マダミスで犯人役になるって怖くね?

 元々ボードゲームやTRPGといったものに関わりが薄かったのですが、最近マーダーミステリー(以下、マダミス)というものを知り、実際に店舗でプレイしてみるとこれがまたすごく面白く、まだ数シナリオしかプレイしてませんが、ゲームへの没入感、ゲーム中の推理、最後に明かされるシナリオの感動的な結末、まるで一本の長編大作映画を見終わったあとのような感動が押し寄せてきます。毎回シナリオの制作者やGM(ゲームマスター)の手腕に感謝しつつ、ストーリーの余韻に浸る。マダミスに確実にはまりつつあります。あまりに面白かったので、感動を共有したく、twitterアカウントも作りました。(ひじりまる @indoor_gnu)

プレイ中は一見関係なさそうヒントをもとに推理しつつ、閃いた瞬間が僕は一番好きです。

 マダミスで犯人は誰かと推理するそんな日々、しかし来るべき日という必ず来るのですね。
ある回で意気揚々とシナリオを読んだ僕は冷や汗をかきました。

「これ…犯人なのでは?」

想定していなかった犯人役がとうとう自分にも回ってきたのです。名推理をして犯人を探し当ててやるという意気込みは遥か向こうへと消え失せ、湧き出る冷や汗、乾く喉、混乱する大脳、無情にも鳴り響くゲームスタートの合図、他プレイヤーの意気込んだ瞳。僕も「これはやりきるしかない」と腹を括り、物語を紡ぎ始めたのですが…。
 

 その時のプレイがどうなったのかは置いといて、やっぱり犯人役になるとどうしてよいか分からないという方も多いのではないでしょうか。数シナリオしかプレイしていませんが、僕と知り合いの経験をもとに、どうやって犯人役をプレイしていけばいいのか、ということをまとめてみました。正直,備忘録的な部分が多いので、あてにしないほうが良いです。また、特定のシナリオのネタバレにならないよう、一般化を心がけて記述しています。この記事と特定のマダミスのシナリオが被っていたということがあれば、それは本当に偶然です。(もし記載しないほうが良いことがありましたら、マダミスの関係者であるかを問わず、記事の修正等は対応いたしますので、ご連絡ください。)

1 「嘘をつく」ということ


 犯人役になった場合、プレイ中に少なからずの嘘をつくことになります。問い詰められた時に誤魔化すためにつく消極的な嘘や、推理をかく乱するための積極的な嘘など様々あることでしょう。個人的には「序盤から的確に大きな嘘を積極的につく」という行動が犯人として強い行動だという気がしますが、犯人役になると大きな心理的な障害が発生します。初対面の同卓の他プレイヤー、初めて読むシナリオ、一生に一度しかプレイできないという秘匿性。個人差はありますが、こうした前提から「つまらないミスをして犯人だとすぐばれたらどうしよう、墓穴を掘ることは許されない」というプレッシャーが発生します。人狼のように何回もプレイし直せる場合は失敗してもよいですが、マダミスはそうはいきません。
 そんなプレッシャーに耐え切れないよ、という場合は積極的な嘘をつかないでおく、というのも全然ありだと思います。推理の状況によっては、自分が犯人であるという物的証拠や状況証拠が揃わず、全然違う人が疑われるという場合もあるでしょう。ただ、それでも安心はできないのは、三人寄ればなんとやら、直観的に真実を推理してしまう名探偵が発生することがあります。こうした場合、やり過ごそうと思っていたところに、不意打ち的に疑いの目が向けられるので、慌ててしまい上手く切り返せず、直観的推理が卓の中での確信的推理になってしまう、ということも…。
 積極的に嘘をつけない、嘘をつくのが苦手、という方が犯人になった場合でも、「嘘をつく準備」を整えておくのはとても重要です。そして嘘を見破られないために必要なのは、嘘と真実を織り交ぜてストーリーを用意しておくことです。

2 どんな嘘をつくのか


2-1 被害者や他プレイヤーとの関係性
 シナリオに登場する被害者や、そのほかのキャラクターとの関係性について偽るというのが、まず考えられます。例に挙げると、家族関係(兄弟姉妹・親子)、債権債務関係(借金や資産の貸借)、旧友、教え子と恩師、(過去に事件があった仮定して)加害者と被害者、など様々考えられます。家族関係がある中での殺害(親殺し・兄弟殺し)は相当の動機が必要になりますし、ゲームとして遊ぶにはかなり雰囲気が重くなります。借金などは現実世界では他殺の動機として十分考えられますが、最後の結末で「借金が返せなくて…。」という動機だったら、少なくともエモい雰囲気を出すことは難しくなります。過去に何らかの事件があったと仮定し、犯人役の自分がシナリオ中の被害者に対して後悔している、みたいなストーリーだったら「今回は加害者(犯人)ではないかもしれない。」と他プレイヤーに思わせることができるかもしれません。
 また、禁断の恋という関係性の嘘をつくのもいいかもしれません。フィクションの中で恋愛は、ストーリーに深みを持たせることができますし、プレイ中のシナリオに恋愛関係があっても不思議ではありません。しかし、だからこそ既にシナリオ中に恋愛の設定があり、被害者や他プレイヤーと恋仲がバッティングしてしまう可能性もあります。また、他殺の主たる動機として、「痴情のもつれ」というものがありますので、むしろ動機を深める可能性もあるので注意が必要です。ある資料によると、痴情のもつれ以外にも憤まん・激情,報復・怨恨,暴力団の勢力争い等,金銭の貸し借りといったものは現実においては他殺の主たる動機となっています。

2-2 物的証拠(凶器等)の所持目的
 プレイ中に証拠として何らかの形で凶器や確固たる証拠が明らかになってしまった時、そしてそこから犯人役の自分に疑いの目が向けられる時は、その証拠について嘘をつく必要があります。証拠は自分で最初から持っていたり、途中から何らかの形で提示されたりと、シナリオによって様々だと思いますが、少なくとも後々明らかにせざるを得ない可能性が高いです。その証拠が把握できた時点で、その言い訳を考えておく必要があります。
 証拠が殺害のための凶器等であった場合、自分の表向きの役としての利用方法をまず考えてみるのが良いでしょう。一般的な凶器といえば、ナイフなどの鋭利なもの、鈍器、拳銃、薬物、絞殺のための縄などがまず考えられますが、ナイフなどは調理、薬物は持病などが考えられます。また、実は自分は事件を捜査していたために、凶器を持っていた、という理由も考えられます。こうした真っ当な理由の他にも、何らかの目的や秘密があり、他の人物から盗んだ、預かった、押し付けられた。または犯行現場等で拾った、被害者から託されたなど、様々考えられます。真っ当な理由では無い場合で嘘をつく場合、密談などでこっそり伝えるという方法もあります。

2-3 事件時のアリバイ
 当たり前ですが、犯人は犯行時刻にアリバイがありません。時系列を整理し、それをもとに疑われるということも考えられます。犯行時刻くらいに他の人物がしていたことがあれば、それを目撃していた、という形で間接的にアリバイを作ることもできます。また、他の人物から何らかの証言が出てきた時点で、「私も(それらしい人を)見ました。」と相乗りすることも考えられます。いずれにしても、なぜその場所で他人を見ていたのか、見ることができたのか、という質問には答えを用意しておいたほうがいいでしょう。また、嘘をついてみたは良いものの、自分が他の人物に実は目撃されていた、というパターンもありますので、注意は必要です。意外と素直に「いや、それは私ではない。私はそんな場所に行ってはいないし、その時間にどこにいたかは今はまだ明らかにできない。」としらを切り続けたほうが良いパターンもあるかもしれません。
  

2-4 秘密の創作について
 マダミスの場合、ほとんどのキャラクターは大なり小なりの秘密を抱えており、それが故に推理がなかなか進展していかないのがマダミスの醍醐味の一つでしょう。犯人の秘密はもちろん「自分が犯人である」ということになりますが、密談といえどこれを明らかにするのは絶対に許されないため、犯人は一見秘密を持っていないように見えます。各キャラが秘密を持っているという前提からすると、この状況はかなり犯人役のプレイヤーを怪しくさせます。
 上記に述べた被害者等との関係性、証拠との関連性、アリバイなどの嘘をなるべく網羅できるような、架空の秘密やミッションを捏造する必要が出てくるでしょう。その際、すでに情報として明らかになっているものを絡めながら、嘘と真実を織り交ぜて嘘を創作すると、説得力を持たせることができます。
 どんな秘密を持っていることにするかですが、これはシナリオや卓のプレイヤーや推理状況によって多種多様でケースバイケースになるので一概には言えませんが、例に挙げるとするならば以下のようなものでしょうか。
 ①「秘密っちゃ秘密だけど、本筋とは関係なさそうだな」という軽い秘密。
 (ネガティブな例:軽犯罪、セクハラ、横領、浮気、前科、つまみ食い 等)
 (ポジティブな例:秘密裏に事件を解決したい、他の人物へのサプライズを用意している 等)                       
 ②「めちゃくちゃ黒いけど、動機にするには味気ないな」という結末として不相応な秘密。
 (借金がめちゃくちゃあった→エモい結末にならない)
 嘘の秘密をあえて明らかにして議論してもよいですが、嘘とは言え建前は秘密ですから、やはり密談などを利用して少数に対して「実は…」という形で伝えていくほうがよいかもしれません。また、嘘の秘密が大筋しかできあがっていない場合は、小出しにしながら、さも事実かのように匂わせてみるというのもありでしょう。「実は、被害者とは血がつながっている」「実は、被害者にはたくさんお金を貸していた」と小出しにし、二言目には「でも今はまだそれしか言えない。」と言います。
 ほとんど嘘が組み立てられていなくても、推理や密談で得た情報をもとに肉付けしたり、実際に話しているうちに新しいアイデアが浮かんでくることもあります。


  
3 犯人としての振る舞い


3-1 確実に犯人じゃなさそうな人を白認定する。
 他プレイヤーは疑心暗鬼に陥っている中、犯人視点だと、犯人っぽく事件にかかわっているグレーっぽい人と、絶対に事件にかかわってない人が見えてくる時もあります。
 状況により無差別に「こいつのほうが怪しい!」という推理や論理を展開していくよりかは、早い段階で白な人を味方につけておくほうが良いかもしれません。犯人がどんなに頑張っても、中盤以降は証言のすり合わせや次々と証拠が明らかになり、何名かに容疑者が絞られてくる、ということは序盤から意識しておくべきでしょう。もちろん犯人役の自分だけヘイトが集まることもあれば、運がよく容疑者が3人くらいになったものの決め手にかけ、三つ巴になるかもしれません。そうした時のために一人でも味方につけておきましょう

3-2 メタ推理対策
 表情や行動といったプレイヤーの「メタ的な部分」について、すべて文章でコミュニケーションを取っていない以上、推理に含まれてしまうのはしょうがないと個人的には感じますし、そこに対人の面白さがあるかと思います。実際、犯人役をやってみると、どうやって嘘をつこうかなどを考えている時間も増え、誰が犯人かという推理に消極的になっている場面があります。こうしたメタ的な部分に気を付けて、推理には積極的に参加して発言し「推理してる感」を醸し出していきましょう。他の人の怪しい発言があったら積極的に取り上げ、他の人物に気を逸らしていきます。

3-3 適度に議論を停滞させる
 推理がスムーズに進行すれば、それほど真実に近づき自分が真犯人であることがばれやすくなります。他の人の質問を、言葉を替えて再度質問したり、犯人側から見れば何の価値もない証拠などを深堀していくことで、多少の時間を稼ぎつつ、3-2で述べた「推理してる感」も出していきましょう。比較的どうでもいい推理が展開されがちな序盤に有効かもしれません。
 他にも、推理や論理の飛躍があったプレイヤーに改めて説明してもらう、議論展開が早いシーンではゆっくり再度説明してもらというのも、議論の停滞に寄与するかもしれません。しかし、真っ当な推理のときに再度説明させると、プレイヤーの記憶に確実に残るので注意が必要です。
 また、当たり前ですが明らかに議論を停滞させるような行為は、するべきではないということはしっかりと述べておきます。プレイのアクセント程度と考えてください。

3-4 パッション理論
 心情に訴えたり、勢いで押し通し論理を展開することを指します。
 推理も終盤戦、いまいち議論が煮詰まってないとき、パッションで他人に疑いの目を向けましょう。
 ただ、追い詰められた足掻きに見えてしまうと、それが逆に決定打になるかもしれないという諸刃の剣ではあります。「僕はキラなんかじゃない、信じてくれよ!」
 
3-5 後ろ髪引かれる戦法
 議論も終盤の全体議論、本当にギリギリというタイミングで真剣に推理しているふりをして、ほかの怪しい人物の名前を挙げておくという戦法。
 最後に聞いた名前や推理がプレイヤーの頭の中で反芻されて、ミスリードできるかもしれません。


4 そのほか注意するべきこと

4-1 キャラシートや設定をよく読む
 犯人かどうかは関係なく、焦ってキャラの設定や証拠を流し読みすると、重要な部分を見落としがちです。ゆっくり落ち着いて読みましょう。


5 犯人とバレたっていいんだ


 嘘をついて犯人役だとバレないようにするために、ここまでだらだらと書いてきましたが、僕は犯人役の人が勝ちにこだわる必要性は無いと考えています。本当の犯人が見つかるという展開がそのシナリオにおける「TRUE END」な訳で、犯人役以外の方はそれを目指してプレイしています。仮に推理がトントン拍子に進み、なんということなくあなたが犯人であるということが分かったとしても、みんなが推理して出てきた結果なので、みんな満足してプレイを終えていくことでしょう。下手な嘘をついて墓穴を掘るよりかは、推理に身を任せてしまうというプレイングは、十分尊重されるべきだと思っています。大事なのは、いかに自分も含めて参加者が楽しめるか、という部分だと思います。

今日もまた、これからマダミスをプレイしてきます。
犯人役になりたくないような、なりたいような…。

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