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0.1秒のタイムシフト

実際にこの目で見る景色と、記憶を遡って再生する景色はまったく違うものだと直感的には思う。瞬間記憶能力を持つ人は過去に見た景色も鮮明に覚えているというが、僕は数秒前に見た6桁の認証コードさえ正確に思い出せない(過去記事)。

明らかに記憶の中の景色は劣化している。その性能に不満を持つのは当然のこととして、意外と満足している自分がいたりもする。必要十分であると心の何処かで思っている。

1年前の景色など当然覚えていない。先月もよく覚えていないし、昨日のことも詳細には記憶していない。

では1秒前は?

まさに今この瞬間に見ている景色を、目をつぶっても思い出せるだろうか。覚えたての新鮮な記憶は1年前の記憶と比べてどれほど鮮明だろうか。

あまり違いはないように感じる。古くなるほど記憶は劣化していくものだと思い込んでいた。実際、多少の劣化はあるのだろうが、「今」の鮮明さを基準にするとどんぐりの背比べに思える。

「今」と「過去」には決定的な違いがある。しかし、1秒前が過去なら、0.1秒前だって過去だ。目を閉じた瞬間に0.000001秒前に見ていた景色は過去になる。

そして0秒前。この景色が記憶の中の映像ではないと果たして言い切れるのか?