ひとりぐらしのおもいで。


家を出るきっかけはよくあるパターンのひとつで。

当時28歳で初めて彼氏ができたからだった。

彼氏の行動力はとてもすごいもので、自分が住む部屋まであっという間に見つけてくれた。そこまでしてもらった嬉しさと申し訳無さ、そして人生はじめて自立できたうれしさと不安がごちゃまぜになりつつ、私は神奈川から四国へと旅立った。


早速部屋についてみると。

1LDK、南向きの部屋。おお!結構広い!と思ったのが最初の第一印象。 実家の自室が4畳半で、このスペースにベッドとタンスと机が置いてあり、かなりキツキツだったからかこの部屋が余計広く感じる。

家具は彼氏と彼氏の友人たちと一緒に、リサイクルショップで家具、生活道具一式を揃えたおかげでめちゃくちゃ安くすんだ。確か5万~6万くらいで殆ど揃ったのではなかったか。ちなみにその時揃えたものは一部、今でも使っている。

彼氏には住む場所だけでなく仕事まで世話になってしまった。彼も忙しいであろうに、自分の仕事の合間に色々駆け回ってくれた。


仕事が決まったあたりから色々と生活に雲行きが怪しくなってくる。

まず毎晩、実家の母から寂しいと泣きの電話が入るようになった。

「今まで一人になったことがないからさみしくてしょうがなくて…」

電話の向こうでそう話しながら最後はオイオイ泣いてる。まさかこんな展開になるとは全く予想もついておらず、絶句する私。えー…マジかよ…親が子離れしていないとは思わなかったぞ。

猫に慰めてもらったら…と期待するものの、ヤツは相変わらず押入れの中で寝ていたようだ。役に立たん猫め…

この状態が1週間くらい続いてやっと落ち着いたと思ったら、今度は隣に住む大学生くらいの男の子が、友人を呼んで酒盛りか何かはわからんが大騒ぎをするようになった。大体深夜2時ぐらいにギターの音が鳴って大声で数人で歌っている。苦情をいいに行きたくても初めてのことでどうしたらいいかわからないのもあり、さらに女一人だし怖くて行けず、部屋の壁に枕を投げつける日々が続いた。だいたい何でこの夜中にギターが!?ありえんやろ!!

これがまた数日続いた。いくらなんでも他の部屋から苦情がでないんだろうか…

当然睡眠不足が続いてるのでイライラしていたある日の休日。極めつけに実家の母から電話が。

「何の用?」

「あらやだ冷たいわねーあんたに手紙が来てるんだけど-○○くんって子から」

「(○○…ああなんかいたなそんな人)うん、知ってるけど。部屋に置いといて。帰ったら読むから」

「男の子から手紙なんて珍しいし早く返事書かないとだめじゃない?だから読んでみたんだけどー」

「はっ?(ほんとにこんな声出た)」

「『おぼえてくれているでしょうか。○○です。学校では友だちになってくれて楽しかったです。実は前からあなたのことが…』きゃーーーーーラブレターじゃない良かったわね!まさかあんたにこんなのくるなんてねえ…」といいつつ楽しそうに笑っている。

「ちょっと何やってんの!?なに勝手に人の手紙読んでんだよ!」

「だってあんた家を出て、いないんだからしょうがないじゃない 返事のこともあるし」母、まだ笑っている。

「そういう問題じゃないだろーが!このクソババア!!」

クソババアとか言ったのは果たして何年ぶりか。そして怒りながら泣いた。まず溢れ出る涙が止まらずそのまま抗議した。手紙の内容はともかく笑いながら人の手紙を電話で読み上げるとか正直人間性を疑う。泣いて怒っても母には通じず、何本気になって怒ってるの~ という程度だったので、本気で腹が立った私は電話をぶち切り、母がある意味頭が上がらない、私の姉に泣きついたのだった。姉は呆れて物が言えない様子だったがとにかく私の言い分を理解してくれ、折返して母に抗議してくれたのだった。

母よ。いくら家族でも人の手紙を無断で勝手に開けるのは犯罪だぞ…

その後も、通勤や生活に必須な自転車にいたずらされて、それが何ヶ月も続いたりと、まあとにかくトラブルが絶えない部屋であった。なんか呪われてるんではと言われても納得がいくレベルなんだが、本当にあの時は何もかも初めてでどうしていいかわからず、ほとんど我慢していたような気が…。結局仕事もあまりうまく行かずに、1年ちょいでこの生活は幕を閉じることとなる。


やっとこうやって笑って話せるようになったよな。あの頃の私は若かったわ。








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