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【ネタバレ注意】『NOPE/ノープ』 (2022年) プチ考察

 こちらに記事を投稿するのは久しぶりだが、『NOPE/ノープ』 (2022年) を観て思うところがあったため、覚書として短文を載せる。


 この映画自体、映画撮影の歴史を強く意識して制作されているというのは想像に難くない。
 デジタル化された世界で電力がうしなわれたときに可能となるのが、過去の技術の再評価だ。
 馬、フィルム、手回しカメラ……それらはかつて兄妹の無名の祖先が撮影にかかわった、映画の黎明期の技術や、アメリカで多数撮影されていた西部劇などを想起させるだろう。

 宇宙人(Gジャン)を動物と同じと認識したことで、OJたちは「視線を合わせてはいけない」という危険を回避するすべを編み出した。
 これは世界各地の民話や神話にある「見るなのタブー」も彷彿とさせる。
 彼らは宇宙人(Gジャン)を動画や静画などにおさめようとしたが、それらを撮るためのカメラを通して、撮影者は宇宙人(Gジャン)を見る。
 カメラのレンズは撮影者の目でもある。だから目を閉じて撮影することなど、撮影者にはできないのだ。

 また、宇宙人(Gジャン)の口は目玉も兼ねており、視線を感じて捕食しようとするときに、彼もまた人間などの捕食対象者を見ていることになる。これは、ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督作『DUNE/デューン 砂の惑星』 (2021年) のサンドワームの描写でも使われていた観念である。

 ちなみに、ジュープのチンパンジーとの過去の話は必要なのか考えてみたが、あの経験がなければ彼は宇宙人(Gジャン)をあんなに直視しなかっただろう。
 生還体験があったからこそ彼は“見た” し、それを死につながるタブーとも思わなかったし、あろうことか手懐けようとまでした。だからこそジュープのパートでは、チンパンジーの描写が必要だったのだ。

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