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すみません!

 欧米のレストランでは、ウェイターやウェイトレスを気軽に「すみません!」と呼べません。実は私、最近立て続けにこの話題を色々なところで見聞きしました。ただこの話、事情を知らない方々にはもう少し詳しい解説が必要である気がします。

 この理由は一般的に、彼らを召使いのような、失礼で侮辱的な扱いを受けた気にさせるからだと言われています。しかし、日本人からすると本当に不思議ですよね。だって、給仕する=召使いやメイドの意味とほぼ同じ、お客様にはサービス全体を楽しんで頂くのが本来の仕事で、さらに欧米ではチップも重要な収入源のはずです。

 また、私は海外の飲食店では長く待たされるだけでなく、質に比べて値段が高い、好きな席を選べない、色々な面であまりに質素、問題を店やシェフに転嫁される、高額紙幣(例:100ドル札)を渡して客が怒られるなど、人種差別的(と感じる)言動・行動も含め、様々な不満を経験しました。⇒もちろん、良いこともたくさんありました!

 時には、料理の説明がよく分からず、食べ始めたら確認したいこともありますよね。チキンに美味しい特製だれを付けて食べても、そのたれの追加は簡単に頼めないのです。それで私は個人的に、欧米のあのテーブルは隔離された異質空間、つまりひたすら料理とスタッフを待たされる場所だとイメージしてしまうのです。

 私自身は、16歳でウェイターのアルバイトを始めました。両親が商売人で、接客には幼い頃から大きな関心があったのです。店長からは水を撒け!とよく言われ、グラスの水を補充しましたし、それ以外にもとにかく常に走り回っていた記憶があります。もちろん、ノーチップ!

 私は欧米からの友人に、チップを払わなかったことはある?と聞いてみたことが何度かありますが、答えはほぼゼロでした。ファストフード店などを除き、外食はチップが当然だと思っているのでしょう。一方、料理やサービスは如何でしたか?と聞かれてその場で文句を言う人はほぼいません。後から大いに愚痴を言い、二度とそこには足を運びません。

 欧米の飲食店では一般的に、一人が複数のテーブルを担当し、注文を取り、料理を運び、サービス全般の責任を持ちます。ただ、その対価としてチップを頂くのならば、もう少し笑顔で元気に、もっと頻繁に各担当テーブルに足を運ばなければその資格はないだろうと私は思います。

 実際にテーブルに誰も来てくれない場合、どんな時に困るでしょうか。とにかく「好きなタイミングで支払えない(=帰れない)」こと、これが一番です。食材や盛り付けに関する質問や要望などは、もはや些細なことに思えてきます。本当は、ウェイターとの会話も実に楽しくて、日本ではなかなかな味わえない貴重な経験なんですけどねぇ。

 ところで、英語でウェイト(=wait)と言えば1)待つという意味ですが、実は2)給仕するという意味もあります。ウェイター(=waiter)と言えば、もちろん給仕する人という意味ですね。ただ、私にとっては給仕されるはずの客側が、とんでもなく待たされる立派なウェイター(=待っている人・待ち人)である気がして納得できない訳です。

 個人的に私は、日本に長く住む外国人から、日本語も堪能で日本の文化もよ~く知っている彼らから、ウェイターを呼んでくれないか?と頼まれることがあります。日本の文化に浸りきった彼らでさえ、たった一言「すみません!」と発することが恥ずかしいからです。⇒ただし、私の発声がデカ過ぎて、怒鳴らないでくれ!とも言われます。

 食文化、飲食店でのサービス、ルールやマナーや習慣などが、日本と大きく違っていて面白い経験をすることが多々あります。また別の機会に、他の国や地域のご紹介ができればと願っています。

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