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週末の余談⑥ 「違いがわかる男」


ダバダ~ダバダ~ダ~というCMソングと共に各界の著名人が登場して「違いがわかる男」とナレーションが流れるテレビコマーシャル。30年以上も続き一世を風靡したネスカフェのCMをご記憶の方も多いかと思います。私も「違いがわかる男」になったような気分に浸ったり真似したり、いつになったら違いが分かるんだろうと自問自答したり・・・。

日本の経済発展、国際化と共にコミュニケーションという言葉が盛んに使われるようになりました。電通が新企業理念とスローガン「コミュニケーション・エクセレンス」を発表したのは、1986年。時代の先取りは凄い。広告会社からコミュニケーションカンパニーに生まれ変わる。
“Total Communications Service”の提供が新しい企業理念でした。
ビジネス雑誌では「電通のライバルは、もはや広告会社ではない」。企業トップがインタビューに答えていました。

コミュニケーションとは、「社会生活を営む人間の間で行われる知覚・感情・思考の伝達」と辞書には書いてある。語源は「コミュニス(共有する)」

人間、時間、空間や国際、学際、業際といった「間」と「際」を超えたアプローチににより共有したり共感したりすること、それは言葉を替えると感動をクリエイトしていくことではないか。そんなことを思いつつ、それは「違い」があるからではないか。「間」と「際」があるからこそコミュニケーションが求められる。

ビジネスは、そもそも「違い」=ギャップを利用して成り立っているとも言えます。
例えば、ユニクロは中国やベトナムといった人件費の安い国で製造し物価の高い日本で販売。物価のギャップ、地理的ギャップを利用しているとも言えます。また、コンサルタント会社は、ベテランのコンサルタントが統括し若いスタッフが作業をするから、その差額で大きな利益を生み出しているとも言えます。下請けへの発注も同様かもしれません。
人件費などコストのギャップを利用している。

国際社会で生きていくためには、日本人が不得意な「人と違う主張をする」「個性豊かな人材」が求められ、教育も「個性」を重視するようになりました。

養老孟司著「バカの壁」がベストセラーになりました。読んでいる時は分かったような気になるのですが、結局何が言いたいことか掴めず、消化不良の気分が続きました。
ある時、養老先生を招いてのセミナーに参加する機会がありました。

人間は言葉を共有して皆と同じようになろうとしたから、他の動物とは違う進化があった。つまり、共通言語を発展させ情報を共有したからこそ、人間は成長したとも言える。従って、他の人と違う個性豊かな人を育てようとする教育は、人間の成長過程をたどると間違いだと思っている。

人はそれぞれ既に生まれてきた時に充分な個性が備わっている。私は病院に勤務していたので、ある病棟に行くと多くの個性的な人達がいることを知っている。皆さん、同様な人を育てようとするんですか?と、問いたい。

個性は生まれた時から備わっているのだから、その後は他の人と同じことをするよう教育し努力することではないか。皆と同じことをしようと努力している人程、優秀と評価されていませんか?バカな人ほど、壁を作って共有しないのが実態ではありませんか?

この話を聞いて以来、人と違う人材を育てるのではなく、同じ情報を共有できるよう努力することこそ重要だと思うようになりました。

「違いがわかる男」は、違ってはいけないんです。

2020年8月17日