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28-3.「注目新刊書」著者オンライン研修会スケジュール

(特集 新企画☆注目書籍の「著者」講習会)

下山晴彦(臨床心理iNEXT代表)

Clinical Psychology Magazine "iNEXT", No.28

1.今の自分にとって必要な「書籍と著者」を見つける

今の自分が心理職として成長するためにどのような本を読んだら良いのか?

皆様は,このように考えて不安になったことはありませんか。世の中,多種多様な心理系の本で溢れています。毎日のように新しい書籍や雑誌が出版されています。心理支援についても,さまざまな学派の心理療法の本が出版されています。心理アセスメントについても,さまざまな面接や検査の技法の本が出版されています。

そこで,臨床心理iNEXTでは,心理職の(を目指す)皆様の学習と技能向上を応援するために【「注目新刊書」著者によるオンライン研修会】を定期イベントとして開催することとしました。これは,臨床心理iNEXT事務局(代表下山晴彦)が責任を持って心理職の専門性向上に役立つ“良書”を選択し,著者に講師をお願いして研修会を開催するものです。なお,新刊書とは,1〜2年以内に出版された書籍を指します。

本号では,4月から7月までの【「注目新刊書」著者によるオンライン研修会】スケジュールを予告します。4月24日の髙坂先生の講習会については既に本マガジンの前2号で内容の予告をしました。その後も概ね月1回のペースで研修会を行います。

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2.スクールカウンセラーのための関係行政論講座
—教育分野で活躍できる心理職になるために—

心理職にとっては,法制度を知ることが臨床活動の幅を広げ,他職種との連携と協働を容易にします。本研修会では,関係行政論を心理職の武器にするためのノウハウを学ぶことができます。これは,教育分野だけでなく,他分野で仕事をする心理職にとっても役立つノウハウです。その点で初期段階の心理職にピッタリの良書です。ただし,これまで法制度と結びつけて実践技能が論じられてこなかったことを考えるならば,学生段階でも中堅段階の心理職も学ぶことが多い良書と言えます。

【テキスト】「深堀り! 関係行政論 教育分野 公認心理師必携」(北大路書房)
https://www.kitaohji.com/book/b594771.html

【講師】髙坂康雅(和光大学)
【日程】4月24日(日)の9時〜12時
【申込み】
[臨床心理iNEXT有料会員](1,000円)https://select-type.com/ev/?ev=2GWHY5T-IAA
[iNEXT有料会員以外・一般](3,000円)https://selecttype.com/ev/?ev=GVJ81h34QUo
[オンデマンド視聴のみ](3,000円)https://select-type.com/ev/?ev=5DzBH43JxfY

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3.第5回公認心理師試験に備える
—迷走する公認心理師試験の行方を読む—

臨床心理マガジンでは,公認心理師資格の試験内容の偏りや,それが心理職に与える悪影響について厳しく批判してきました。それが試験委員に届いたのだと思われますが,昨年9月実施の第4回試験は難問奇問が減りました。しかし,その結果,受験者の平均点が上がったことで,前代未聞の合格最低点の繰り上げが行われてしまいました。無念の涙を呑んだ受験生も多かったのではないかと思われます。

講師の宮川純先生と髙坂康雅先生は,公認心理師試験の問題分析の第一人者であり,定評のある試験対策本の著者でもあります。本研修会では,最新版のご著書の内容にも触れながら,迷走する公認心理試験の動向分析に基づき,第5回試験に向けての準備のコツをお話しいただきます。言うまでもなく本研修会のテキストは,学生段階の良書となります。

【テキスト】
「赤本 公認心理師国試対策2022」(講談社)※1)
https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000360475
「公認心理師試験対策総ざらい 実力はかる5肢選択問題360」(福村出版)※2)

https://www.fukumura.co.jp/book/b588331.html

【講師】宮川純(河合塾KALS)※1)
    髙坂康雅(和光大学)※2)
【日程】5月14日(土)の9時〜12時

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4.心理職統合に向けて臨床心理学史を学ぶ
−心理職“仲間割れ”の源流を探る–

日本の心理職の間では,深刻な“仲間割れ”が起きていますが,それは今に始まったわけではありません。臨床心理学は,その起源から発展に至る過程はまさに分裂と対立の歴史でもあります。

近代の幕開けとともに「個人の自我」という概念が成立しました。「我思うゆえに我あり」ということで自我意識が個人の中心に置かれるようになりました。その結果,成立した主観と客観の対立図式こそが,精神分析(主観重視)と行動主義(客観重視)の対立の原点です。

本研修会では,心を扱う学問として新たに成立した臨床心理学の科学的位置を巡る相克を丹念に描く「臨床心理学史」(東京大学出版会)をテキストとして,仲間割れは単に感情的な対立だけでなく,学問的な意見相違が背景にはあることを理解し,心理職の統合の方向性を探ります。同書では,米国の一部心理職は2002年に精神科薬物処方権を持つようになったことが記載されていますが,今の日本では1949年のボールダー会議に匹敵する会議が待たれていると言えます。

同書は,写真が豊富に入っており,それだけでも興味深く読み進めることができます。自然と臨床心理学の専門知識の学習が進むだけでなく,学派の対立を超えた統合的な視点を得ることができます。その点で,同書は,学生段階から中堅段階,さらにはベテラン段階の心理職にとっても多くのことを学べる良書です。

【テキスト】「臨床心理学史」(東京大学出版会)
http://www.utp.or.jp/book/b372470.html


【講師】サトウタツヤ(立命館大学)
【日程】5月28日(土)9時〜12時

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5.メンタライゼーションを学ぶ (仮題)
−愛着外傷を乗り越えるアプローチ−

近年,境界パーソナリティ障害から解離性同一性障害,複雑性PTSDまで,愛着関係のつまずきのために生きづらさを抱える人たちへの治療としてメンタライゼーションに基づく治療(Mentalization-Based Treatment: MBT)が注目されています。
MBTは,「①自分や他者のこころの状態に思いを馳せること」と「②自分や他者のとる言動をその人のこころの状態と関連づけて考えること」を意味するメンタライジング(mentalizing)に基づく治療法です。このMBTは,精神分析を原点として発展し,現在では方法としては認知行動療法にも近いとされています。

日本では,明確な症状を出さに,一見適応している人たちの中にも,アダルトチルドレンや過剰適応など,親子関係の愛着トラウマに由来する“生きにくさ”を抱えるクライエントも多くいます。このようなケースに対しては,適応を目指す認知行動療法では限界があり,その点でもMBTは有効な方法として注目されています。

本研修会では,MBTの一番わかりやすい入門テキストとされる「メンタライゼイションを学ぼう」(日本評論社)の著者である池田先生に講義をお願いしました。入門講義という点で初期段階の心理職に役立つ内容です。しかし,MBT自体が新しい技法であるという点で中堅段階やベテラン段階の心理職にとっても学ぶ意義のある内容となります。

【テキスト】「メンタライゼーションを学ぼう−愛着外傷を乗り越えるための臨床アプローチ−」(日本評論社)
https://www.nippyo.co.jp/shop/book/8569.html

【講師】池田暁史(大正大学)
【日程】6月26日(日)9時〜12時

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6.強迫性障害に"No"と言うための認知行動療法を学ぶ(仮題)
−OCDに「苦しむ子どもと家族」を支援するプログラム−

強迫性障害(OCD)には2つの発症ピークがあります。それは,14歳未満の児童思春期発症OCDと,19~20歳以後の成人期発症OCDです。したがって,心理職は,成人だけでなく,OCDに苦しむ多くの子どもや若者の心理相談を経験することになります。子どもや若者のOCD(以下,子どもOCD)は家族への巻き込みが生じることになり,家族支援が重要な治療のポイントになります。

OCDについては,曝露妨害療法(Exposure and Response Prevention: ERP)の有効性のエビデンスが出ており,現在では広く適用されています。これは,子どもOCDにも当てはまります。ただし,子どもOCDでは,家族(保護者)の協力を得ての統合的な支援プログラムを実施することが重要となります。

本研修会は,子どもOCDの第一人者のMarch,J.S.の「Talking Back to OCD-The Program that Helps Kids and Teens Say “No Way”, and Parents Say “Way to go”」の翻訳を担当した宍倉先生を講師に迎えて日本版プログラムを解説していただきます。参加者は,OCDに苦しむ子どもと家族がハッピーライフを取り返すための,やさしい認知行動療法プログラムを学ぶことができます。

同書の訳書「強迫性障害に”No"を言おう」(星和書店)は,子どもOCDの具体的な治療手続きを学習できる点で初期段階と中堅段階の心理職にはとても役立つ良書です。同書はとても内容が濃いので,パート1「ご本人と家族ためのOCDの新しい見方」と,パート2「強迫観念と強迫行為を取り除くための8つのステップ」に分け,午前と午後で2つの別の研修会としました。どちらか一方のみの参加も可能です。

【テキスト】「強迫性障害に"NO"と言おう−本人・家族向けの優しい認知行動療法でハッピーライフを取り返す–」(星和書店)
http://www.seiwa-pb.co.jp/search/bo05/bn1038.html


【講師】宍倉久里江(相模原市精神保健福祉センター)
 (協力:新井紘大郎)

【日程】
◇基礎編「OCDの新しい見方」
7月3日(日)10時-12時30分

◇実践編「強迫観念と強迫行為を取り除く8ステップ」
7月3日(日)13時30分〜16時30分

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7.今後に向けて

以上,現在日程が決まっている【「注目新刊書」著者によるオンライン研修会】のスケジュールについてお知らせしました。今後についても,日程が決定次第,順次お知らせします。ちなみに現在,実施がほぼ決まっている新刊書は,次の2点があります。

「公認心理師への関係行政論ガイド」(北大路書房)
https://www.kitaohji.com/book/b593375.html

「現代臨床心理学全5巻」(東京大学出版会)
http://www.utp.or.jp/search/s15302.html

注目新刊書として研修会で取り上げる書籍の選択については,臨床心理iNEXT会員の皆様,心理職の皆様,さらには出版社様や編集者様からの推薦を参考にさせていただきます。新刊書で,心理職の発展に向け良書がありましたら,ぜひ下記の臨床心理iNEXT事務局までお知らせください。
⇒臨床心理iNEXT 事務局 <user-support@cpnext.pro>

■デザイン by 原田 優(東京大学 特任研究員)

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臨床心理マガジン iNEXT 第28号
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◇編集長・発行人:下山晴彦
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