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土木学会とnoteで開催した、「#暮らしたい未来のまち」投稿コンテストの審査結果を発表します!

2021年9月8日から約1ヶ月の間、「暮らしたい未来のまち」についての思い・アイデア・考えを募集した「#暮らしたい未来のまち」投稿コンテスト。期間中(9/8-10/3)には、1,224件もの作品をご応募いただきました!アイデアあふれるすばらしい作品を投稿いただき、ありがとうございます。

noteでの応募作品一覧は、こちらをご覧ください。

審査会にて、審査員である伊佐知美さん青鹿ユウさん大西正紀さんの3名と、土木学会 note担当による選考の結果、下記のように受賞者が決定いたしました。

グランプリ

■「ちょっと近いが一番たのしい」場所を残す未来

自身が住む「東京都港区」を描く連載の執筆をきっかけに、きらびやかなまちのイメージとは違った、地域の歴史や地理にであった三浦えりさん。そこに住み続けるひとや昔から残る場所がつくる、歴史あるまちの個性を未来に残すために、自分ができることをつづった作品がグランプリに選ばれました。審査員からは、「今いる場所をとらえなおすという、本質的に大切なことを示している(大西さん)」「日本全国どのまちにも歴史があり、発見がある。自分の住むまちを愛せる人が増えるような、完成度の高いエッセイ(伊佐さん)」「暮らしたいまちの未来に向けて、自分にもできそうだと思える提案がよかった(青鹿さん)」「港区という大都市が題材だが、住む場所に関わらずすべてのひとに通じる、住んでいる場所を大切にしたいというメッセージに共感した(土木学会note担当)」と高い評価を受けました。

審査員特別賞(伊佐知美さん賞)

■表情(かお)のある街に暮らしたい。

イギリスに住んでいたときに英語を教えてくれた、日本が好きというメアリーさん。彼女が「絶対ここに行ってみたい!」と興奮したのは、思いもよらない場所でした。その理由について考えをめぐらせる£ (ポンド)さんと夫のやりとりがテンポよく描かれたコミックエッセイが、伊佐知美さん賞に選ばれました。

表情(かお)が見えるまちは、「暮らしたい未来のまち」の答えのひとつだと思わされました。表情とは、そのまちがもつ唯一無二の個性です。それは、そのまちを選び暮らし続けたい理由や、まちの未来を考えるきっかけになるのではないでしょうか。
また、住んでいる人にとって「当たり前」で、時につまらなく映る風景も、よそ者にとっては「面白すぎる場所」に映ることがある。そんな「個性」が自分の暮らすまちにもきっと隠れているという、誰もが気づいてほしい視点が描かれていました。ぜひ多くの人に読んで、考えてみてもらいたい作品です。(伊佐知美さん)

審査員特別賞(青鹿ユウさん賞)

■人と自動車のための未来都市

「都市はもっと理想的な形にできるのではないか?」と考える太田英司さん。そのポイントを車と人が交わる「道路」にしぼり、海外との比較も交えてつづられるその考察は、都市計画にまで広がります。まさに「未来のまち」への構想を描いた作品が、青鹿ユウさん賞に選ばれました。

私は個人的に、誰かの好きや推しが伝わる作品が好きなもので、他の交通機関や車が苦手な人を度外視しで車や道路推しなこの作品を面白いと感じました。
現実問題、可能かどうか沢山の課題があるとは思いますが、強い「好き」はそんな困難もよりよい形で変えていくのかも…!という気持ちになりました。(青鹿ユウさん)

審査員特別賞(大西正紀さん賞)

■韓国生活20年。神戸・東京・ホノルル…そしてソウルへ。

20年過ごしているソウルのほかにも、いくつかの「ホーム」と思えるまちがあるというnora_koreaさん。これから暮らしたい場所はどこだろう?と考えたときに、それは1ヶ所ではないと気づいたといいます。では、その場所の条件とは……?暮らす場所の意味をあらためて考えさせてくれる作品が、大西正紀さん賞に選ばれました。

「まち」の素敵さとは、無限に多様なのだと改めて気づかされた。都市か郊外か地方か、はたまた海外か、単純に「住む場所」に正解を求めない。幸せに生きるためには、人間的な「まち」への眼差しと、「まち」の魅力を的確に捉える感性を持つことが先。自分がどう捕まえるかで「未来のまち」は変わる、ともこの作品は語っている。(大西正紀さん)

JSCE賞

■文化を自己決定する街

高校の社会基盤工学科の教諭として土木技術を専門に学ぶ生徒の担任をつとめ「街づくり」というテーマと向き合った経験から今回のテーマについて考えたというYoichiさん。治水の歴史や火山との共存といった生活と防災にまつわる観点と、文化的な自立の必要性という2つの側面からつづった作品が、JSCE賞に選ばれました。

工業高校の先生の視点で、普段、生徒と接する中で得た「暮らしたい未来のまち」という今回のコンテストテーマへの主張が、防災、自然共生、文化に根付いた、特に地方部における姿として、具体的かつ明快に表現されている作品でした。教師という立場から考えられたまじめな地方都市論で、こんな先生の教えを受けた生徒さんたちが、「暮らしたい未来のまち」をどうつくっていくのだろうと、将来に期待を持てる作品でした。(土木学会 note担当)


■デジタル時代に目指す「まち」の姿とは【暮らしたい未来のまち】

デジタル時代こそ「リアル」のつながりによる再構築が必要。そしてそれには「まち」が重要な役割を果たすと考えるyawaraishiさん。自身の出身地である愛知県豊田市の例を出しながら、その理由を明瞭にわかりやすく説明する作品が、JSCE賞に選ばれました。公務員という立場からこのテーマを真剣に考えるべきだと感じ、応募にいたったそうです。

コロナ禍で繋がりが弱くなってしまったこの時代で、まちでつながりを生むという内容が、非常に共感性が高い作品でした。デジタルが進展する中で、デジタルでのつながりとリアルのつながりの両方が求められていくこれからにおいて、リアルのつながりを生み出す新しい「まち」の姿として「効率」より「幸福」を求める主張に共感できました。
また、実際に行われている取り組みが紹介されていて、その暮らしを想像しやすい点もよかったです。(土木学会 note担当)

入賞

各審査員からの総評

■伊佐知美さん

土木を専門とする人はもちろんのこと、普段は土木に親しんでいないであろう人の作品も、「暮らしたい未来のまち」というテーマをきっかけに、まちと自分の関わりを深く考えたであろうnoteばかりで、本当に読んでいて学びが深く、またとても楽しかったです……!なので、審査は本当に頭を悩ませる時間でした。
入賞された方々の作品も素晴らしいですが、残念ながら入賞を逃された方の作品も、すごくよかったです。土木という、身近にあるはずなのに、少し生活から遠い場所にあると感じてしまいがちなテーマを、カジュアルに読み解けた気がする今回の企画。素敵な機会に関わらせていただきありがとうございました。これをきっかけに、みんながより「暮らしたい未来のまち」に近づけますように。


■青鹿ユウさん

どの作品も、様々な思いが沢山つまっていて読み応え満点でした!
応募作品を読んでいるうちに、ある共通点に気づきました。未来の話をするために今に注目し、自分自身や周りの生活について、もっとこうなればの願いを伝える作品が多いことに。
土木や未来のまちと聞くと、専門性が高そうで蜃気楼のように思えるのですが、応募作品を読み、身の回りで感じる気持ちを発表したり会話することによって、まちはしっかりと形づくられるのかもな…と思いました。


■大西正紀さん

未来の「まち」を良くするために何かを施すよりも、「まち」にはこういうことが大切だったのか、という視点の作品に明るい未来を感じた。自分を中心に目の前の出来事から、数キロ先の環境まで、人にはそれぞれに気づきがある。特に人と人との出会い、他者への寛容、温かみに触れるものに惹かれた。土木というインフラ、その器の上で、人々の営みが日々蠢いている。コロナ禍のポジティブな効用として得たこのような気づきは、もう忘れてはいけない。

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投稿期間は終了しましたが、あなたの暮らしたい場所について、あらためて考えるきっかけになれればと思います。

ほかの投稿作品についても、以下URLよりぜひご覧ください。

コンテストを振り返って

以下、土木学会 note担当からのコメントです。

まず、今回のコンテストにたくさんの作品を投稿いただいたこと、ありがとうございました。今回、企画当初は「懸賞論文」という形を予定していましたが、土木学会の内側から論文というスタイルで募集しても、応募も少なく、価値観の近しい人からの意見になってしまうのでは?ということから、「開かれた土木学会」を目指す取り組みとして、noteの世界に飛び込んでやってみることになりました。結果、わたしたちが思っていた以上の方々にご参加をいただけ、土木学会の活動の中ではなかなか触れる機会のない、多様な視点、多様な価値観の作品と出会うことができ、多くの気づきをいただけました。
今回いただきました多くの気づきは、現在土木学会でおこなっている、多くの人々の暮らしを支え、未来の幸せに繋がる国土やインフラの全体俯瞰図-土木のビッグピクチャー-を描く取り組みに反映させていただきます。
これからも「#暮らしたい未来のまち」というタグを通じて、近い未来だけでなく、30年、50年、100年先の「未来」の社会や暮らしのあり方を想像して、そこで生きる人たちのために「今」、やっておくものはなにかを、一緒に考えていただければ幸いです。