見出し画像

名都美術館名品展 優艶なる日本画


笠岡市立竹喬美術館に行ってきました。

愛知の長久手にある名都美術館と、竹喬美術館の作品を交換する展示でした。学芸員さんによると、名都美術館の中でも特別な作品ばかり出してもらったので、これらを一同に見られることはそうそうなく、しっかり楽しんでほしい、とのことでした。

名都美術館の名品の多くは、上村松園を始めとする竹内栖鳳の弟子が描いており、小野竹喬の兄弟弟子となるため、このような展覧会が企画されたのがもしれませんね。

名都美術館は私立の美術館なので、個人のコレクションが元になっていますが、早くから多くの人に見てもらうことを意識で蒐集していたため、屏風を始めとして大きな作品が多く、見応えがあるのが特徴です。

また、コレクションには作家の傑作も多いため、作家の特徴がよく分かります。



中でもよかったのが近年ブームになっている美人画。上村松園、伊藤小坡、鏑木清方、伊東深水が比較して展示してあり、比較してみるのがとても面白かったです。

特に松園は明治末期から昭和までの作品を見ることができ、松園の中での美人画が確立されていく過程が見て取れます。主線が洗練されていくのが印象的でしたが、フライヤーにもある晩年の作品はどんどんシンプルになっていくにも関わらず、美しさが増していくという感じでした。

「春秋」


徳川慶喜の孫にあたる徳川喜久子が皇室に嫁ぐ際の調度品として描かれた「春秋」。この作品は松園展をするなら欠かせない作品らしく、展示時期も限られていたため観れてよかったです。


伊藤小坡は松園に次ぐ美人画の女性作家です。松園より2歳年下。伊勢の神社に生まれて、実家には美術館ができているとか。師・森川曽分が亡くなり、谷口香嶠に師事。同じく香嶠に師事していた伊藤鷲城と結婚。画業を続けながら子どもを育てていきます。そのためか、日常的な場面を描いた多幸感あふれる作品が多かったです。

小坡の美人画は顔がふっくらしていて可愛い。香嶠が亡くなってからは予てから交流があり、憧れだった栖鳳の元で学びました。

「尚武」


松園と小坡はとても対象的な作家です。

松園が洗練され、追随を許さない完成された美を描くのに対して、同じ美人画でも小坡は日常的な場面を描きます。小坡の作品へのインスピレーションが日常にあったからなのでしょうか。また、歴史画家の香嶠に師事していたこともあり、市井の人々を描いた小坡の絵は、歴史画、風俗画としても貴重なのではないかと思います。

松園の「人生の花」と小坡の「春のよそほい」

同じ主題の美人画ですが、違った印象を受けました。


「人生の花」



「春のよそほい」


わたしは松園の完成された美しさも、小坡の内面から溢れ出る美しさもどちらも好きですね。ふたりの関係が気になったりもしますが、意識していたのは確かだと思います。



美人画にしか触れませんでしたが、他にも京都を中心に明治末期〜昭和の日本画の名品が揃っています!(大観や御舟など院展の方も少しあります!)

松園の「春秋」は11月17日から「男舞の図」になります。会期は12月13日まで。


お近くの方は行ってみてください。
名作がゆっくり見られると思います。


私は伊勢の伊藤小坡の美術館に行く計画を立てます ()



次回は大原美術館(の予定)です。



※画像は名都美術館名品コレクションⅡから引用。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?