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パレスチナ/イスラエル問題

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2024年1月の記事一覧

ガザをめぐり対照的な南アとドイツ

ガザをめぐり対照的な南アとドイツ

 今も毎日100名以上が殺され続け、死者総数は2万6000名(そのほとんどが女性と子供)を超え(これ以外に行方不明者が数千名いる)、国連職員が「この世の地獄」と表現するガザ。それなのに、早くもマスメディアの関心が低下し始めていた1月26日、国際司法裁判所(ICJ)はイスラエルに対し、ガザ地区に対するジェノサイド(集団虐殺)を防ぐあらゆる措置をとるよう求める仮保全措置命令を出した。これは、イスラエル

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先住民族としてのパレスチナ人について

先住民族としてのパレスチナ人について

 これも読書会での話。イスラエルが入植型植民地主義の国家であることからすれば、その犠牲者であるパレスチナ人は先住民族と呼んでもよい、という話をしたところ、ある方が、パレスチナの土地にはアラブ人が定着する以前にユダヤ人が住んでいたということから考えれば、パレスチナ人に対してはユダヤ人が先住民族ということになるのではないかという趣旨の話をされた。そのとき、私は適切な応答ができなかったのだが、改めて考え

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『パレスチナの民族浄化』(2)

 それにしても、こうした重大な事実がなぜこれまで(おそらく)大半の人々に知られてこなかったのだろうか。原因のひとつに、イスラエルが第2次大戦中の「ホロコースト」というユダヤ人の民族的惨劇を最大限に政治的・外交的に利用し、自らを犠牲者民族として演出することに成功してきたということが挙げられよう。まさに林志弦の言う「犠牲者意識ナショナリズム」に基づく「被害者特権」の政治的活用である。1982年にイスラ

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『パレスチナの民族浄化』(1)

  岡真理さんの『ガザに地下鉄が走る日』や『ガザとは何か』で紹介されていたイラン・パぺの『パレスチナの民族浄化』を読み、圧倒された。

 イスラエルという国が建国以来、虐殺に次ぐ虐殺、追放に次ぐ追放、破壊に次ぐ破壊により成り立ってきた国だということがよくわかった。こうした事実が克明に記されているため、長時間連続して読み進めるのは心理的に困難で、読了までにかなり時間を要した。

 著者のイラン・

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入植型植民地主義とその犠牲者について

 先日、読書会でイスラエルについて話し合っていたとき、Nさんが、イスラエルはsettler colonialism(入植型植民地主義)という点で、アメリカ、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドなどと共通しているので、これらの国々は(自国の植民地主義を自己批判しない限り)イスラエルを正面から批判できないのだ、という指摘をされた。それに対して私は、北米やオセアニアにおける入植型植民地主義の話は16

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