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藍染ってナニ?歴史や技法を紹介

このまえ僕のInstagram(https://www.instagram.com/takuindigo/)に海外の方から「日本の藍染めについて知りたい」と連絡が来ました。

そこでnoteの海外版?とか言われている”medium”というサービスに登録して、英語で日本の藍について記事を書きました。

英語の記事を作ってから思ったのが「藍染って日本の人もあんまり知らなくない?」ってこと。

少なくとも僕は大学生のとき(8年前くらい)に初めて知りました。

なので、このnoteに日本語でも日本の藍について残しておこうと思います。
”広く浅く”の情報ですけど、ご興味のある方は読んでみてください。

(※海外の方に向けて書いた内容なので、ちょっと言い回しが変だったりします)

1. はじめに

日本の伝統的な染色技法「藍染」は、その美しい色で世界中に広く知られています。

何世代にもわたり受け継がれ、その技術と美しさは今もなお進化を続けています。

しかし藍染は単なる染色技法にとどまらず、古代から現代に至るまで日本文化の重要な一部を形成してきました。

本記事を通じて、藍染の魅力とその奥深さを再発見していただければ幸いです。

2. 歴史的背景

藍染の起源は非常に古く、その歴史は古代まで遡ります。現在確認されている世界最古の藍染は、エジプトの古墳から出土したミイラが身に着けていた麻布で、紀元前2000年のものとされています。

日本においての藍染技術は、中国から朝鮮半島を経由して日本に伝わったと考えられており、諸説あるので正確な時期は不明ですが、古墳時代(3世紀から7世紀)には既に藍染が行われていたという記録があります。

平安時代(794年~1185年)

平安時代には、貴族や皇族が着る衣服に藍染が使用されていたことが文献に記されています。この時代、藍染は高貴な色とされ、特に高位の者たちの間で愛用されました。貴族たちは、日常の衣服や儀式用の装束に藍染の布を用い、その美しさを楽しんでいました。

鎌倉時代(1185年~1333年)から室町時代(1336年~1573年)

鎌倉時代から室町時代にかけて、藍染の技術はさらに発展しました。武士階級が台頭する中で、実用的でありながら美しい藍染の衣服が広く受け入れられるようになりました。特に、武士の鎧下(よろいした)や日常の衣服として使用されるなど、機能性も評価されました。

江戸時代(1603年~1868年)

藍染の黄金期ともいえるのが江戸時代です。この時代、藍染は庶民の間にも広まり、日常の衣服から工芸品に至るまで幅広く利用されるようになりました。「藍は七度洗えば七度色を増す」と言われるほど、耐久性と色の美しさが高く評価されました。技法も多様化し、絞り染め(しぼり)、型染め(かたぞめ)、筒描き(つつがき)などが発展しました。また、「青は藍より出でて藍より青し」ということわざに象徴されるように、弟子が師を超えることを意味する言葉としても使われるようになりました。

明治時代(1868年~1912年)以降

明治時代に入ると、西洋の化学染料の導入により、藍染の需要は一時的に減少しました。しかし、藍染はその独特の色合いや自然素材の魅力から再び注目を集めるようになり、伝統工芸としての価値が見直されました。現在では、日本の伝統文化として、国内外で高く評価されています。

3. 藍の植物と染色過程

藍染めは世界中で行われており、それぞれの地域で独自の技術や植物が使われています。

例えば、インドではマメ科のインディゴフェラ・ティンクトリア(Indigofera tinctoria)、ヨーロッパではアブラナ科のウォード(Isatis tinctoria)といった植物が用いられます。それに対して、日本ではタデ科の蓼藍(Polygonum tinctorium、以降 タデ藍)が主に使用され、その独自の方法と色合いで知られています。

藍の植物:タデ藍

日本で藍染めに使用されるタデ藍は、特にその葉に含まれるインディカンという成分が藍色の元となります。タデ藍は、日本の気候と土壌に適しており、高品質な藍染めの染料を生み出すために栽培されています。

タデ藍

伝統的な栽培と収穫

タデアイの栽培は春に種を蒔くことから始まります。発芽した苗は畑に移され、夏にかけて成長します。成長した葉は7月から9月にかけて収穫されます。収穫された藍は葉と茎に分別し、葉っぱの部分のみ乾燥させます。

藍畑
藍の葉(乾燥前)
藍の葉(乾燥後)

染料の抽出と発酵

乾燥させた葉に水をかけることで発酵を促します。約100日間かけて発酵させた藍の葉は「すくも」と呼ばれます。このすくもを木灰からとった灰汁や貝灰(石灰)などと共に大きな甕に入れ、数週間かけて発酵させます。この過程は「藍建て」と呼ばれ、これによって深い藍色が生み出されます。

藍の染め液

4. 技術と模様

藍染めには様々な技法が存在します。時代とともに発展し、美しい模様が生み出されています。

絞り染め(しぼり)

絞り染めは、布を糸で締め付けて染料が染み込まない部分を作る技法です。この方法で作られた布は、独特のぼやけ具合を持ち、様々なデザインやグラデーションが表現されます。

絞り染

板締め(いたじめ)

板締めは、たたんだ布を2枚の板で締め付けることで染料が染み込まない部分を作る技法です。幾何学模様などが表現されます。

型染め(かたぞめ)

型染めは、紙や型を使って模様を染める技法です。細かいデザインや複雑な図案を染めることができ、繊細な模様が生み出されます。

型染め

筒描き(つつがき)

筒描きは、筒に入れた糊を使って自由に模様を描き、その部分を防染する技法です。職人の技術によって、繊細な線や美しい曲線が表現され、独特の模様が生み出されます。

ろうけつ染め

ろうけつ染め(バティック)は、布に溶かしたロウで模様を描き、その部分を防染する技法です。染色後にロウを落とすことで、美しい模様が浮かび上がります。この技法は、日本のみならず世界各地で行われ、独特の美しさを持っています。

ロウケツ染め

伝統と革新

日本の藍染め技術は、古くからの伝統を守りながらも、新しい技術やアイデアを取り入れています。職人たちは継承された技術を大切にしながらも、時代のニーズや流行に合わせて染色技術を発展させています。その結果、伝統的な染色技法とモダンなデザインが融合し、新たな魅力的な作品が生み出されています。

5. 応用と現代の藍染

藍染めの伝統的な技術は、現代でもその美しさと耐久性から広く愛されています。さらに、新しい応用技術やデザインのアプローチによって、藍染めの可能性は広がり続けています。

ファッション

藍染めは、日本の伝統的な着物や浴衣だけでなく、現代のファッションアイテムにも広く取り入れられています。ジーンズやTシャツなどのカジュアルウェアから、ドレスやスーツなどのフォーマルウェアまで、幅広いアイテムで藍染めの魅力が活かされています。

インテリア

藍染めの染色技術は、インテリアデザインにも応用されています。カーテンやクッションカバー、テーブルクロスなどの布製品に藍染めの素材が使われ、洗練された雰囲気や和の趣を演出し、空間に深みとアクセントを与えています。

アートとクラフト

藍染めは、アート作品やクラフト作品の素材としても活用されています。アート作品に藍染めの布が使われることで、独特の質感や色彩が表現されます。また、手作りのバッグや小物、アクセサリーなどのクラフト作品にも藍染めの布や糸が使われ、個性的なアイテムが生み出されています。

サステナビリティ

近年、環境への配慮やサステナビリティへの関心が高まっており、藍染めもその例外ではありません。伝統的な染色技術や自然素材の利用によって、環境負荷を低減し、持続可能な製品の開発が進められています。また、地域コミュニティとの連携や伝統工芸の継承によって、地域経済の活性化や文化の保護にも貢献しています。

6. さいごに

藍染めは、日本の豊かな文化遺産の一部として、歴史的にも文化的にも重要な役割を果たしてきました。その美しさや独自の技術は、古くから日本人の心を捉え、現代においても多くの人々に愛され続けています。

藍染めの持つ青色は、日本の風土や四季の移り変わりを表現する重要な要素として、日本の文化に根付いています。伝統的な衣服や芸術品、工芸品における藍染めの利用は、日本の美意識や精神性を象徴し、その象徴性は現代においても色あせることはありません。

また、藍染めは現代のファッションやインテリアデザイン、クラフトなど、さまざまな分野で活用されています。伝統的な技術と現代のニーズとが融合し、新たな魅力的な作品が生み出されています。さらに、伝統技術の保存と復興に向けた取り組みが進められており、藍染めの技術と文化が次世代に受け継がれることが期待されています。


嶋田 拓真
1996年生。大学在学中に藍染に興味を持ち、日本の藍の産地である徳島県で3年間勉強をした後、2024年に独立。現在は地元である滋賀県で藍の栽培から染色までをおこなっている。
Instagram:https://www.instagram.com/takuindigo



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