見出し画像

生薬としてのタデアイの葉

 染料として知られている藍ですが、中国では生薬としてよく知られているようです。タデアイの葉は、生薬としては藍葉(ランヨウ)と呼ばれています。
 今回は、タデアイの生薬としての側面にスポットを当ててご案内したいと思います。


1、フグの毒をも解毒した藍葉(ランヨウ)

 明治時代、藍の染料「すくも」を作り、自分で販売していたある藍師の話です。
 長州の顧客にすくもを納品した帰り道、フグ料理を振る舞う料亭に立ち寄り、懐に入れておいた小さな木綿の袋を差し出して、立派なフグ料理のフルコースを堪能するのがこの藍師の長い旅路のご褒美だったのだそうです。
 木綿の小袋に入っていたのは金貨でも銀貨でもなく、タデアイの葉を自然乾燥させたもの。万が一、この料亭でフグ毒に当たった人が出た時、このタデアイの乾燥葉を煎じたものを飲ませると命を取り留めることができたのだとか。そのため、この料亭では貴重な薬としてお金と同じくらいの価値で必要とされたものだったのです。


2、タデアイとはこんな植物です

画像1

 タデアイの概要について触れてみようと思います。
 上の画像のタデアイの葉は私たちの畑で採取したもので、品種はピンクの花が咲く千本(せんぼん)です。

 生命力が旺盛で、水が大好きです。初夏に苗を畑に定植しますが、梅雨に入った途端に成長スピードがグンと増します。
 梅雨が過ぎるとすぐに葉の収穫シーズンがやってきます。真夏の暑い季節が、葉の収穫シーズンです。早朝、藍の葉がシャキッと元気な間に刈り取り作業を進め、日が高くなり気温も上がって藍の葉が萎れ気味になる前に引き上げます。

 蓼食う虫も好き好き、という諺の通り、虫害はとても限られた種類の虫によってもたらされます。ヨトウムシはその代表格で、日中に土の中に隠れていて夜になるとタデアイの茎を傷つけてその芯に入り込み、瞬く間に栄養を吸って株ごと倒してしまうので、注意が必要です。

 葉にポリフェノールを多く含むため、生の葉をちぎって口に含むととても苦いのが特徴です。
 葉の色は生の状態では生き生きとした緑色ですが、自然乾燥させると葉に含まれるインジカンがインディゴに変化し藍色に発色するため、乾燥葉は茶色くならず、タイトル画像のような濃い青緑色に変化します。


ここから先は

1,929字

¥ 100

よろしければ、サポートをお願いいたします。いただいたサポートは藍農園維持と良質な藍顔料精製作業に活用させていただきます。