見出し画像

刀ピークリスマスのテーマソング/ポップソングの追求


0.期待される音楽、ポップソング。


刀ピークリスマス2022のテーマソング、通称『刀ピーoverdose』。ピーナッツくん初の1000万再生超えの作品であり、またVtuberのオリジナル曲としては投稿から最速の41日での1000万達成の記録となります。宝鐘マリンの『I'm in Your Treasure Box*あなたは マリンせんちょうを たからばこからみつけた。』の50日を更新するという偉業です。宝鐘マリンがvtuberの中でどれくらい燦然と輝く星なのかを知っていくと、ますます意味が深くなります。ただ、この曲が持つエネルギーを一時的、瞬間的なものに感じる人も多いのかもしれません。

今回のバズの広がりはいくつも要因が重なり合っていますが、主たるものはYouTubeのショート動画及びTiktok上でダンスミュージックとして流行ったため、と考えてよいと思います。そこのところは多くの人が理解している通りだと思いますので、今回は「これは狙って作ったバズだ」という点について感想を述べてまいります。メインはoverdoseの持つ性質に関してですが、overdoseの前に何があって、その先にあるものに期待している、ということについて語りたいです。

さて、まずはラッパーとしてのピーナッツくんの最大の武器とは?
それは印象に残るhookだと私は考えています。とにかくhookがいい。TypeBeatを用いているということでビート選びもすごくいいんですが、あんなに口ずさみたくなるhookを作れてなおかつ、それが数曲とかじゃない。出す曲出す曲そうだから驚くしかない。天性の才能を感じます。

hookに頼らないだけのリリック構成もしっかり作られているんですが、ピーナッツくんのアルバム曲などと比べて、刀ピーは曲としては…言葉選びがすごく難しいんですが、言わば『甘く』作られている印象を受けます。作りが甘いということではなくて…比喩でないと伝わらない気がします。
どろりと濃くて強い曲ではなく、薄くて飲みやすい。苦味を感じにくい。そこが一つ違いなのかな、だからこそ『ポップカルチャー』としては刀ピーのほうがバズりやすいのかな、と思っています。そして、ピーナッツくんはそれを「わざと」している。計算づくで発表しているはずです。

ポップソングの宿命は「一小節を聞いたり歌ったりして、ああそんな曲あったねえ、って話題の端にのぼる、そして瞬間的に忘れられていく」儚いものです。完成度はおしなべて高いものの、完成度が触れられることはほぼありません。多くの人はその曲の一小節でその曲のイメージを決定します。
けれど、その一小節が誰かの記憶をバッとよみがえらせる。自分の幼いころ、若かったころ、大切な人と喧嘩した、なくなった母親が好きだった、当時の友達と一緒にカラオケで歌った…そういう身体的な瞬間性をよみがえらせる一つの装置がポップソングだと私は考えています。

15年くらい前まではそれがテレビの役割でしたが、そこからニコニコ動画、ここ10年でYouTube、ここ5年でVirtualYoutuberや覆面的な歌い手が若者の今=身体的瞬間性をつかんでいる気がします。そこで流れるポップソングは、歌譜だったり星街すいせいだったりLOF-MAOだったりChroNoiRだったりするのでしょう。
そもそもニコニコ=ボカロ初期のPだった人たちが今のポップミュージックのカラーリングの一つを担っていますし、Adoやyamaなどの歌い手のみなさんは今や若者のアイコンになっています。

話が逸れまくってしまいましたが、そういう彩のあるサビ=hookにつながるように音色が作られて、イントロからアウトロまで一つの「自然な」流れを作るのが典型的なJ-popの印象です。で、現代的な発想ではそこにちょっとした「違和感」を叩き込むことで耳目を集める。それを巧妙に潜ませる音楽と、わかりやすく音を壊すことによって全体を際立たせる音楽に分かれているなあ、というのを常々感じています。

前者は玄人向けというか、聞いている側はそもそもそんな違和感があるとも思っていなくて、でも引き寄せられてる。後者はちょっとエンタメ的というか、わかりやすく前面に出す。演出として割り切るって感触ですかね。説明下手ですみません。決して悪いとかではないです。わかりやすさに惹かれる層は体感かなりいる印象です。その「かなり」にアクセスしたいなら、その人たちが求める音楽を追い求めることになります。剣持刀也とピーナッツくんの関係、楽曲としてのわかりやすさ…そういうものを考えて作っているように感じられてならないのです。

新しいポップソングは常に若者あるいは若い共同体に求められています。これだけ音楽的にも多様化された世界でも、一つのおおきなうねりを生む音楽は常に生活や娯楽の中にあり、そこで「あの曲いいよね」の言葉から人と人をつなぎます。剣持刀也の自宅を模した「疑似空間」に、同接最大12万人が訪れて、ほぼ全員がただ一曲を待っている。そこで流れた曲を拡散したいファンたちがいて,それをこぞってみんな真似してみて…
これをポップソングと言わずしてなんと呼ぶのだろう…なんて面倒くさいことを考えています。

人気コンテンツですので異論反論たくさんあるのは承知の上です。もし関心を少しでもお寄せていただけましたら、ぜひ下もお読みください。

1.キャラソングを目指した 2018

刀ピーの歴史について、という話ではなくてあくまで音楽的な部分について。いやまあ語ったら語ったで私の満足度は高そうですが冗長なので。

最初が確かバーチャルラップバトルからのつながりでクリスマスに音楽のプレゼントをしたところからが始まりだと記憶しています。ちなみに件のフリースタイルっぽい動画はクオリティでいうと剣持刀也のほうが高かったように私には思えました。口喧嘩は剣持刀也つえー、という印象。「にじさんじのお通りだ」で会場を沸かす的な。SAMの「黒船来航」みたいな。

で、肝心の楽曲ですが2018年はキャラソング的な側面が強いように感じるんですが、この時はhookもちょっと技巧的で

Oh, shit いいぞこの調子 クリスマスがキラキラ 決めポーズ
剣持 ピーナッツ マジお友達 
アキ リリ ガッくん押しのけ Party All night
Oh shit マジ夜通し クリスマスを捧げる 決めポーズ 
剣持 ピーナッツ マジお友達 
裸の付き合いは朝飯前

二人の関係性をちゃんと説明しよう、っていう兄ぽこの真面目さが出ているバースのように思えます。

ここで重要なのは「キモさ」です。揶揄とかではなくて。剣持刀也というキャラが一番際立つのは拒絶の際の切れ味だと私は感じていて、上記8小節の中でも「アキ リリ ガッくん押しのけ」「マジ夜通し」「裸の付き合いは朝飯前」などのツッコミ箇所があります。ここでバッサリ切り落とさせることによって配信の鮮度を保つというか、いいところを出させたい、っていうのが伝わってきます。背景を考えると、当時はにじさんじの中でも男性が少なかったようで、女性相手だけだと本領を発揮できなかった剣持刀也の良さを出させたかったのかなって勘ぐってしまいますね。

刀ピー全然足りないじゃん 浮気ばっかしてるんじゃないか? 
アゴと会えないうちに 繋がっていたい心 愛深まっていった
僕の胸を深くえぐった にじさんじが通っていった 
あの痕跡間違いない 剣持くんはロードレーサー

ラップバトルでくらったんでしょう「にじさんじが通っていった」「ロードレーサー」で疾走感を出しつつのアンサー。キャラソング感はやっぱり関係性の説明をしているからかな。しっかりラップなので、剣持もなかなか突っ込めない感が配信からは伝わってきました。

道明寺くんとのラップも 僕の名前スルーすることあっても 
刀ピーふたり深く絆 刻まれているから問題ないね 
あ、でも重いって思われたくないから Skypeの返事すぐしちゃダメ! 
多少の駆け引きあっても結局 クリスマスは一緒だね!

ここ!ピーナッツ君のリリックって絶妙だと思うのが、質感のある単語を選ぶのがすごく上手。ここでは「Skypeの返事」。どの曲でも絶妙にキモいのはこういう聞き手にリアルを感じさせる単語をふとした時に入れてくるんです。体感では後半の盛り上げの直前。ここから最後のバースに入っていく。

あまり人気がないように見えるのはビートがほんとにクリスマスな感じでキラキラしてて、盛り上がりどころに困るからかな?ノれる曲ではなくて、聞く感じにどうしてもなる、のかなあ。決めポーズ、もピーナッツくんの愛らしさを出してはいますがそれが狙っての演出なのかはわかりません。が、二人の「初めての刀ピークリスマスのテーマソング」だと考えればすごくわかりやすい曲になっていると思います。

ちなみにリライト入ってないのはこの曲だけです。

2.シティポップ=流行への志向性 2019


1年経って逆にビートのほうをこだわってきた。2019から2020年くらいはSuchmosなどのシティポップが全盛期でした。確かにそういう曲多かったわ。流行り感もありましたしビートが支えてくれているぶんリリックがシンプル。2018年に比べるとhookの部分が前半中盤後半全て同じなので、口ずさみやすいですね。

I got you! 二人きり今夜 刀ピー 裸の付き合い 
※これ以上はふたりの内緒です
Hold me tight! 差し込んでるmoon light 刀ピー たしかめ合うのさ 
※部屋の灯りを今すぐ消して

hookがすべて同じな分、濃さが際立ちます。「※これ以上はふたりの内緒です」「※部屋の灯りを今すぐ消して」はシティポップが持つオトナの空気を逆手にとってそれをキモさとしました。技ありだけど怖えよ。

上に書いたように全体的に2018とリリック部分は変化していません。聞こえ方が違うのはやっぱりビートの功績だと思います。ただやっぱり質感がすごくて、「肩の力を抜いて」からの「割と肩幅あるね」は最初気付かなくて。確か動画のコメントで指摘されていて、改めて聞いて「うわ…」ってリアルで声出ました。そういう本でも読んでるの?そうでもないとその質感表現説明できないよ?天然で出してるんだとしたら余計やべえよ。

配信上でも2018と比べて剣持刀也のツッコミが多い。これは関係値が一年で深まったこともあるでしょうが、やっぱり楽曲のわかりやすさがツッコミに繋がっているのだと思います。ツッコミが楽しくて、それでいて曲としてもクオリティを上げている。人気が上がるのもわかります。

リリックが昨年と同じような感じ…ではあるんですが、徐々に重みを増していっているんですよね。

いつかふたりで暮らす 賃貸でも探そうかBaby 
寝室はひとつだけ 寝室はひとつだけ

いつか、の部分を膨らませていったのがこの後の2020以降。わざとだとしたら、あの、「地固めがすごい」ってやつですね。あ、リライト1年目の曲です。この曲が一番「消して」が自然ですね。

2年目ということでサプライズ感が出しづらく、次回作としての方向性を示すのに苦心したのだろうと思っています。流行りの感じを出すことでバリエーションを出したかったのかもしれません。
いずれにせよ推測の域を出ないのですが、期待に応えたいというピーナッツくんのいじらしさを感じる一曲でもあります。

3.「ピーナッツくん」の音楽 2020


この2020が一番の転機だったんじゃないか、と思っています。
楽曲としては一番好きかもしれない。
前2作と比べると明らかにビートの音色とリリックの深さが違う。調べてみると(にわかファンで申し訳ありません…)2019-2020はピーナッツくんが音楽活動に力を注いでいた時期でした。

1stAlbum『False Memory Syndorome』通称フォルメモのリリースが2020年6月30日。また動画でもデニムくんやチャンチョで歌ってみたも多数投稿しています。2019年2月24日にはレオタードブタ名義で『粗密』をリリース。『粗密』に入っている曲のレベルを考えれば(『Ctrl, Alt,Del』『ビギナーズエイム』『幸せジャンク生活』など)、2019がいかに刀ピーファン向けに作られていたかがよくわかります。『ODIN』は2020年3月18日ですので、2020に影響が出ていてもむしろ当然といえるかも。

2020のビートは2019に近くシティポップ感があります。bpmは110かな?そこまで早いわけではないんですがなんせリリックの密度が高い。かなり作りこまれていて、キモさもアクセントどころか意味がわからなくなってきています。そこも現在の「ピーナッツくん」らしさが出てきた感がある。

コンビニで買ってったケーキだって 特別な味がするタイミング 
あーんって口開けてるところめがけて ぼくが入っていったらどうする?
ドンキで買ったサラダボールだって デパ地下に負けちゃいないよマジ 
ドレッシングをかける前に 君を見てガブ飲みし出したらどうする?

どうする?じゃねえよ。って剣持刀也の気持ちになって言葉を発してしまう。すごい。ドレッシングがぶ飲みが特に意味わかんない。毎回聞きながら「ハァ?」って気持ちに毎回なってます。それがすごい。

全体的にリリックの密度も完成度がすごく高いです。「12時前 待ち合わせの密会」からスタートしてて、12月をフラッシュバック的に想起させるところからスタートするあたりからもう。2019までのコラボ相手リリックのサンプリングっぽいところも意味的なブリッジを狙っているように感じます。フロウも素晴らしい。節の切り方も遊んできていて、こういうところに経験の差が出てて感動します。

君とボクのガラスのハート 合体 / 
(yeah)ガッくんとハピトリ 刀かざに / 
ほんまのくずや いっぱいあるやん

君とボクが身分を超えて 合体/
 (yeah)刀ピー シンクロニシティ  100% / 行きます銭湯 / 
コピーはできない入るサウナ 滴るsweat / ソウルメイト

曲の前半と後半でフロウを少し変えてきてて、予測しにくい(飽きにくい)ように作ってある。しかもここから高速ラップに入ってって、とどめが

ぼくらはまるで紳士とペット ジョコビッチ ナダル戦うフルセット
街中彩ってるジングルベルよりも 刀ピー ふたりでシングルベット

ライム、フロウ申し分なし。意味だけが最悪という奇跡の組み合わせです。
昨年の「寝室はひとつだけ」から一気にシングルベッド行き。「紳士とペット」「フルセット」「ジングルベル」「シングルベッド」質感を伴ったライムは完璧。ガッチガチやないか。いやガッチガチという言葉もダメかもしれない。固いライムでこんなに具体的な意味を作れるのは天才でしかない。才能の使いどころを完全に間違えている。

通常の楽曲では入れられない?ようなVtuberとしての「ピーナッツくんらしさ」と、音楽的に成熟してきたラッパーとしての「ピーナッツくん」が奇跡の形で共存している1曲です。

ただ、技術や音楽性が伸長した分、それがキャッチーさの欠如として表れてしまった曲だと思います。「大衆に受け入れられる」という一点は薄かったかもしれない。それを乗り越えていったのが2021です。

4.「ポップ」を掴んだ 2021

「キモい」を重視してきた今までと決定的に違うのが、「中毒性のあるhook」を徹底している点です。特に今までと違うのがビート。アッパー気味のビートに歌唱性の高い歌を載せてきた。ごく個人的な感想なんですが、ちょっとTohjiっぽいというか、そういうグルーヴ感の強さを持ち込んでみた感じがすごいしてます。Tohjiよく聞いてる、って動画でも度々言ってますので、十分ありうる線だなあって。思い込みかもしれません。
タオルを回しやすい音楽。それが人気が出た大きな理由の一つなんじゃないかな。

音楽的な側面でいうとこの年は2nd Album『Tele倶楽部』のリリース年です。2021年6月20日。様々なVsingerを迎えてのアルバムで、ピーナッツくんの音楽幅の広さを感じます。もしかしたら、広げられたのかも。

従来のリリックにあったキモい部分はなくなったわけではなくて、表現を婉曲的に、ポップめに仕上げることで逆にアクセントになった感がすごくしています。とくにhookの

X-mas 刀ピー Midnight 俺ら独走

は、動画コメントの中に「X must be midnight」と解釈できる、とありこれは個人的見解では完全に正しいと思っています。X (エックス)と発音する理由と「刀ピー」がここにある理由が完全にかみ合うからです。スタートの時点で配置してみての偶然の産物か、意図的に生み出したものかはわかりませんが、最終的には故意で構成しているはずです。

ちなみに「もう一泊」の合計回数が「20泊21日」になる件については正直わかりません。あの豆ならやりかねないな、とは思います。ただ小節の関係上「もう一泊」の回数は4の倍数になるので、4×5=20にはなりやすいよなって。断言するには根拠が弱いなと感じています。

ライミングはさらに洗練されて、遊ぶ余裕も感じられます。特に

いつの間にか 年越す / その前にちょっと待った 部屋に入るときはちゃんとノックして たまには俺のことおんぶして / いいね? 君がロフマオとかまけて 

の下りはさらっと技術を感じます。「年越す その前にちょっと待った」は入り方もリズムを調整して、キーを少し下げているんですよね。そのまましばらく歌って「やっぱ刀ピーよ」からキーを上げて「もしくはピー刀よ yeah」からhookに入る。

「ノックして」と「おんぶして」は安易なライミングですが、あれは撒き餌みたいなもので「わかりやすい」。だから刀也くんも突っ込みやすい。ポップソングには「話題に上りやすい」というのは重要な要素で、ここも狙って作ってるよなあ、って感じています。

あ、あともし本当にそうならガチの天才だなっていう解釈が一つあって、

認めざるを得ない 早く訴えてほしい 
法廷で会いましょう そして示談で片付けましょう

民事裁判には「一事不再理」という原則がありまして、過去に一度会った係争についてそれが決着しているのであれば民事ではもう争えないんですね。つまり示談を受け入れてしまえば、もう拒絶する手段がないんです。そこにさらっと刀也くんに誘導しようとしている。動画コメントの指摘で気付きましたがまずコメントがマジですごすぎる。いや、さすがにそんなことは。
でも、そうだとしたら上記のバースが全部説明できてしまう。怖い。

歌詞を分析してみると上記のような不穏なメッセージが結構あって(実は書くのを自重した部分もかなりあります)、「振り返ってもらえなくて病んでいく」という設定は2022へと引き継がれていきます。
この空気感をどうするかなあ、というのは兄ぽこの頭の中にあったんじゃないか、と私は考えています。

仄暗い闇を抱えつつも、全体としてポップで浸透しやすい。なにより「もう一泊 もう一泊」は誰でも歌えるし、「一泊」という言葉だけでインパクトがある。ピーナッツ君がポップソングのコツをつかんだ感がすごいです。

5.歴史を作った曲 2022「overdose」


もう散々分析が素晴らしい方々により発表されているので、歌詞考察や楽曲考察に関することを今更してもなあ、という思いが多少あって。でも語りたいのは、「いや、絶対に狙ってたでしょ」と思える点についてです。

まず、この曲について考え始めたのはおそらく9月から10月にかけてと推測できます。なぜならピーナッツくんは2022年6月1日に3rd Album『Walk through the stars』を発表。行きつく暇もなく5周年ワンマンツアー『Walk through the stars』東京公演を7月4日、大阪公演を7月11日、ヴァーチャルライブを8月28日に実施しています。みなさんの感想のどれを見てもマジで神公演だったのが伝わります。何度でも言うけどいくら出してもいいから円盤化してくれ。頼むから。

更にいうと2022のぽんぽこ24は5月7日から8日にかけて実施されており、準備に1か月程度かかったはず。(記憶違いだったらあれなので生放送漁りました。合っててよかった)しかも5月21日はピーナッツくんはHIPHOPの祭典『POP YOURS』に出演しています(入場曲の『ROOMRUNNER!』の入りが最高なのでみんな見てくれ)。ついでにいうとぽんぽこのPCがぶっ壊れたのが2月3月だったはず。2023年前半期は動画に力を入れていた期間でもあるので、いくらバイタリティお化けでもこの前半期から刀ピー製作をじっくりは無理だと思います。
あと兄ぽこの勝手なイメージだけど曲自体はさくっと作りそう。2021も1時間くらいって言ってたし。エンタメに関してはマジで天才なんよ兄ぽこ。

根拠の2つ目は、2022の流行を引っ張ってる、という根拠について。
2022は2つのoverdoseがあったんですよ。1つめが大人気になった1月21日Steamでの配信のアドベンチャーゲーム『NEEDY GIRL OVERDOSE』。2つめは9月7日に彗星のごとく現れたアーティスト「なとり」の『Overdose』。NEEDY GIRL OVERDOSEは多くの配信者がプレイしていて、瞬く間に人気になりました。Overdoseは若者ならみんな知ってるレベルでの人気曲です。

流行りに大変敏感な彼がこれを意識してないなんてありえない。そして、2021の項目でも言いましたが、「病んでいる豆(ピーナッツくん)と気にも留めない顎(剣持刀也)」の構造と完全に一致するところからガッツリ作りこんできたと想像できます。

Overdose 君とふたり やるせない日々解像度の悪い夢を見たい
Overdose 君とふたり 甘いハッタリ Don’t stop it music,darling

なとり『Overdose』

解像度の悪い夢、はMVとのシンクロニシティを感じますよね(笑)ダンスミュージックである点は、そもそも昨今はダンスミュージックは流行りやすいという側面がありますので、流行らせたければダンスミュージックがテッパン、ということなのでしょう。
NEEDY GIRL OVERDOSEはそもそも女性配信者を破綻させないように人気配信者にするゲームです。不安定で大変で、ほっとけない子を支える。プレイやーは内心苛つく部分がありながらも彼女の成功を喜ぶ。おそらく刀ピークリスマスを視聴している層には、豆のキャラクター像とかなり一致する部分を感じるのではと思われます。

ビートはかなり気を遣ったと思いますが、ラテンを感じるギターを主軸にしながらその音色と親和性の高いバタフライ=死の象徴を感じさせるリリックやダンスを取り入れることにより、overdose感を洒脱感に変換することに成功しました。hookの際のステップも軽やかで、「Would you like…」の手の振りもひらひら感を出していてかなり細かく作りこんでいます。

一番びっくりしたのはhookです。まず「刀ピーoverdose」でタイトル回収するんですが、その直後に「just popping all night long」。ここでライミングとしてはガチッとかみ合うんですが、最初からここが歌える人は少ない。
ここで一回違和感を叩き込む。で、そこから「うじゅらかうじゅらかうじゅらか…」と子供でも歌えるようなフレーズで最後「びーまいおうん!」でキメるんですよ。

やべえ。ガチで天才だこの人。って心底思いました。

何度も聞いているうちにjust popping all night longも歌えるようになってリズム感を大切にした歌唱もできるようになる。「みんなが楽しめる楽曲」ってやつをエンタメの中で実現する。

君の熱い眼差し まるでコックカワサキ(星のカービィ)
荒らす君の縄張り(スプラトゥーン3)
高木さんのからかい(からかい上手の高木さん)

ピーナッツくんを知らない人でもエンタメが好きなら引っかかる要素もたくさん入れてあります。でも、やっぱりhookの「大衆に向けたさりげない工夫」の部分が実際はバズに一番効いていると思います。「ちょっと練習すれば真似できる」というのを感じさせる。バズの教科書みたい。

ライミングもガチガチです。

切り裂いて君のその「ブレイド」「無礼講ダ」ンスする僕の「頸動」脈 血がぶわって噴き出してみる「天井」yeah 「一緒」に死んでくれますかbaby

ただケツで踏むんじゃなくて頭韻も入れて、なおかつ剣持刀也のアイコンである剣(ブレイド)も忘れない。年に一度の「無礼講」だといいつつも許されない、というお互いの関係性への深い理解。噴き出した血と天井でリスナーにスプラッターホラーを意識させてのoverdoseの成れの果て感。

2022年12月時点での「ピーナッツくん」が提供できる最高のポップソングを準備した、と考えていいんじゃないでしょうか。個人的には「刀ピークリスマス2022」配信内のMOROHAの感じも大好きでした。「友よ!」的な。「もう家族やん。」も大好き。

最後に 「期待に応える」ということ


2022までの刀ピークリスマスを振り返ってみましたが、聞きながら収束していった考え方が、Vtuberとしての「ピーナッツくん」の在り方でした。

大人気Vtuber事務所「にじさんじ」の看板の一つとなった「剣持刀也」のところに12月のクリスマス時期に毎年殴りこんでいく「ピーナッツくん」が、手土産としてもっていくテーマソング楽曲。

世間の盛り上がりからその立ち位置を飛び越える感じも出てきましたが、ピーナッツくんは必ず拘ってくると私は思います。すべての曲に共通しているのは「期待に応えたい」「みんなにいいって言ってもらいたい」って思いが伝わる点で、これはVtuberとしてのピーナッツ君の姿勢と一致します。爪痕を残そうとして失敗するケースも多々あるんですが、叩かれ役でいいから配信を盛り上げたい、面白くしたいという姿勢は結構みんなに伝わっている気がします。推しに絡んだから嫌いになった、って人はいそう。。。

それに、刀ピークリスマス自体が年を経るごとにだんだんと友達同士の会話の中に視聴者が入っていっている感覚になってきてて。Twitterのスペースみたいな感じ。剣持刀也が少なからず刀ピークリスマスの時間を楽しんでいるのが伝わります。知る限り楽曲に関してはリリックとMVの画質以外ほぼまったくと言っていいほど否定的な言及がない。クリエイターとしての兄ぽこに関しては尊敬しているんじゃないかな、、、ぽんぽこ含めVtuberとしての姿勢には感じ入るものが多そう。
あとMOROHAネタにすぐ反応するあたり音楽好きって感じがしていいですね。FIRSTTAKEとか見てるとそうでもないのかもしれないですけど、意外とMOROHA知らない人いるイメージ。

逆にピーナッツくんは毎年プレッシャーがでかくなっているのは間違いない。「期待に応える」ってのはそんな楽なものじゃない。ポップソングを作ったからといっていつもバズるのか、毎年更新するのか、って話になったらそんなわけないじゃないですか。まず時流に乗っているっていうのも大きいと思いますし、私を含めた大衆は「終わったコンテンツ」として認識して捨てるスピードも速い。どこかでは必ず起こる。

でも、5年もやってきた。そして必ず壁を越えてきた。これからもそうなんじゃないか、って思わせてくれる何かがピーナッツくんにはあります。未来の保証なんかない、いつ終わってもおかしくない、だから今を駆け抜けるんだって。ぽこピーからは常にそれを感じます。PCがぶっ壊れてデータが飛んでも、それ以上を作り出してきた。

不安定上等、見とけよ!って姿勢は個人勢ながらVtuber内の大コンテンツを次々作り出すぽこピーの基本姿勢だった、ということに思い至った時点で、刀ピークリスマスのこれからにも期待していい、ってことに自分自身安堵しました。なんだ、いつものぽこピーか。なら大丈夫だ、って。

あとはVtuber特有だと思うんですが、ファンの存在は大きいですよね。冒頭のマリン船長の楽曲はもう特級の愛の結晶みたいなもので、支えるファンの存在が再生数と認知数を加速させていく。刀ピーoverdoseのバズも、ファンが率先して踊ってくれたことがキーだったと記憶しています。これは従来の消費型のポップ音楽とは違う点です。12万人が同接で視聴して、そのあと加速的に再生数が増えていく、というのは現代的な現象だなあと感じます。

冷静に考えたら箱でもなくて2人でしゃべってるだけなのに12万人はえぐいな。2023は下手に数字で騒ぎたくないんですが、参考数字として、にじさんじ甲子園の予選が21万人から25万人、にじさんじ歌謡祭が24万人だそうです。今年はどれくらい集まるんだろう。お祭り感ありますよね。楽しみ。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?