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稲とアガベの仕事を通して、自分が変わってゆくのを実感できる──遠田葵さん

男鹿という地域に惹かれ、仕事を探していたところで稲とアガベの募集に出会った遠田葵(えんだ・あおい)さん。創業からまもなくスタッフとなり、主に店舗の立ち上げ、イベント企画と運営を担当しています。

それまで自分に自信がなかったものの、稲とアガベでの活動を通して成長を感じられるようになったという葵さんに、これまでのお話を聞きました。

男鹿の「人」に魅せられて

──葵さんは、秋田県の出身なんですね。

葵:はい。高校を卒業してから一度東京に出て、老舗和菓子店「虎屋」で働いた後、秋田に戻って、湯沢の一棟貸しの宿を運営している会社で働いていました。

──「稲とアガベ」で働くことになったきっかけはなんでしょうか?

葵:友人と男鹿を訪れたときに、TOMOSU CAFE※1のスタッフのみなさんを始めとした男鹿の方々と出会って、「男鹿、すごくいいな」と思ったんです。“人”がいいな、と。「自分に家族ができたときに男鹿にいたい」と思うほどの感動でした。

※1:男鹿出身の船木一人さん、福島智哉さん、佐藤毅さんの3人がオープンしたカフェ(インタビュー記事を近日公開予定)

うれしいことに、みなさんからも「男鹿に来てほしい」と声をかけていただいたのですが、仕事を見つけることができずに悩んでいました。そんなとき、数名の友人から送られてきたのが、社長(岡住さん)がTwitterに投稿した求人情報でした。

──男鹿で暮らしたいという思いが先だったんですね。「稲とアガベ」の第一印象はいかがでしたか?

葵:「なんだか、面白いことができそう!」と感じました。秋田に帰ってきてから、日本酒関係の方と食事をする機会が増え、日本酒の面白さに気づきはじめたころだったんですが、社長は“日本酒ではないもの”に挑戦しようとしていたので。お酒以外の事業もおこなう予定だと知り、店舗の運営に携わることができるのにも魅力を感じました。

それから社長に長文のメッセージを送ったところ、すぐに会おうと言っていただくことができました。会って、話して、その日に「よし、じゃあ一緒に働こう!」と言っていただけて、想像以上の速さで入社が決定しました。

──なんだか、男鹿に呼ばれたみたいですね。葵さんは(保坂)君夏さん※2とご結婚されていますが、出会いは男鹿に移住してからだったのでしょうか?

※2:同じく稲とアガベのスタッフで、農業を担当している
https://note.com/inetoagave/n/nbbaf632c64f0 

葵:彼とは、湯沢で働いていたころに知り合いました。私は東京から秋田に戻って働いていたんですが、その頃は自己肯定感が低くて、生きづらさを感じながら必死にもがいている時期でしたね。

そんなときに、彼は、私が辛いことにも必死に向き合っているのを感じとって、声をかけてくれたんです。「自分のやるべきことに向き合ってるし、(仲間たちは)それをわかってるから、みんなここにいるんだよ」と。秋田に帰ってきて初めて認めてもらえたように思えて、すごく安心できる言葉でした。

それからお付き合いすることになって、1カ月後には稲とアガベでの採用が決まり、男鹿に移住しました。彼は当時、男鹿で農業をしていましたが、レストラン「土と風」での仕事を紹介したことがきっかけで、「稲とアガベ」と関わるようになりました。

「稲とアガベ」で自分を変えることができた

SANABURI FACTORYには、葵さんの遠縁の漆器店による酒器も置かれている

──稲とアガベで働きはじめて何年になりますか?

葵:2021年10月に店舗の立ち上げメンバーとして入社して、3年目に入りました。

──入社当初はレストラン「土と風」の担当でしたよね。

葵:はい。思い入れがある分、なかなか離れる決断できませんでしたが、信頼している仲間たちに任せることに決め、今は「SANABURI FACTORY※3」の責任者を担当しています。セレクト品の選定はもちろん、営業時間など全体的な運営方法は、私が主に意見を出して、メンバーのアイデアを聞きつつ社長と決定しています。

※3:稲とアガベが手掛ける食品加工場&セレクトショップ(インタビュー記事を近日公開予定)

──「土と風」から「SANABURI FACTORY」に移ったのはなぜでしょうか?

葵:実は、将来独立をして、自分のお店を持ちたいという夢があるんです。社長との面接でもそのことは伝えていて、店舗運営をゼロからやらせてもらえるのであればと入社しました。レジをどう開設するのかも、店舗空間がどのようにできていくのかも、どんな人たちが関わってお店ができるのかもまったく知らなかったので、基礎を学ぶつもりだったんです。

「土と風」に関わり始めたときは、すでに空間ができ上がっていたので、陳列やオペレーションを担当していたんですが、「SANABURI FACTORY」ではゼロから携わることができました。「土と風」の開店準備を担当したことで、「SANABURI FACTORY」の準備では、必要なこと・ものがある程度分かるようになっていると感じましたね。

「おがや」の開店準備にも携わりましたが、3店舗目にもなると、スムーズに進めることができるようになって。将来自分のお店を持つときの開店準備は、ある程度できるようになっていると感じています。

──自分の成長や学びの場として、「稲とアガベ」を活用できているんですね。店舗づくり以外でも、仕事を通して学びはありますか?

葵:入社当時から、社長は私の自己肯定感の低さを理解してくれていて、その上で、挑戦する機会をたくさん作ってくださったんです。小さな成功体験を積み重ねていくことで、だんだん自信やモチベーションになり、徐々に自分の心が変わっていくのがわかりました。

私はもともと頑固なんですが、仕事に対しては素直に向き合うことを心がけ、社長が教えてくださることをうまく吸収できるように努めています。もちろん、厳しい言葉をかけられることもありましたし、家では毎日のように泣くほど落ち込んでいた時期もありましたが、同じ場所で働いている夫から率直な意見やアドバイスをもらって、ハッとさせられたり、自省の時間をちゃんと設けるようになったりと、気づいたら自己嫌悪をあまりしなくなっていました。

店舗やイベントをつくるチームに入って、そのノウハウをゼロから学ぶことができるのは、とてもありがたいことですし、これからの人生に必要不可欠なことだと思っています。そういう機会をいただく中で、自分で自分が変わったと思えるくらい変われるのは、本当に貴重なことなんじゃないかと。この経験ができたことが、稲アガに入った中でいちばんの財産だと思っています。

関わるみんながハッピーになれる空間を作る

遠田葵さん&保坂君夏さんの結婚パーティ二次会「亀の町葵日祭」にて

──ところで、葵さんはなぜお店を持ちたいと思うようになったのでしょうか?

葵:「虎屋」で働いていたときの経験が大きいです。老舗でしたが、マニュアルに沿いすぎない接客をとても大切にしていたので、お客さんから手紙をいただく機会もたくさんあって、未だに大切に持っています。顧客と販売員という立場でしたが、それを超えた信頼関係ができていたように思います。

その心地良さを経験する中で、次第に「こういうことを仕事にしたい」と思うようになりました。人のために何かをする、それで人が喜ぶ、というのがすごく好きなんですよね。先日、結婚パーティーを開いたときも、祝われる側ではなく、イベント主催者の気持ちで、来てくれた人にどうやって喜んでもらうかを考えていました。

──パーティーはいかがでしたか?

葵:いちばんうれしかったのは、私と友人だけの小さな輪が、会場で大きな輪になったことですね。目の前でその様子を見ながら、達成感を覚えました。来てくれた人同士がコミュニケーションをすることで、大きな面白いことが生まれるかもしれない。そう思うと、あの空間を作れてよかったですし、これからもそういう空間を作っていきたいと思っています。

──お店を作りたいというのも、人を喜ばせたい、みんなが繋がる空間を作りたいという思いが原点になっているんですね。将来開きたいのはどんなお店なんでしょうか?

葵:最初は自分の好きなものをおすすめするセレクトショップのようなものがいいと思っていましたが、「SANABURI FACTORY」を通して、それがすごく大変なことだと思い知りました。今は、夫が作った野菜を使った商品を出せるお店ができたらと思っています。自分たちで作った、ストーリー性のある商品が出せたらなと。それに、飲食も、ゲストハウスもいいな……と、この2年間ほどでやりたいことが増えてしまいましたね(笑)

でも、相手が人で、接客を続けたいというのは変わらないです。それから、新しい場所を作っても、絶対に地域の人に来てほしいですね。「SANABURI FACTORY」にもたまに来てくれるおばあちゃんや、散歩中に立ち寄ってくれる方々がいるんですが、そんな風に、地域の方が気軽に立ち寄れるような場所を作りたいと思っています。

──最後に、これから稲とアガベでやってみたいことを教えてください。

葵:自分一人でイベントを主催してみたいです。これまでイベントの担当をしたことはあるんですが、私がゼロから考えたものはまだないので。稲アガのイベントは赤字になってしまうこともあるので(苦笑)、そこから抜け出さなければと思っています。参加者も、スタッフも、運営も、みんなが楽しくて、ちゃんと休憩も取れて、売上もしっかり立つ。そんな風に、みんながハッピーになるイベントを作りたいですね。

【岡住代表コメント】
この会社の創業から一番成長したのが遠田です。僕が気付く前にいろいろなことをやってくれるようになりました。いつも頼りにしております。もっと加速させて、男鹿に人をいっぱい呼び込もう!!

この記事の担当ライター

熊﨑 百子
燗酒から日本酒にハマったお酒好き。JSA SAKE DIPLOMA、チーズプロフェッショナルを取得。現在は日本酒とチーズのペアリングを研究中。オカズミードは山羊チーズとの相性が最高です!再販してください!!
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