FWCI, Top10%論文、Qrank、Top10%補正論文についてまとめた


この記事で説明していること

最近はSCOPUSなどで、自分の評価が数値化・可視化され、その順位が低く悲しい気持ちになります。科学者の評価基準として「FWCI,TOP10%論文やQrankが重要」とは聞きますが、これらがどういったものかをしっかり理解していなかったため備忘録として記載します。間違いなどありましたらご指摘をお願いいたします。
またこれを調べることで「雑誌の選定って大事!」と思いましたので共有いたします。

FWCI, Top10%論文、QrankはElsevier(SCOPUS-ASJC)の基準、Top 10%補正論文はClarivate(Web of Science-SCIE)の基準

ElsevierとClarivateで分野分けと基準は違う!

Elsevier(SCOPUS-ASJC)の基準

☑FWCI(Field-Weighted Citation Impact):
ElsevierのScopusやSciValで使用される指標です。分野、出版年、論文の種類に基づいて被引用数を標準化し、論文の相対的な引用インパクトを評価。

☑ Top 10%論文:
Elsevierのデータベースで、被引用数が同じ分野と年次の上位10%に入る論文

☑ Qrank:
ジャーナルをその分野内での影響度に基づいて四分位(Q1, Q2, Q3, Q4)にランク付けする

Clarivate(Web of Science-SCIE)の基準

☑ Top 10%補正論文:
ClarivateのInCitesで使用される指標です。これは、分野や出版年ごとに標準化された被引用数を基に、上位10%に入る論文を特定します。FWCIと同様の概念を持ち、分野間の公平な比較を可能にします。

☑Journal Impact Factor Quartile
ジャーナルをその分野内でのインパクトファクターに基づいて四分位(Q1, Q2, Q3, Q4)にランク付けするもの。

CiteScoreとIFの違い

CiteScoreはElsevierのScopusデータベースで使用されるジャーナルの評価指標です。CiteScoreは、以下のように計算されます。
計算方法

  • CiteScore = 対象期間内の全引用数 ÷ 対象期間内の全出版物数

  • 対象期間は直近の4年間(計算対象年を含む)。

インパクトファクター(Impact Factor, IF)はClarivateのJournal Citation Reports (JCR)で使用されるジャーナルの評価指標です。インパクトファクターは、以下のように計算されます。
計算方法

  • IF = 対象年の引用数 ÷ 対象年の前2年間の発表論文数

  • 対象年の引用数は、対象年の論文が前2年間に発表された論文をどれだけ引用したかに基づく。

Q1,Q2,Q3,Q4って?

ElsevierとClarivateの両方でQ1,Q2,Q3,Q4と雑誌を評価していますが、ElsevierではQrankと読んでおり、これはCiteScoreに基づいて、各分野内でのジャーナルの相対的な影響力を評価するものです。ClarivateではJournal Impact Factor Quartileと読んでおり、これはジャーナルのインパクトファクター(Impact Factor, IF)に基づいて、各分野内でのジャーナルの相対的な影響力を評価するものです。

共通する指標_h-index

h-indexは、ある研究者の学術的な影響力を評価するための指標です。物理学者のJorge E. Hirschによって提案されました。この指標は、以下のように計算されます。

  1. 定義

    • h-indexは、ある研究者がh本の論文を発表し、その全ての論文がそれぞれ少なくともh回引用されている場合に、その研究者のh-indexはhです。

    • 例えば、h-indexが10の研究者は、少なくとも10本の論文がそれぞれ10回以上引用されていることを意味します。

  2. 計算方法

    • 研究者の全ての論文を引用数の多い順に並べます。

    • 引用数が論文の順位(1番目の論文、2番目の論文、…)以上である最大の順位がh-indexです。

特定の出版社やデータベース固有の指標ではなく、一般的な学術的な影響力を評価するための指標です。

分野はどのように分けられるの?

ElsevierとClarivateでは雑誌を分類する分野が異なります!FWCI,top10%論文、Qrankなどはどれも分野ごとに評価しますので、この分類分けを把握しておくことはとても重要です。

Elsevierの分野

SCOPUS-ASJC (All Science Journal Classification)
**SCOPUS-ASJC(All Science Journal Classification)**は、ElsevierのデータベースであるScopusにおけるジャーナルの分類システムです。

詳細はこちら


Web of Science-SCIE (Science Citation Index Expanded)

**Web of Science-SCIE(Science Citation Index Expanded)**は、Clarivateが提供するデータベースであり、科学技術分野の主要なジャーナルの被引用数を追跡するためのインデックスです。


Journal of wood scienceの順位を調べてみる

私が投稿したことのあるjournal of wood scienceを例に、SCOPUS-ASJCとWeb of Science-SCIEそれぞれで順位を調べてみます

Web of Science (Clarivate)での調べ方

アクセスして、ジャーナル名を打ち込みます。

こちらをクリックすると、Categoryの詳細にアクセスできます

ジャーナルの順位が確認できます。Materials science, paper&woodの場合はjournal of wood scienceは5位、JIF QuartileはQ1です

SCOPUS(ELSEVIER)での調べ方

https://www.scopus.com/search/form.uri?

まずは分野での調査方法です。アクセスして①収録をクリック、②分野を選択し、③調べたい分野を選択します。


順位が表示されます。ここではForestry,Biomaterialsの例を示します。

次に雑誌の調査方法です。①収録をクリック、②タイトルを選択し、③調べたい雑誌を打ち込みます

Journal of wood scienceはForestryでは26位、Biomaterialでは66位であることが分かります。



引用数が同じ場合どの雑誌に投稿すると10%論文を獲得できるか?

ここまで示したように、Top 10%論文やTop 10%補正論文は分野ごとに決められます。ElsevierではSCOPUS-ASJC、ClarivateではWeb of Science-SCIEという分類です。Web of Science-SCIEのほうがより細かく分類されているようです。

引用数が同じであっても、雑誌(分野)によって10%論文に入るかどうかは変わる

以下は私が調べたSCOPUS-ASJCの大分野Agricultural and Biological Sciencesに所属するそれぞれの小分野で、最もCiteScoreの高い雑誌を棒グラフで示したものです(2024年7月)。これを見ると、同じ引用数であってもHoricultureに属する雑誌に投稿すると10%論文に入る可能性が高く、Insect Sciencesに属する雑誌に投稿するとその可能性は低くなります。
もちろん一つの雑誌が複数の分野で登録されていることもあります。

このように見ていくと投稿する雑誌の選択は非常に重要であることが分かります。皆さんが丹精込めて執筆した論文が高く評価されるためには、雑誌の選択も非常に重要になります。
私自身はこういった戦略は苦手で、忌避するものではありますが、IFや10%論文、Qrankなどで個人の業績が評価される以上は、こちらもある程度対策する必要があるように思います。


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