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藍の生葉染 絹を澄んだ色に染めるコツ

 タデアイの生葉で、澄んだ色かつ色落ちしにくく染めるコツ、のご案内です。でもこの方法は、タデアイの葉をたくさん使うという点で原料調達のハードルが高くなります。技術的には全く難しくありませんので、「今年は藍をたくさん植えた」という方にはぜひ取り組んでいただきたい染色作業です。
 今回は、絹を生葉染する場合についてのコツをご案内いたします。


生葉染の色が濁る理由

 よく見かける生葉染の生地の色のほとんどが、濁っています。水色の上からくすんだ茶色のベールを余分に被ったような色になっています。タデアイの生葉染って、本当は澄んだ夏の空の色に染まるのに。

 最も意識していただきたいのは、葉に含まれているインジカン量が多いほど、良い色に仕上がるということ。花が咲いた後の葉にはインジカンが少量しか含まれず、生葉染には適しません。いい色に染めるなら、花が咲く前の元気な株の状態の時を選んでください。6月下旬から7月いっぱいのタデアイのコンディションは、生葉染に最高ではないかと思います。

 それから、絹を生葉染して濁る大きな理由は、染液が濁っていること。絹の繊維の主成分であるタンパク質は「色」を吸着しやすい性質を持っているので、染色の際の染液は可能な限り不純物を投入しないことが理想的です。
 書籍やオンラインで紹介されているほとんどの生葉染の手順に、私が絶対しないことが含まれています。これをすると染液に不純物が大量に混ざります。ですが、生葉染の手順としてほとんど常識と思われているであろう作業です。

 私が絶対しない作業とは、タデアイの葉をミキサーにかけること。
 葉をミキサーにかけてサラシなどで漉した搾り汁を染液に使う方法は、生葉染に取り組んだことのあるほとんどの方が行っていると思います。葉に含まれているインジカンを最大限に生かすための工夫とされている方法ですが、それをすると染液の中に必要のない植物由来の繊維や葉緑素などの不純物も沢山混じってしまいます。その結果、色を吸着しやすい絹の繊維にインジカン以外の不純物も付着して、濁りの元になってしまいます。

 葉に含まれている貴重なインジカンを、最大限に活かしたいという気持ちはとてもよく分かります。よく分かりますが、せっかくタデアイの命をいただいて染めるなら、やはり澄んだ空色に仕上げていただきたいというのが私の思い。この記事では、ミキサーを使わずに染め上げていただく手順についてご案内したいと思います。

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