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『長恨歌』白居易(白楽天)の日本語訳、文語調・七五調の現代語訳

唐の皇帝・玄宗が楊貴妃のとりこになり、政務がおろそかになる中で、安史の乱が勃発。都から疎開する道中、楊貴妃は無残に殺されることとなり、玄宗は悲嘆に暮れる――そんな悲劇の恋物語を漢詩にまとめた「長恨歌」。その現代語訳を作成しました。

古風な格調を出すべく、文語に近い形で、七五調に音を揃えて訳してみました。ぜひ声に出して楽しんでみてください。

①玄宗の度を越した楊貴妃寵愛

漢の帝は色好み、国も傾く美女求む。
御代(みよ)は久しく年積もる。されども娘、見付からず。

楊の家には娘あり。ようやく時の満ち足りぬ。
自慢の箱入り娘には、悪い虫など寄り付けず。
天の授けた麗しさ。自ずと世にも知られ行き、
あるとき不意に召し出され、帝のそばに侍(はべ)り初む。
瞳ひとたび微笑めば百(もも)の魅力が溢れ出す。
宮殿中の着飾った女は誰も青ざめた。

まだ寒き春、賜った、華清(かせい)の宮の湯浴み部屋。
滑らかな湯が洗うのはきめの細かな白い肌。
童の助け起こせども、起き上がれぬ身、なまめかし。
このとき帝堪(こら)え得ず、初めて姫と共寝した。
花のかんばせ、つやの髪、歩けば揺れる簪(かんざし)よ。
芙蓉(ふよう)の帳(とばり)のその中は春の宵にも暖かで。
嘆かるるのは、春の夜の短きことよ。起き難し。
帝これよりいぎたなく、政(まつりごと)など後回し。

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