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カボチャ味のドーナツ

会社員だった頃によくミスタードーナツを買って帰った。心の赴くままにさせておくとフレンチクルーラーばっかり買うことになるので、なるべく偏らないように他のドーナツも選ぶようにしていた。

フレンチクルーラー以外はどれも程々に美味しいと思う。その程々の中から適当に選ぶという行為が地味に面倒で、一度だけ店員さんにお任せで選んでもらったことがある。嫌いなものはないから1000円以内で見繕ってくれ、と。

魔が差した。普段はそんなこと絶対にしない。店員さんは戸惑いながらも無理なオーダーに応えてくれた。最後にドーナツが詰められた箱の中身を確認して会計を済ませると、

「気に入ったらまた来てくださいね!」

と言われて店を出た。

もちろん、全部美味しかった。あの時もちょうどハロウィンの季節で、ガラスケースの端の方に期間限定の商品が並んでいた。たぶん自分では選ばなかっただろう。そのかぼちゃ味のドーナツもやはり美味しかった。あと、なんだか楽しかった。

後日、店を訪れたときには別の店員さんがいて、伝言を頼もうかと思ったがそもそも名前を知らない。イレギュラーな接客を求めてしまったことに罪悪感もあり、再び厄介なお願いをするのは躊躇われた。

ありがとう、おいしかったよ!

この言葉を伝えたかったな。