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Special Days雑談/毎日の中にある音楽を


(追記)23日5時段階で一度投稿したものに18時時点でまた大幅加筆修正しています。どんだけ書くねん。

こちらはビートメイカーJoint Beautyのジャジーなビートに載せて、藤井隆とピーナッツくんが歌い手としてそれぞれの良さを前面に出しているトラック『Special Days』の感想記事になります。
以下の記事は原則敬称略で記載しております。気になりましたら申し訳ございません。アーティストに変に気を遣うのはよくないなっていう勝手な判断でございます。

もうほんと…良いからみんな聴いて…とか言いつつも、おそらくこの記事を読んでいる方の多くは聴きこんだ上でいらっしゃっていると思われます。となれば、私は勝手に書き散らしていきたい。共感いただける部分が多少でもあればうれしく思います。

『藤井隆』というアーティスト


だいぶ昔から、藤井隆はアーティストだなと感じていました。具体的には吉本新喜劇で踊っていた時から。今でこそお笑いの中でも歌ネタはメインストリームになっていますが、彼が新喜劇芸人として活躍していた頃はそこまで多くなかった印象です。月亭可朝とか横山ホットブラザーズとかまでいくとそりゃいたのはいたんですけどね。(笑)

新喜劇でも彼は異質でした。あっというまにバズりましたし。みんなマネしてたし。

彼のアーティスト性が爆発していたのは新喜劇以降の『マシュー's ベストヒットTV』でしょう。藤井隆とはまったく別のキャラクターでありながら、逆説的に藤井隆の内面がよく表れていました。
ハジける鮮烈なカラーリングや言動、それでは隠し切れない対談相手への気遣いや感情。相手へのアーティストとしてのリスペクトもありながらも、自分自身のアーティストとしてのプライドも視聴者ながら感じていました。でないとあんなに堂々とはできない。深夜帯にやってた頃が一番好き勝手してて好きでした。(笑)

特に深夜帯と

キャラものだけでなく、音楽活動も軌跡を。オリジナルの曲も作りつつ、他アーティストの企画にも多数参加。2023年には一発撮りのYouTube企画『THE F1RST TAKE』に参加。『ナンダカンダ』と『ヘッドフォン・ガール-翼がなくても』の2曲を歌っています。今回はここ、彼のシンガーとしての魅力について考えてみました。

歌い手としての『藤井隆』の魅力


後述する内容はすべて私の勝手な感想ですので、予めご承知おきください。

魅力の一番はのびやかな歌声だと思います。今回の"Special Days"では特にサビの部分で感じられますね。一般的な意味での『上手な歌うたい』ではないとは思うのですが、これがいわゆるJ-popと大変相性がいい。
誤解が生まれないように頑張って説明しようと思うのですが……私は歌自体には「うまさ」が必須だとは思っていません。逆に邪魔になることもある、と感じています。

曲っていうのは難しいもので、いわゆる歌が上手いというのはアートとして考えた場合は「絵がうまい」と言われているようなものでして。表現したいものがある場合、まずそれを表現するために技術が存在します。上手さというのはその技術であって、技術そのものが目的化しているのを評価されているようで、個人的に結構もにょります。同じ理由でカラオケの採点ももにょっています。

それよりは「その人が表現したい、その人だけの曲」や「その人だけの絵」のほうが何倍も魅力的に感じます。そして、藤井隆の曲は彼の持つ人柄とアーティスト性をより高める音楽だと感じます。

…ですが、歌っている本人は割り切れてはいないでしょう。彼自身、期待されているように歌えているのか不安な様子も感じ取れます。謙遜を旨とした性格ですので基本そう見える、という部分もあるでしょうが、『本業ではない』という後ろめたさもあるのかもしれません。

私は同じ印象をぽんぽこにも感じています。ぽんぽこも自分が『歌が上手い』とはまったく思っていないようですが(実際生歌は本当に苦手そう)、ただ彼女が歌った歌を一つの楽曲としてとらえたときには彼女の声と音楽はひとつの世界を作っています。これに関しては別記事を書く予定ですのでそちらに譲ります。

あとは、朴訥ですが温かい歌声。音域が特別広いわけではないです。でも、何度聴いても落ち着く声。それでいて、聴くとパッと「あ、藤井隆だ。」とわかる。こんなの欲しくても絶対に手に入らない。彼の唯一無二の武器でしょう。それを理解したうえで各プロデューサーたちは彼の音楽を作ります。『ナンダカンダ』は当時求められていた音楽と彼の魅力がマッチしていた名曲です。さすが朝倉大介。Tofubeatsも『ディスコの神様』を作ってましたよね。これオートチューン結構効いてて面白かった。

Joint Beautyは「よくわかってる人」。


上記藤井隆のことを全部踏まえたうえで、今回の"Special Days"のトラックはほんとによくわかってる。いやまあほかのトラックメイカーさんたちもよくわかってるんですけど。音色自体はそれぞれ皆さんの特徴が出ててそこがウリなんですけど、藤井隆に求めているものは共通しているな、って。

温かみ、そして元気。それをもらえる曲であれ。
それを満たすためには、あまり上手くなってくれるな、とか思ってそう(笑)

そして今回の曲はそれに加えて、大人になった藤井隆の空気感を表現したいのかなって。ジャズを基盤とした管楽器とクラップを思わせるビート。夏の終わりと秋の装い、どこか都会の空気も感じます。マシューの故郷はニューヨーク。ここまで想像して作ったんやろうか、って思ってます。頭の中では藤井隆が街並みの中を歩きながら歌っていました。

後述するピーナッツくんもマシューや季節感に関するフレーズをリリックに乗せていて、全体の空気感を作る良いサポーターになってくれています。温かみのある音楽って、ともすれば扁平に感じられて退屈に感じることもあるんですが、ピーナッツくんのライミングが音楽に変化を与えています。そこからメインの旋律に戻ってくる。完璧な采配です。

ジャズでもいけるんじゃん、豆。


いつもゴリゴリのビートに載せて歌っているピーナッツくんですが、今回はシックなオトナのリズムに乗ることに。そのためかいつもよりオトナなリリックが多いように感じました。また、開放的です。

張り落とすように求む繊細なタッチ このglooving 偉大なるstupid

ここは「針落とす」ジャズの音色と「張り落とす」接触感のあるマッサージのイメージを重ね合わせています。もっと穿つと、伝統芸である「hot  hot」に掛けてある可能性も。いやもう下ネタとか言わんといてください。
でも、ほぼ確実に「偉大なるstupid」は藤井隆のリスペクトです。関西住みなら新喜劇で育ってきているはずだしなあ。

ノストラダムス ターロットカードでも
予言できない このチャプターを

藤井隆とセッションできる驚きと喜びが感じられるようです。前述していますが関西住みで新喜劇知らないとかありえないですからね。新喜劇もマシューも世代的にも見ていたと思われます。

モバイルバッテリーでiPhone 充電 
wavファイル染み込む 愛のメッセージ
波の間をcrusing まるで九十九里 
ぼくらいまヌーディー 羽伸ばすキューピッド

wavファイルと波を掛けているのもオシャレだし、愛とiPhoneも。電子の波を泳ぎながらもリアルの世界の解放感も演出する「九十九里」。藤井隆パートのラブソング感も演出しつつ、次のオリジナルパートに続いていきます。

ふりかけるシーブリーズ 霧がかる街
夏の冷えピタ すぐ剝がれてたり
井の中の蛙 それじゃ台無し さすがに 僕の手の中の未来
I'm felling like a トムソーヤ マジ澄み渡る空
アメリカで積んだ経験 ホストブラザーのアメフトタックルにSay yes

全体的に夏を思わせるリリックなんですが、「霧がかる街」「澄み渡る空」などの秋を思わせるワードが多いのも、夏の終わり感を出しているポイントなのかなと思います。

また、マシューのアメリカ設定と自身のアメリカの思い出や印象を重ね合わせている部分も多いかと思います。留学先が西海岸だったりするなら海岸の描写がアメリカぽいのも頷ける。「井の中の蛙」だった彼が「トムソーヤの冒険」をしにアメリカに行ったって話なのかなあ、って。

また、ピーナッツくんにしては珍しくファルセットが目立つ歌唱で、これも大人っぽさに一役買っています。オートチューンでファルセットって結構調整大変そうな気がしますが、でも確かにこの曲調でこの部分ならファルセットのほうがいい。たくさんのコラボの中でいろんな曲へのアプローチを見出している気がして、ピーナッツくんの歩みも感じられます。いいね!

これは藤井隆の歌である、という部分も立てつつ、『ピーナッツくん』として呼ばれた意味をきちんと刻んでいこうという、まさしく『背伸び』感。思いを感じられる構成で、すごく良いですね。

余談ですがケビンのタックルの話すべすべちょすべ※の話でありましたでしょうか?生放送だったっけ…間違っていたら(そんな話は無いなら)すみません。有識者の方の指摘もお待ちしております。
(※すべるようですべらない、ちょっとすべる話、の略)

あと毎度のことなんですが日常感のあるリリック入れるの上手。「夏の冷えピタ」ここで入れてくるとは。「思った通りにはならない」ことへのメタファーとしてもかなりカマしてます。

Joint Beautyさんはかなりのぽこピーリスナーのようですので、上記リリックにはにやにやしていたんじゃないだろうかと勝手に思っております。絶対アメリカ留学のこと知ってるはずですしね。でないと「初期から見てた」とは言わないでしょうから。結構なファンだと勝手に思っております。

日々のそばにある音楽。


2023年はピーナッツくんにとって音楽的にとても羽ばたいた年であることに間違いない。個人的にはそこに藤井隆との化学反応があったことに喜びを抑えきれなかった。Joint Beautyマジでありがとう。最高の曲だった。私がこの記事を書いているのは8月23日午前5時。この曲のリリースは8月23日午前0時。この事実だけで嬉しさがつたわるでしょうか。

曲を出してくれただけで喜べる限界オタクでもあるんですが、聴き終えた後の多幸感。でも寝なきゃな…という感情と、きっとここで書かなければ起きた後も書かないだろうという確信に近い感情がありました。
「好き!」という気持ちに嘘がつけなかった。後悔は少しだけしている。

他に書く予定の記事押しのけて書いてしまった。大好き。

記事を書いているときにずっとこの"Special Days"を流していたんですが、とにかく飽きない。ジャズという音色の特徴もあるのだと思いますが、とにかく藤井隆とピーナッツくんの相性がいい。日常的というか、心地いい声。うまさを基本軸にしない、日々のそばにある音楽。そういう思いを体に感じさせてくれるようです。

ああ、またいい音楽に出会ってしまった。幸せです。

最後まで読んでいただいてありがとうございました。

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