演歌の希望

突然だが、演歌が好きだ。
いつから好きになったのかなあ。
私はいわゆる「ザ・ベストテン」世代なので、小さい頃は、お目当てのアイドルのランキングを見守るついで(あえてこの言葉を…)に、興味があるない関係なく耳に入ってきた感じ。
 

 五木ひろしさんの「契り」と日野美歌さんの「氷雨」、渥美二郎さんの「釜山港へ帰れ」、八代亜紀さんの「舟唄」などなど、ベストテンが出会わせてくれた名曲がいっぱいある。

 おかげで今では演歌専用のプレイリストを作るほどガンガンに聞いている。電車で! 街を歩きながら! ショッピングの途中も!
「ふふふ、細川たかしの『望郷じょんがら』アガる…!」
「やだもう帰り道に吉幾三の『酒よ』泣ける……!」
とかいいながら。感情は大忙しである。

 私は紅白歌合戦が大好きなのだが、テンションが上がるのもやっぱり演歌陣。特に「演歌の希望」として、山内惠介さんと三山ひろしさんに一目置いている。
 いろんなコラボをしなやかに受け止める山内惠介さん。受け止めるだけでなく、ちゃんと主役になっている。いつの紅白だったが、刀剣乱舞のメンバーとコラボをしたとき、濃いメンバーに埋まらず、かといって邪魔もせず、ちゃんと歌の世界を美しく完成させていた。私はそのことに驚いた。なかなかできない、凄いことだと思う。
 そして三山ひろしさん。彼は近年、けん玉ギネスチャレンジを続けているので「けん玉の人」という印象が強い。私も最初はそうだったが、3回くらいから見方が変わってきた。歌いながらけん玉ギネスって、実は大変じゃね?自分が失敗したら、それまで成功していたとしてもパーになる。そんな緊張感の中、歌の世界に入り込んで、朗々と歌うこの人、すごくね? と。
 私はそう気付いてから彼が大好きになった。

 そして、少し前、三山さんのコンサートに行くチャンスができた。嬉しい! 私は音楽が大好きな先輩を誘った。
 とはいえ、先輩の得意分野は洋楽。演歌はからきしである。誘ってもこないだろうなあと思ったのだが、このときは気分が乗ったのか、あっさり来てくれた。
 私は会場に入った途端「ああ、来て良かった」と思った。なぜなら、ファンの人がとても嬉しそうだったから! 想像通り年齢層は高かったが、法被を着た人達が、団扇とキレイなサイリウムを振り、本当に幸せそうだった。
 そして開幕。紅白でもしっかり確認済みだったが、三山ひろしさん、MCがとにかくうまい。ユーモアたっぷり、そして愛嬌たっぷり。第一部は彼自身のヒット曲やカバー曲など盛りだくさんで、「ビタミンボイス」と呼ばれる声の深みを堪能した。


そして第二部の「ひとり忠臣蔵」。すごい迫力で、第一部は普通に聴いていた先輩の姿勢が変わった。「行くけど、演歌あんまり興味が無い」と笑っていた先輩が、身を乗り出していた。そして、時々顎を触りながら、ジッと引き込まれるように見ていた。
 三山さんの響き渡る美声と、先輩の前のめり。
 
 演歌は、なんというか、情をかき乱す。

演歌のプレイリストを聴きながら、あの時の感動をふと思い出してしまった。

歌っていいですね。


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