見出し画像

ほろにがBirthday

誕生日はスペシャル 周囲の人々の誕生日は喜ばしくお祝いしたくなる
じぶんの日はいつもと変わらない 今日まで続いた生と先の日々への感謝
辛辣な言葉 植物のギフト 麦酒片手に濡れた夜
麗しい記憶とは程遠く 緑は戸外に幾らも生えているが
間近で育てることにより己を見よという 不変のメッセージだらう
大人になろうとしていた頃 友が焼いてくれた大きな円形のクッキー
暖色の灯りと和やかな夕餉 心のうちが満たされたこと
便りや包み 声を聞かせてくれる人びと
家族からの言葉はないが うんでくれた感謝を伝えて

ラオスで迎えた誕生日は休日で ゆったりするうち日が暮れた
友が焼いてくれた美味しいおやつを頬張り 遥か彼方の男を思う
お寺へマッケーンの儀式にゆき 祈りとともに手首に紐を巻いて貰って
特別なことはなくとも満ちる しかし二度目の誕生日は平穏には過ぎなかった

ラオスの人々にとって 誕生日はみずからパーティーを開き
親しい人たちと心愉しく過ごす日 離れた場所にある学校の先生から
事前に学習発表会への参加依頼を受けて 特段の用もないので
就業後にバスに乗った 着いてみれば久方ぶりの先生方の表情が晴れない

どうしたのかと思ったら 当日の朝に私が誕生日を迎えたことを知ったよう
約束はないのか ここにいて大丈夫なのかとしきりに問う
本数の少ないバスは去ったばかり ここへ来ることを断るべきだったのだ
しかし今日のため準備を重ねた生徒さんはと思うも 大切な日に何故
よその仕事場に顔を出すのだと言いたげ 毎日が誕生日のよういきる自分に
周囲の戸惑いは謎でしかないが 彼らの消えない疑問もあらわ
居たたまれなさに小さくなりながら 教室へ向かった
生徒たちの目は輝き 懸命に日本語を操り出す発表に
来てよかったと心動かされた 励む姿はよい波動を発する

終わってからも まだ気にする教師に家まで送ってもらいながら
促されるまま シーフード・バーベキューの店に寄ることになって
庭先で ベトナム産の小さな巻貝の身をせっせと取り出す姿は日常的光景
青黒い蟹や烏賊がひしめく保冷庫に 海への憧憬も詰まっているよう
愉し気に焼き作業に没頭する大勢の人々の 明るく開放的な雰囲気
とつとつと話し出した彼女の話を面白く聞き 勧められるままに食べた

それからひと月程お腹を下していたのは さして深い仲でもなく
名前すら知らない仕事関係者の 数えきれぬ憐れみの視線を受けたことか
ジュッと焼かれていった 輸入エビの吐息か
不調が続き 知人に下しが止まらないわと口にすると
あるあるここの海鮮かもねと カラリと一蹴された直後に止まった
心のありようは ダイレクトに身体に現れる

つづく呼吸が喜ばしい わたしがわたしを生きているだけで
世界はこんなにもうつくしいのだから どう生きるひともすでにYou are Loved

   “人生でいちばん大切な日は、自分が生まれた日と、
    生まれた理由を見つけた日だ” ―――マーク・トウェイン

Erat, est, fuit あった、ある、あるであろう....🌛