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算数って結局なんですの?

巷では「算数はひらめきだ!」とか「計算力だ!」とか「パターン演習だ!」とか、様々な言説が展開されています。そして、それに合わせて多種多様な方法論が存在し、いったいどれを選んだらよいのやらと頭を悩ませている中学受験生の保護者の方は多いのではないでしょうか。

それに対して、私の中ではある程度明確な答えは出来ています。正直言って自分だけでなく、周りの小学生時代に中学受験で算数トップクラス層だった経験がある人々も、ほぼ全員同じ結論を出しています。

ただし、その説明をすると、初見では多くの人が混乱したり、それは間違っている!と反論したりすると思います。それは何故か。それぞれの人が思っている「自分の子供は〇〇が出来ている」の定義が違いすぎるからです。

多くの中学受験に関する不毛な議論は、この個人個人の「出来ているの定義の違い」に集約されると私は考えています。面白い事に、算数に関してはAさんが「出来ない」と思っている事と、Bさんが「出来る」と思っている事で、実はAさんの方が出来が良いという話はよくあります。

そのため、可能な限り客観的な指標を用いて「出来ている」とはどういうレベル間の事を言っているのか丁寧に説明しながら、私自身の考える中学受験算数の勉強法について解説したいと思います(勿論、私自身の独断や偏見を排除することは不可能ですので、自己責任でご理解ください)。

さて、以下が本題です。

中学受験の算数は、計算力が7割。

というのが、私の持っている結論です。これは、少し意外感があるのではないでしょうか。発想力とかひらめきとか、世の中には算数とはどちらかというとそういったイメージを持つ方のほうが多いと思います。

では、そういう主張をする人たちが間違ったことを言っているのか?そういう訳ではありません。算数における発想力やひらめきといったものは、極めて重要なエッセンスです。しかし、ここで私が言いたいのは

実は【計算力】に対する認識は人によって大きく異なり、算数が不得意な子は【計算力】が単純に低いだけのケースが多い。

ということなのです。ここで計算力にカッコがついているのがポイントで、これは通常の感覚の「計算力」とは大きくレベルが異なります。

「いやいや、うちの子は計算は出来てるんだけど。。。」と思ったそこのあなたへ。次の節でもう少し丁寧に説明しますね。

中学受験レベルの「計算が出来る」とは?

まず当たり前の事ですが、中学受験は通常の学校の勉強などと比べて、難易度が違います。そもそも学校で習わない範囲の内容も出ますし、学校の成績が良いからといって、中学受験の成績と関係ない事は多くの方が理解していることでしょう。にもかかわらず、何故か計算については、殆どの方が学校や公文レベルの計算力で十分出来ていると過信しているのです。

しかし、当然のことながら計算にも「中学受験レベル」は存在し、通常の計算とは求められる速度・正確性が大きく異なります。これは生徒が実際に解いている姿を見れば、一目瞭然です。私自身も小学生時代、自分の中で「これくらいの速度がないと試験で戦えない」というレベル感を持っていました。しかし、なかなかこれは「肌感覚」の域を超えず、具体的な数値などをもって明文化されてこなかった側面があると思います。

そんな私が最近「自分の肌感覚に合うレベル」の時間制限付きの計算ドリルを見つけました。それが「山本塾の計算ドリル」です。このドリルを用いて、私は「計算が出来ている」の定義を以下のようにしています。

「山本塾の計算ドリル」の各四則計算の最高レベルのセット (たし算Lv.11/ひき算Lv.12/かけ算Lv.8/わり算Lv.10)で安定して満点◎が取れる。

これをもう少し具体的な計算のレベルで説明すると
たし算 3桁+3桁を140秒で36問=1問3.8秒
ひき算 3桁-3桁を140秒で36問=1問3.8秒
かけ算 2桁x1桁を90秒で36問=1問2.5秒
わり算 4桁÷2桁(10の倍数)を90秒で18問=1問5秒
といったレベルです。少しイメージがわいたでしょうか。

このレベルの計算速度を出すのは意外と容易ではなく、勿論筆算なんかを書いていたら間に合いません。計算が速い子でも、ちょっとパニックになるとミスを起こしてしまう。それくらい神経を使うスピードです。算数がトップクラスの生徒は、ほぼ例外なくこのレベルをこなしてきます

実は私が主催しているdiscordサーバーにおいては、スコアを記録するExcelスプレッドシートを用いて、保護者の方々に毎日山本塾ドリルを解いたスコアを記録してもらい、ひたすら「計算のやり方」を教えています。

(↓スプレッドシートの一例)

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そして興味深い事に、既に30名ほどの方のドリルのスコアを見させていただいておりますが、計算ドリルを始める前に保護者の方が持っていた印象と、実際のスコアのレベル感が合っていたケースは皆無です。「計算は出来ている」と思っていた子が、Lv.1からミスをしたり◎が取れない。そんなことが多発しています。何故このような事が起きるのか。

それは「簡単な計算であっても、正確に高速に解く難しさ」を多くの方が見くびっているのです。公文式やそろばんの経験というのは勿論プラスにはなりますが、スピード勝負のテストでその実力を発揮できるかはまた別の力です。そして算数が得意な子というのは、この能力が極めて鍛えられている子が多いです。そういう子は、上の条件もあっさりクリアしてしまいます。

基礎となる計算力にここまでの差があれば、テストで計算ミスを連発したり、時間切れになったりするのも仕方ありません。そもそもの計算力の速度や正確性が「受験生レベル」ではないのですから。1割の確率で計算ミスをする子が、10回計算をしてミスしない確率は0.9の10乗で34.8%です。多くの人を悩ませるケアレスミスの正体とは、たいてい基礎にあるのです。

計算力は宇宙人でなくても速くなる

自分が塾講師をやっていた時にも、算数の成績が非常に優秀な生徒について「宇宙人かと思うくらい計算が速い」と話す人が多くいました。しかし、自分は自分自身が小学生の頃に「宇宙人」と呼ばれていた側だったので、あまり共感は出来ませんでした。要は、その方々は何故その子供がそういった計算速度を有しているか理解できず「宇宙人呼ばわり」するのです。

不思議なことに、中学受験塾では「算数の問題の解き方」を教えることはあっても、「計算力の鍛え方」を教えることは実はあまりありません。せいぜい計算ドリルが与えられて、毎日何ページとか指示が出て、提出しても適当にハンコが押されて返ってくるだけ。これでは計算力が伸びず、元々計算が得意だった「宇宙人」じゃないとなかなか算数は上達しないでしょう。

しかし、元「宇宙人」の私としては、自分の計算力がそのレベルに達するまでの道のりをよく覚えています。それは徹底的な「高速で正確な基礎計算の反復練習」を行った事でした。その記憶を頼りに、私は「計算力は宇宙人ではなくても速くなる」との仮説を立てているわけです。幸いにして、今教えている限りにおいては、私の仮説は当たっているように思えます。

「そんな計算ドリルだけで変わるかいな。。」と思うそこのあなた。とりあえず山本ドリルをやってみてください。意外とヒーヒー言いますから(笑)。そして是非とも保護者の方も、低いレベルの問題でもいいので、お子さんと一緒になってドリルを解いてみてください。そうすれば「これが中学受験のスピード感だ」というのを、あなたも体感できることでしょう。

中学入試の算数はF1レース

私の体感として、中学受験の算数はF1レースのようなものだと思っています。とにかく制限時間が厳しく、ミスなく高速に計算を進めなければいけない。更に難関校では「発想力」「ひらめき」まで問われる。そのストレスは尋常ではなく、どんなレベルの子でもミスは起きるのです。

実際F1レースを見ていても、何億円も貰っているプロのドライバーが、ほんの少しハンドル操作を間違えてクラッシュしたり、精鋭揃いのエンジニアがピットインでタイヤをつけ間違えてタイムロスしたり、それこそ「ケアレスミス」だらけです。何故そんなことが起きるのか。それは不注意なのではなく、時間との戦いという極限状態に晒されているからなのです。

残念ながら世の中の「算数指導」には、ケアレスミスに対する「そうじゃない」という処方箋が溢れています。明らかに暗算レベルで出来なければいけない計算に対して「途中式を書け」とか「筆算を書け」などという指導者が多すぎると思います。そういう事じゃないんですよね。計算力が遅い子が丁寧にやっても、今までの計算ミスが時間切れになるだけです。

少しぶっちゃけたことをいうと、世の中の算数講師の中にこの「中学受験のスピード感」を出せる人というのは、実はあまりいません。それは歳をとるとどうしても計算は遅くなるのもそうですし、そもそもそんな能力がなくても大手塾の先生にはなれます。教える側は時間制限もないですし、初見で分からなくても解答を見て解説すれば分かってるフリが出来ますから。

実際、塾講師時代に講師全体の試験も受けたことがありますが、周りの先生方が想像以上に計算ミスをしている事に自分は結構ドン引きしました。解き方は理解しているはずの人でも、計算力の研鑽をサボれば点数は取れないのです(これは中学受験だけでなく大学受験もそうです)。その点、山本塾ドリルは基礎計算能力を鍛える非常に良い仕組みだと思います。

参考までに、山本先生のYouTubeでの解説も貼っておきましょう。
浜学園?SAPIX?日能研?どこでも暗算は必要です【前編】
浜学園?SAPIX?日能研?どこでも暗算は必要です【後編】

まとめ

さて、少し話が逸れました。今回のまとめです。

①中学受験の計算むっちゃ速い
②意外と計算能力は鍛えられる
③山本塾ドリルをやってみよう

ものすごくざっくりまとめるとこんな感じでしょうか。まあ、今回はアウトラインの話ばかりでしたが、如何に私が計算に力点を置いているかということが良く伝わったのではないかと思います。

この「7割」の計算の話でも、語りだすとまあ説明したい事がいっぱいあって。でも、勿論残りの「3割」の発想やひらめきにもまた奥深い世界があって。本当に何処から説明したらよいのやら、大変です。

まあでも、次はもう少し具体的な計算の方法論などを少しずつ語りだしてみようかなと思います。風呂敷を広げすぎた感もあるので、上手くまとまれば、ですが。ご意見やご感想なども、お待ちしております。では。

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