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爪白癬(つめはくせん、爪水虫)、本当にあった怖い話

先日実際にあった話です。1歳の男子とその母親が、水虫とは別の病気のことで、皮膚科を専門としない某医院を受診しました。その際、医師は男子の足の小指の爪を虫めがねでじっくり観察し、「これは爪の水虫であり、治療が必要ですね。」と母親に説明しました。母親は、自分の足の小指の爪も変形していることを思い出し、その爪を医師に見せました。医師は、見ただけでその爪も水虫であると言いました。母親は、少し疑問を感じましたので、水虫の治療は断りました。

 私は、この話を聞いて、ぞっとしました。爪白癬(爪の水虫)は、目でみただけで診断する病気ではありません。爪白癬を診断するには、爪を少しけずりとり、顕微鏡で水虫の菌を爪より確認する必要があります。爪白癬は、顕微鏡検査によって診断が確定する病気なのです。

百聞は一見に如かずですから、まず爪白癬と他の爪疾患の写真をご覧ください。

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爪白癬(つめはくせん)  症例1

爪が白色に混濁肥厚(こんだくひこう)しています。


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爪白癬(つめはくせん)  症例2

爪が部分的に白色に変色しています。


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爪白癬(つめはくせん)  症例3

爪が混濁肥厚し、一部は黒く変色しています。


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原因不明の爪甲変形

見た目は爪白癬(爪の水虫)によく似ていますが、顕微鏡で調べても菌は見つかりません。当然、水虫の薬は全く効きません。


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物理的刺激による爪甲変形

足の小指の爪には健常人でも、時々変形肥厚が生じます。これは慢性的な物理的圧迫・刺激によるもので、水虫とは無関係です。ただし、足の小指の爪にも水虫が生じることは当然あります。見た目だけで診断せず、その都度顕微鏡で菌の有無を確認するという真摯な医療姿勢が大切と言えます。


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爪甲剥離症(そうこうはくりしょう)

爪が先端より徐々に遊離してきます。甲状腺疾患や光線過敏症に伴って発症することもありますが、原因不明の場合の方が多いです。爪が白く見えますので、爪白癬(水虫の爪)と間違えられることが時々あります。


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手の爪白癬

手の爪白癬です。足の水虫を放置しておきますと、手に水虫がうつる場合があります。


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乾癬(かんせん)に伴う爪甲変形

乾癬という皮膚病に伴って爪の異常が生じる場合があります。爪甲の混濁、点状の陥凹などが生じます。


以上のような様々な爪の写真をご覧いただくことにより、目で見ただけで爪白癬(爪の水虫)を診断することが、いかに危険で無謀なことか、ご理解いただけたと思います。

 爪白癬は、飲み薬で治療します。飲む期間は、半年~1年と長期間におよびます。内服中は肝機能障害などの副作用チェックのため、定期的に検査も必要です。したがって、初診時に菌の顕微鏡検査をして、診断を確定しておくことが極めて大切なのです。残念ながら皮膚科医のなかにも、自分の能力を過信して、菌の検査をしない医師がまれにいます。もし、あなたが皮膚科医院(あるいは皮膚科以外の医院)を受診した時、医師が菌の検査もせずに、いきなり飲み薬を処方するようであれば、医院をかえた方が賢明であると言えます。

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