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藍染めに殺菌効果はあるの?

1、藍染めに殺菌効果があるとしたら…

 
 藍染めについて紹介されている文章に触れると、「藍染めの生地には殺菌効果がある」と記されているのを目にすることがあります。藍染めに携わるようになるまではほとんど疑問に思うこともなく「それは機能的だなぁ」という程度にしかとらえていませんでした。

 実際に藍染めに携わるようになって、その説に疑問を抱くようになりました。藍染めを行う甕は発酵していて、発酵に必要な菌が元気に活動しているはずなのです…殺菌効果があったら、彼らが元気に暮らすことが不可能になるのではないかな…

 ということで、様々な条件で藍染めをした生地を準備して、徳島大学の抗菌を専門とする高麗先生(現在は退官されています)にお力添えいただき、実際に検証してみたのです(2006年頃と記憶しています)。その結果…


2、藍染め生地に殺菌効果はありません

 やはり、藍染め生地に殺菌効果は認められませんでした。
 ところが、ある条件で染めた藍染め生地で「抗菌効果」には一定の効果ありという数値を確認できました。
 殺菌効果とは字のごとく「菌を殺す」効果を持ち、抗菌効果とは「菌を殺すことは無いが、増殖させない」という働きかけを指します。

 実際に、殺菌(繊維業界では制菌と言います)効果のある生地で作られたTシャツがあったとします。これを着用して農作業をし汗をいっぱいかいた場合、汗に含まれる「汗臭さ」の原因となる雑菌を即座に殺して臭いの発生を防ぐため、汗の臭いを気にすることなく過ごす事が可能です。
 これが抗菌効果だった場合は菌を殺さないのですから、作業当日の汗臭さは免れることができません。ですが、その後は菌が増えないので数日後は臭くない、という穏やかな効果を実感できます。

 あれ、でも、抗菌効果でも甕にあったら困るよね…と考えていたのですが、この抗菌効果の根拠となる成分が油に溶け出す油溶性の性質を持っており、水には溶けださないことも分かりました。
 つまり、油を使わない藍染めの甕の中ではこの成分が溶け出すことが無く、発酵に必要な菌に作用しないというメカニズム。なんとよくできている事でしょう…!!


3、4000年前のミイラも藍染めの抗菌効果に守られた


 実際に資料を紐解くと、4000年前のエジプトのミイラを巻いている包帯に藍染めが施されていることが報告されており、現在世界に現存する最古の藍染め生地という事になっています。
 包帯の素材はヘンプ(麻)。麻そのものにも抗菌・制菌効果があることが報告されておりますが、その上に藍染めを施せば、その働きかけがさらに補強されていた可能性が高いです。
 その証拠に、「遺体を直接くるんでいる包帯」という特殊な使われ方をしているにもかかわらず、4000年もの長い間朽ち果てずにその形をとどめているのですから…。昔の人は様々な素材や技術を試しながら、確かな効果を実感できるものを確実に選んで、適材適所で使いこなしていたのですね。

 現代ならベッドのシーツや水回りに設置するタオルなど、衛生的に保ちたい場所で藍染めを効果的に取り入れると気持ちよく過ごせるのではないかなと考えています。

よろしければ、サポートをお願いいたします。いただいたサポートは藍農園維持と良質な藍顔料精製作業に活用させていただきます。