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#わたしにとって歌とは No.10


クリスマスページェントってご存知ですか?

イエス・キリスト生誕の物語を、劇などで再現してお祝いする行事のこと。通っていた幼稚園では毎年12月、大きなホールを借りて音楽劇として開催されました。

この"ページェント"が大好きだった私は、誰よりも張り切って大きな声で歌い、全力で演技し、勢い余って隣にいる友達の顔を隠してしまうほどの熱中ぶり。(ごめんね、Eちゃん……)

クリスマスページェント


家に帰っても練習、練習!
"Gloria in excelsis Deo(いと高きところでは神に栄光があるように)"という言葉を、意味もよくわからず元気に歌っていたある日。大人のコーラス隊として劇に参加していた母が「一緒に練習しよう」と、私の歌にハーモニーをつけてくれました。

……ふしぎ。

ちがう音を歌っているのに、ぴったりと合わさってとてもきれい。
お祈りの歌が、天まで届く感じがする。
なんておもしろいんだろう!

これが、私が生まれて初めて出会った"合唱"です。



心躍るクリスマスの思い出。
私の人生のたからもの。
生きて行く中で大きな喜びに出会った時、外の世界を知って自分の無力さに打ちひしがれた時。あの讃美歌の響きがいつも心の真ん中にあって、私に寄り添ってくれました。

高校生になった私は、合唱部の仲間たちとともにポーランドのアウシュヴィッツ強制収容所を訪れました。
第二次世界大戦下で、私たちと同じ人間がたどった凄惨な運命。同じ人間が犯した過ちを目の前にして、言葉にならない思いを、精一杯の歌に込めました。祈るような思いを表すことのできる手段は、歌だけでした。

アウシュヴィッツの空


私にとって"歌"は、"祈り"です。

嬉しい時も、楽しい時も、
悲しい時も、苦しい時も、
さまざまな場面で、きっと人間誰しもが抱く、言葉を超えた思いを歌いたい。

いつの時代の音楽でも、どんな国の言葉でも、
私たちが声を合わせて届ける歌が、聴いてくださるお客様の心のどこか奥のほうで、そっと共鳴してくれたらいいなといつも願っています。

ソプラノ・たみ

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