月のパッケージに込めたもの
決め手に欠け続けた新パッケージ案
新しく生まれ変わった「藍染め石けん」に、どんな晴れ着を着せたら良いのだろう。今回のデザインは案の立ち上げから印刷用データの入稿まで全て私一人の作業となりました。
責任重大だなぁ…。
半分途方に暮れながら、さまざまなオーガニックコスメの実物を眺めにショッピングモールのナチュラルコスメフロアを徘徊したり、パッケージの実例図案をひたすら眺めたりしながら考えました。
藍色で…葉っぱのモチーフを入れるか…それとも文字のみを配置してスッキリとまとめるか…
もしかしたら、いろんな事情で二度と作ることの叶わない石鹸になる可能性のあったアイテムです。
それが、さまざまな人のご厚意やお力添えでもう一度デビューできるところまでたどり着けた。
小さな営みでも、しっかりと役割を全うして行けるアイテムに育てていきたい。
いつでも、必要とされる人の側に寄り添うことのできるアイテムとしてお届けしていきたい。
それをどう表現したらいいのだろう。。。
ふとしたご縁が運んできたヒント
そんな最中に、とあるご縁で古い神社にお参りに行くことがありました。
伊勢神宮の天照大神が元々鎮座されていた場所として残る籠神社(このじんじゃ)です。
京都の日本海側にあり、有名な天橋立の神話の元となった神社ですから、ご存知の方も多いと思います。
訪れた日が偶然新月の日と重なり、「むすひ詣り」という特別なお詣りの日である事を知りました。新月と満月の日のお詣りをこのように呼んでいるようです。
少し話が変わりますが、月は農業と深い関係があります。
日本の旧暦は月齢によって周期が定められていました。
それは、農耕民族にとって重要な「種蒔き」「定植」「剪定」「収穫」「様々な加工」など、多くの作業を効率的に進めるために月齢に従ってスケジュールを決めていたからです。
実は日本だけでなく、南米などでも農作業を中心とした作業予定を組み上げる根拠として月齢が重要視されていたことが分かっています。
それらの古くから伝わる知恵は、今でももちろん有効です。
例えば…害虫駆除をするなら、満月の前日に。なぜなら、害虫は満月の夜に卵を産みつけるから。膨大な卵を生みつけられる前に駆除作業をしておけば、少ない回数で害虫対策を終えることができます。
農業とそんな繋がりのある月の特別な日のご縁を頂いたのだから、日を改めて満月の日にもご挨拶に伺おう。素敵なご縁への御礼のお酒を持参して。
土から始まる藍の仕事を、これからも大切にして行きますとお伝えしよう。
そう決心し、日を改めて満月の日に再び参拝しました。
そして、新月・満月の両日にのみ授与されるお守りを手にして、少し満たされた気持ちになりながら考えました。
そうだ、今回再デビューする藍染め石けんは2種類だ…
「グランブルー」と「紙ふぶき」って「新月」と「満月」に似ているような気がしないでもないよね…何か考えられないかな。
これが、新パッケージ案誕生のきっかけとなりました。
藍染め石けんが辿った満ち欠けを受け止めて
思えば藍染め石けんは、再デビューに至るまで様々な出来事を乗り越えてきたアイテムでした。
ビジネスプラン大会で全国優勝したり、全国区のテレビ番組に紹介されて脚光を浴びたこともあれば、風評被害を受けたり、製造所そのものが廃業となったり…そう考えれば、この石けんの歩んできた道自体が満ちたり欠けたりしている月の営みにとてもよく似ている。
季節やお肌のコンディションに合わせてお選びいただけるように、「しっとり」の「紙ふぶき」と「さっぱり」の「グランブルー」の2種類あることは、お客様の毎日に寄り添い続けるアイテムである事につながる。
それは、いつも空から照らしていてくれる月の存在とも重なる。
月のモチーフをパッケージ案に落とし込んでみよう。
そう決めてから印刷用データの入稿までとても速かったと思います。
個人的な感想ですが、特に「グランブルー」の新月仕様のパッケージは、その当時の私の心象風景がそのまま反映されたようなデザインとなりました。
これまでがそうであったように、これからも満ち欠けを繰り返しながら歩んでいくことになるのでしょう。そういうことも受け止めて、望んでくださる方の元へ少しずつお届けして行こう…そんな気持ちでデザインを仕上げ、晴れ着を着せるような気持ちで一つ一つ包んでいます。
再デビューまで2年近くの時間がかかりましたが、辛抱強くお力添え下さったNPO法人明日に架ける橋のスタッフのみなさんや、藍色工房時代からのお客様のおかげで、ここまでたどり着くことができています。
本当にありがとうございます。
装いも新たに再デビューを果たしました藍染め石けんシリーズを、どうぞこれからもよろしくお願いいたします。
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