものなのか何なのかわかりませんが、必要以上に複雑になっていることがあります。
 
その複雑になっているインフラストラクチャの環境をネットワークとセキュリティの両面にシンプル化していくことが、Infobloxとしてやるべきことで、日本市場はもちろんのこと、Infoblox Japanが今後どのように進化していくのか、興味深いところです。
 
実際、我々のお客様で、34週間も5週間もかかっていたものが15分で済むようになる、ということを何度も目の当たりにしてきました。 そして、その時間を短縮し、セキュリティを高めると同時に信頼性を高めるような方法で行うサポートをしてきたため、日本の企業にもそう言った価値を届けていきたいです。
 
 

日本の文化のひとつであるラーメンを食す筆者(左)、Scott(中央)、河村(右)



これからの挑戦


―日本への期待が高く、私はとても興奮しています。最後の質問ですが、MicrosoftやAWS、Googleなどと比較して私たちの企業規模はまだ小さいです。つまり、私たちは新しいことへの挑戦し続ける必要があります。そのためには、もっとアグレッシブでなければならない。企業文化やメンタリティ、ファイティングスピリッツをどのように変えていきたいと思っていますか?
 
 
Scott それは会社の野心をリセットすることだと思う。私たちがとてもいい会社だという話をよく耳にすると思います。実際、我々は素晴らしい技術を持っていて、非常にうまく機能しています。
 
だから、改めて成功とは何かという野心をリセットする必要があります。このままではいけないという気概を持つ必要があり、少なくとも私たちは3倍の規模になるべきですし、目標は数10億ドルにする必要があると言えるでしょう。そして、それを実現するにはおそらく、これまでのような歴史的なものとは大きく異なるメンタリティが必要です。
 
私たちは、あるべき姿とは対照的に、現状に満足しすぎていたのかもしれません。私が入社して気づいたことのひとつは、それを可能にするために、会社として、また経営側として十分なメンタリティを変えていく仕事ができていなかったことです。
 
野心をリセットするポイントに到達する方法のひとつが、高い再現性と拡張性を持った感情を構築することです。これは企業が陥る典型的な問題ですが、例えば製品開発チームは営業チームや彼らが経験することに十分な共感を持っていません。そのため、必ずしも常にセールスを念頭に置いて作られているわけではありません。お客様のために最高のテクノロジーを作ろうとしているのに、もしそれがお客様に共感されず、お客様に導入されなければ、作った意味がなくなってしまいます。
そのため、製品開発チームは営業のメンタリティを理解し、営業ができるように努めなければならないし、逆もまた然りで、営業は、電話で誰でも販売できるほど販売方法が簡単であれば、営業チームは必要ないということを認識しなければならないです。
 
そのために私がやろうとしていることのひとつは、チーム間のコミュニケーションを円滑にすることです。もしあなたが人々のことを本当に知らず、彼らに共感できなければ、彼らのニーズを予測することはできないし、彼らをサポートこともできないでしょう。同時に、みんなが何もしないでぼーっと座っているのではなく、みんなが一生懸命働いていることも理解しなければならないです。
 
もし営業部門が問題を抱えているのなら、製品開発部門も問題を抱えていることになります。同様に、営業から必要な情報を得られないために製品開発が仕事をこなせないのであれば、営業は最終的に必要な製品を得られないことになります。今日はいいかもしれないが、明日はダメかもしれない。これらはすべて相互につながっています。会社は規模が小さい分、必要以上にサイロ化する傾向があると思うため、私はそれを打破し続けるつもりです。
 
Infobloxがどんな会社なのか知らない人たちがたくさんいます。でも、私たちには大きなチャンスがあると思います。
でも、私は長い間テクノロジーに携わってきて、これ以上のチャンスはない
と思っています。

メディア記事


Universal DDI プレスリリース

ZDNET Japan インタビュー記事

 
Business Network のインタビュー記事

マイナビ TECH+ の記事


Universal DDI 特設ページ


11/20開催 Infoblox Exchange 2024 Tokyo

日本では4年ぶりに「Infoblox Exchange 2024 Tokyo」と題した弊社の年次カンファレンスを11月20日に開催します。
 
■Infoblox Exchange 2024 Tokyo

2024年11月20日(水) 12:00 – 17:30

  
「Exchange」は、世界14都市で開催されるInfoblox 主催の年次カンファレンス(ワールドツアー)です。
 
Exchangeでは、多彩なセッション、デモブース、ハンズオンワークショップを通じてマルチクラウド時代に適応した「次世代型の DDI モデル」や「プロテクティブDNS」のテクノロジーやベストプラクティスをご案内します。
 
基調講演では9月26日に発表した業界初の次世代 DDI モデルを中心に弊社の革新的なイノベーションを『DNS & BIND』の著者であるCricket Liuからご案内します。

さらにユーザー事例や国内外の業界オピニオンリーダーからDDIに関する最新のアップデートをご紹介します。
 
今なら早期申込キャンペーン実施中です!


セミナー概要やアジェンダなどの詳細などは以下のリンクから確認可能です。

<イベント概要>

  • イベント名: Infoblox Exchange 2024 Tokyo

  • 開催日時: 2024年11月20日(水)12:00 – 17:30

  • 開催場所:大手町プレイス ホール&カンファレンス

  • 対象:ITインフラ(ネットワーク/セキュリティ/クラウド)の部門長/担当者

  • 参加費:無料(事前登録制)

  • 主催: Infoblox 株式会社

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