見出し画像

『空風』の舞台裏

はじめに

「♡いいね!」からお越しの皆さま、はじめまして。琴葉葵『空風』をご視聴下さり誠にありがとうございます。作曲者の如才(ジョサイ)と申します。

noteをからお読みの皆さまは是非こちらの動画を先にご覧ください。

さて、本記事では『空風』という楽曲が私にとってどういうものであったのかを書き連ねていこうと思います。少々長くなりますが、お付き合いくださると幸いです。

制作の経緯

『空風』は本来生まれ得なかった楽曲です。

正確には、私はボカコレ2021秋に参加するつもりがありませんでした。その前回にあたるボカコレ2021春の経験から、普段楽曲投稿していないアカウントで参加するメリットが薄いと思っていたからです。

そんな折、私がいつも動画を作っているソフトウェアトーク(VOCEROIDなどのお喋りをするソフト)界隈の投稿者仲間であるいとーじさんから、ボカコレ参加曲でライブ公開のリレーをする企画に誘われることになります。

正直に言うと、私1人の実力ではこのお誘いをいただいたタイミング(8/13)からボカコレ(10/14〜17)までに楽曲制作〜動画制作までを満足いくレベルで終わらせることは不可能でした。(もちろんどこかでクオリティを落とせば可能ですが、ボカコレはそんな甘い場ではありません。)

ですがVOCALOID方面からではなく、ソフトウェアトーク方面からボカコレに参加するのは非常に興味を惹かれました。

「もし制作に協力してくれる方が見つかれば......参加してみたい!」

私はそう思って、かねてより何かを一緒に作りたかった方や、一方的に作品が好きな方に声をかけることになりました。

このnoteをご覧の方はご存知でしょうが、結論から申し上げれば、心強いメンバーを4人、無事共作者としてお招きすることができ、参加を決定しました。

このような経緯で、ボカコレ2021秋に私たちは挑むことになります......。

コンセプト

作品作りの際に私はまず「誰に向けて作るか」を考えます。最終的に届く人(視聴者)ではなく、最初に受け取る人です。納品先と言ってもいいでしょう。

今回は、ライブ公開リレーの企画者いとーじさんと、その企画の参加者さんです。(お呼ばれした時は参加者が誰かは知りませんでしたが、ソフトウェアトーク関係の人だろうとは思っていました)

彼らに向けて曲を作るなら......。

そう考えた時に真っ先に考えついたのは「歌うボイスロイド」です。

詳しくは説明しません(できません)が、お喋りするソフトであるVOICEROIDを歌わせる技術があります。幸い、ボカコレのホームページを確認したところ、使用可能なソフト例に歌うボイスロイドが挙げられておりレギュレーション的にも十分。

歌うボイスロイドのオリジナル曲で参加することに決めました。

また、お誘いいただいた8月からは若干イメージしにくかったですが、ボカコレの時期(10/14〜17)に合わせた作品にもしたいと思いました。

他にも時間はこのくらいにしようとか、コード進行はこんなのを使おうとか、細かいコンセプトはありましたが、あまり文章にしても面白くなかったので割愛します。

こうして自分の中でのテーマを「秋に合う歌うボイスロイドの曲」に決めて制作に取り掛かりました。

共作者

先にも述べましたが、『空風』は共作者の方々がいなければ生まれませんでした。

歌うボイスロイド

特に、根幹のテーマに関わる歌うボイスロイドを作る技術が私にはありません。しかし、あまり迷いはありませんでした。

私には、好きな歌うボイスロイドの投稿者がいました。

私はお喋りのソフト(VOICEROID)にわざわざ歌わせる意味がそれまで理解できませんでしたが、その方の動画を見て歌うボイスロイドが「一つの表現手段なんだ」と感動させられました。

そんな方が零雅海星.exeさんです。

歌うボイスロイドで楽曲を作るなら、絶対にこの方に頼みたいと思っていました。

自分の中でコンセプトを決めた跡すぐに打診したところ、零雅さんからOKを貰えたのでボカコレ及びライブ公開リレー企画に参加することが決定しました。この方と一緒なら間違いなくいいものができる確信があったからです。

この依頼の直後にこちらの楽曲を投稿されていましたが、お願いして正解だったなと思える素敵な作品でした。

依頼した結果は……、やはり最高でした。

『空風』はボーカルからスタートする曲ですが、そのツカミから最後まで「再会は、ほんの少し悲しい」という楽曲の微妙な感情を最適に表現してくれています。個人的には1:58〜の静かなセクションが特に好きです。

作業もとても早かったですし、零雅さんの実力は私の想像より遥かに上でした。本当にこの楽曲に力を貸してくださってありがとうございました。

余談ですが、本件で直接喋るようになる前からこっそりTwitter好きでした。

イラスト

もう一つ、いわゆるボカロ曲に欠かせないものがあります。メインビジュアルとなるイラストですね。

私は音楽はある程度の専門性ありますし、動画制作は不可能ではないですが、イラストだけは全くの素人で毎回誰かに描いてもらっています。(ソフトウェアトークの動画を作る時も立ち絵はお借りしたものです)

今回はいつもお願いしてる人は諸事情で頼めない状況でしたので、少し悩みました。

動画のイラストを頼む相手に私が求めているのは、「動画内容に依らず、イラスト単体で惹きつけられること」と「構想のレベルで相談できること」です。

「動画内容に依らず、イラスト単体で惹きつけられること」とは、サムネイルが顕著ですが、そもそも動画ページを開かないと楽曲を聴いてもらうことはできないですし、視覚的に楽しさがないと動画として最後まで見ることができないという問題解決に必要な能力です。

そして「構想のレベルで相談できること」を大事にしているのは、私がイラストを全く描けないのでイメージを具現化する時に表現したいものを汲み取ってもらう必要があるのですが、話しやすさがないと相当能力が高くない限り「いいイラスト」にはなっても「私が求めてるイラスト」にするのが難しいからです。

どちらも兼ね備えている人を探した時に、一番に浮かんだのが陸りんさんでした。

この方の画力は本当に申し分ありません。『空風』の前に、ウマ娘のイラストでバズってたりもしましたね。

私は線がすごい特徴的で視線を掴む力が強いイラストレーターさんだと思っています。

そして、相談のしやすさも十分。実際にお会いしたともある方でしたし、楽しく作業できるだろうと予想していました。

実際に作業してみたら、相談のしやすさは想像以上でした。絵コンテを描いてくれたり、私の楽曲や歌詞の説明から視覚表現に適切に落とし込んでくれたり、本当にいい働きをしてくれました。視覚方面ではこの方がメインとなって作ってくれたようなものです。

これは笑い話なのですが、出身地の違いから、故郷のイメージが私が想像していたものよりもだいぶ田舎になったのは面白かったです。もちろんちゃんとそっちの方が対比もついていいという結論に至ったので、陸りんさんのイメージのままでいくことにしたのですが。

サムネイルになった穴が空いている琴葉葵が裸でセンシティブ判定食らう可能性もあるかなと思いましたけど、それ以上にイラストが良すぎてそんなもの気にならないと思えるくらいには大好きです。イラスト本当にありがとうございました。

ギター

デモの段階で、この楽曲はほんの少しの悲しさの中で揺れ動く微妙な気持ちを歌ったものになっていました。

音楽がわかる方なら、この曲の転調の多さにはすぐ気付くと思います。私の耳には同じに聴こえるのですが平行調との行き来(明るくなったり暗くなったりすること)を多用したりもしています。

ボーカルが入っているところは全部明るく、間奏の部分は全部暗いのです。

この暗い部分を「言葉に表せない感情」と決め、代わりにギターに歌わせることにしたのですが、自分のプレイスタイルとは少し違うなと感じました。(一応私もギターは弾けます)

これこそうまく言葉にできないのですが、ギタープレイにも「色」があり、私の色はこの曲の間奏に合うタイプではなかったのです。

もっと繊細なギター。そうイメージした時に、私の知り合いの中で1人候補がいました。

仮面の第六楽章さんです。

この方とは少し特殊な出会いをしていますが、私から見ればいわば「戦友」のような、そんな人物です。

過去作品で素晴らしいギターを打ち込みしているのや、演奏してみた動画を見ていて、仮面さんのプレイはまさにイメージ通りだなと思いました。

ご依頼したところ、とても快く引き受けてくださり、そして最高の音源をいただきました。

3回あるギターソロは作曲者としてはこの楽曲の真の主役に位置付けているのですが、見事それを演じ切ってくださいましたね。

この方のプレイを見て、イラスト担当の陸りんさんがイラストの一部を描き直してくれたりいい影響を与えてもくれました。

素敵な演奏をありがとうございました。「如才さんからの信頼に勝る報酬はありません」と仰ってくださったこと、きっと一生忘れません。最高のプレゼントでした。

動画

皆さまも、この10年くらいは素人制作であってもかなり動きのあるMVを見る機会が多いのではないでしょうか?

動画を視聴する側もだいぶ目が肥えていて、イラストが良くてもそれを活かす動画的な演出がないと物足りなくなっていることと思います。

私も動画投稿者の端くれなので多少なりとも編集はできます。

しかし「動画だけでも魅せられるか」と考えたときに、私には力不足であることを認めざるを得ません。

ボーカル音源、ギター音源、イラストを他の人に用意してもらって、その材料を最後に料理する人が台無しにするわけにもいきません。

そんなときに、茶色さんが文字演出だけでMVを作っていたのを思い出しました。

この「生きればいい」という曲を文字だけで表現した動画は、茶色さんの実力を知るには十分でした。

またこの方とは以前別の企画でも一緒に動画を作ったことがあり、発想力には信頼を置いていました。

依頼をお受けいただき、動画制作の会議をした一幕です。

まさに、こんな感じで会議は進んでいきました。アイデアと引き出しが本当にすごい方です。

もう一つ茶色さんにお願いした理由がありまして、この方のソフトウェアトーク投稿者内でのスター性(本来顔や声を隠して動画投稿できるのに、全て曝け出していることなどから投稿者の間で有名です)が、『空風』を最初に聴くであろうソフトウェアトーク方面の視聴者に刺さると思ったからです。予想通り発表時のリアクションも一番ありました。

この部分を投稿4時間前に書いているのですが、現在もまさに茶色さんはこの動画の作業中。最後まで頑張ってくれました。

『空風』メンバーで「やばいクレーマーのSUSURU TV」と「ラグトレイン音MAD」の話で盛り上がりましたが、まさか最後の最後で、

茶色さん「俺の動画次第でこの企画潰すことだってできるんだぞってことで......」

になるとは。(もちろん冗談です)またこのメンバーでの雑談から実写のラグトレイン動画も生まれました。

本当に楽しい時間とカッコいい動画演出をありがとうございました。

最後に

さて、ながなが語ってきた通り『空風』はもう私だけの作品ではありません。故に自信を持っていい動画だと言えます。

ここまで読んでくださった方なら、それぞれのメンバーがどんな仕事をしているのかまた動画を見たくなっていることでしょう。是非何度でも見返してこの作品を愛してください。

カバー等もしやすいように素材は動画説明文に置いてありますのでお使いください。もし何か二次的な創作をなさった場合はお声がけくだされば喜んで拝見いたします。個人的には零雅さんに挑戦してみた!って言って歌うボイスロイドカバーとかしてくれると嬉しいな〜なんて。

ということで、『空風』の舞台裏でした!ご覧くださりましてありがとうございました。また機会があればよろしくお願いいたします。

それでは!

原曲・オケ音源・svpファイルのダウンロードはコチラ
pass:karakaze
https://ux.getuploader.com/josiah/download/3


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?