見出し画像

AZIKの発想をベースに、音読みの規則性に基づいた日本語入力配列を考えました


稲荷えもといいます。

昔から、親指シフトのNICOLAやら中指シフトの月配列やら、配列を覚えるのが楽しくて、色々試してきたのですが、少し前にローマ字入力拡張のAZIKを触った時の、1つのひらがなを1つのキーに割り当てるこれまでの発想と少し違う感覚が自分にとってとても自然で、気に入って使っていたのですが、もっと拡張する方法を思いついたので本格的に1から配列を考えてみました。(AZIKとは:AZIK総合解説書

ひとまず形になったので公開しますが、まだ検証はあまり進んでないので、とりあえずベータ版という感じです。あとから追記していくつもりです。

コンセプトは、「音読みの漢字が(たぶん)(今んところ)例外なく3打以内で打てる」「子音でシフトして母音(+パッチム)を打つ感覚に従う」ことです(パッチムに関してはあとで説明します)。

(「その発想の配列、もうありますよ(小声)」という方がいれば小声で教えてください。。。)

レイアウト

稲荷式

使い方

まず、ベージュのキーが子音、赤が母音、紫と青は後述する「パッチム」です。

なので、まず直感的に単体で「あ」と打ったり、「た行」+「あ」で「た」と打ったりする通常のローマ字入力ができます。

前述のようにこの配列のコンセプトのひとつは、「子音でシフトして母音を打つ」というものです。普段はそんなこと意識しないと思いますが、普通にローマ字入力をしているときも、例えば「た」と打つときは、た行の子音を打ってから「あ」と打つことで「た」と出力されているわけです。

そして、例えば「た行」のようなベージュの子音キーを押すと、各キーは下図の「子音シフト」レイヤーに「シフト」します。なので、子音キーを打ったあとの「あ」は、「子音シフト」レイヤーの「あ」だったというわけです。

「子音シフト」レイヤー

子音シフトレイヤー

子音シフトレイヤーには、「あ~お」の他に、まずAZIKで使う「母音+ん」と、二重母音キーがあります。AZIKでは母音の代わりに母音周りの子音キー(「あん」なら「a」の代わりに「z」)を押すことで「母音+ん」や「二重母音」を実現していたわけですが、この配列は基本交互打鍵なので、子音を右手、子音を左手に集めており、母音の周りが母音なので、代わりに母音を反転させた位置に「母音+ん」を配置しています。これなら直感的に理解できるはずです。二重母音は単に規則的に並べています。

続いて、「ゃゅょ」キーと、「ゃゅょ+ん」キー、「ゃい」「ゅう」「ょう」キーがあります。

AZIKでは拗音は「しゃ行」「ちゃ行」以外は通常のローマ字入力のように子音のあとに「y」を打ったり、互換キーとして「g」があったりしました。この配列では、「ゃ~ょ」キーを「子音シフト」レイヤーに配置することで、「拗音+母音」を1キーで打てるようになっています。

ですが本来、例えば「きゃ」は「k」+「y」+「あ」なので、「拗音+母音」というのは子音でシフトして母音を打つというコンセプトに若干反するところがあります。なので、できれば「ゃ~ょ」キーは使わず、「きゃ」行、「ぎゃ」行、「しゃ」行...+「あ~お」キーで打てたら一番いいのですが、それはさすがに10x3に収まらず、このような形になっています。(これもきれいにまとまっているので気に入ってはいます)。

「ゃ~ょ」「ゃ~ょ+ん」は「子音シフト」レイヤーのみにあるので、文頭で出力されて読めない日本語が生成されたりすることはありません。

「ウンチクキツイ」の話

ここからは、「音読みの漢字が3打以内で打てる」というコンセプトについての話です。

結論から言うと、音読みの漢字で読みが2拍(「食(ショク)」などは3文字だけど2拍)のものは2拍めの文字が例外なく「ウンチクキツイ」のどれかになるらしいのです。

【分かりやすい】音読みと訓読みの区別【見分け方】

漢字音表 - 字音仮名遣い

AZIKでは、前述のように母音の代わりに母音周りの子音キーを押すことで「母音+ん」や「二重母音」が打てるというのが目玉ポイントでした。
これによって、例えば「反抗期」などのワードが「h+あん+k+おう+k+い」の6打で打てます。漢字1字は2打で打てているわけです。

では、「中学生」ではどうでしょうか?「中」と「生」は2打ずつ(「中」に関しては、AZIKには「ちゃ」行キーがあるので「ちゃ+うう」で2打)ですが、「学」は普通に4打になってしまいますね。

ところで、「○ク」という読みの漢字ってよく見かけませんか?「学(ガク)」とか、「食(ショク)」とか。で、調べてみてわかったのが「ウンチクキツイ」の話です。

ここでまず説明したいのが「パッチム」の話です。

パッチムというのは韓国語のハングルの用語なのですが、大学でちょっと韓国語をかじったときの知識によると、韓国語では日本語と同じ漢字が使われていて、例えば「大学」は「대학(テハク)」、「学生」は「학생(ハクセン)」で、それぞれ「大」が「대(テ)」、「学」が「학(ハク)」、「生」が「생(セン)」です。で例えば「学」の「학(ハク)」なら「ㅎ」が「ハ」のhで、「ㅏ」が「あ」、「ㄱ」が「ク」のkです。「ハク」と書いていますが子音のkで止まるのが正解です。でこの場合「ㄱ」がパッチムにあたります。つまり、韓国語での漢字語はすべて、「子音+母音(+パッチム)」で表されます。これで1文字です。

で、ここからは僕の想像なのですが、おそらく日本語の音読みの2文字目も、子音で止まらず母音まで発音はするものの、「ウンチクキツイ」の7種類しかないということはパッチム的な発音なのではないかと思うのです(パッチムも数えるほどの種類しかないので)。というか、音読みは中国での発音を元にしたものなので、おそらく中国語がそういう読みをするんだと思います。中国語はまったくやったことがないのでわからないのですが。。。

ということで、紫のキーはパッチム用のキーです。

あと、二重母音に関してですが、AZIKの二重母音がなぜ「あい」「うう」「えい」「おう」だけで、他に例えば「笑う」の「あう」とか、あと「いい」とかがないのかというと、おそらく音読みの漢字で二重母音のものがこのパターンしかないからなんだと思っています(ソースはありませんが)。

子音+母音(+パッチム)という感覚

まず、ベージュで子音扱いになっている「喉」キーについてですが、これは、「あ行」でもAZIK的打ち方をするためのキーです。

AZIKでは、子音のあとに母音下のキーを打つことで「母音+ん」を一打で打つことを実現しています。しかし、あ行ではできないので普通に母音のあとに「ん」を打つことになっています。ですが、個人的にはこれがあまりにもそれ以外のときの感覚と異なるのです。ところで、文頭であ行の発音をするときみなさんどうしますか?たぶん、一度喉を絞めて空気をせき止めてから解放すると思います。なので、これを「喉を絞める子音」とみなして、あ行で「母音+ん」や二重母音を打つときは、子音として「ン|二重」キーを押すことにします。あ行であれば普通に単体で打つときと打鍵数は変わりませんが、他の行と感覚が同じになるのでこの方法で打つことをおすすめします。

次に、パッチム用のキーの使い方を説明します。

まず普通にパッチムキーを「ツ」とか「ク」とかの単体のキーにしようと思ったのですが、それだと10x3に収まりませんでした。なので、ひとつのキーにふたつのパッチムの役割を持たせるべく、次の方法をとります。

まず、「キ|ク」「チ|ツ」キーのうち、左の「キ」「チ」は、単体の母音キーである「あ」「い」「う」「え」「お」「ゃ」「ゅ」「ょ」の前にそれぞれのキーを挟むことで、たとえば「さ行」「チ|ツ」「あ」と打てば「サチ」になります。

では右の「ク」「ツ」はどうするのかというと、全然関係ないところに配置することもできるのですが、ここでは直感的に打つために、「母音+ん」のときと同じように母音を反転させた場所を打ちます。こうすることで、直感的にひとつのキーにふたつのパッチムの役割を持たせることができます。
母音の前にキーを挟む方式であれば、あ行でも実装できるので他の行と同じように打てます。

また、AZIKの「子音」+「母音+ん」や「子音」+「二重母音」のときのように「子音」+「母音+キ/ク/チ/ツ」も2打で打てないかと考えてみたのですが、これは原理的に10x3に収まらないので無理でした。「ゃ」「ゅ」「ょ」を廃止して、例えば「きゃ」を「k」「y」「あ」のように子音を2回シフトする方式にする方法も考えてみましたが、これでもやはり10x3には収まりませんでした。それに、この場合だと結局3打になるキーが出てくるのであまり今のと変わらないと思います。

「母音の前にキーを挟む」とは言いましたが、これは実際に使うときの感覚とは少し違って、実際には「パッチムキー」+「母音」が1アクションという感じです。具体的な考え方としては、パッチムキーを押すと母音のキーが「母音+パッチム」にシフトするということです(下図)。

「キ|ク」シフトレイヤー

「キ|ク」シフトレイヤー

「チ|ツ」シフトレイヤー

「チ|ツ」シフトレイヤー

「子音でシフトして、さらに母音前のキーで母音を『母音+パッチム』にシフトさせてそれを打つ」という感じですね。「パッチムは母音より後なのに前に置くのは不自然ではないか」とも思ったのですが、例えばAZIKで「kz」で「かん」と打つときも、母音の「a」を押す前に「z」を押すという判断をしているわけで、これに特に違和感なく馴染めているので問題ないと思います。

「ッ」「ー(長音)」も「キ|ク」「チ|ツ」と同じように「ッ|ー」キーとして実装しようかと思ったのですが、この場合あ行を打つときに「喉キー」「シフト」「あ~お」となって単体で「っ」「ー」と実装する場合より打鍵数が増えてしまうのと、その場合結局単体でも打てるように単体キーを実装しないといけないので、青色の「ッ」「ー」「ン」は単体で配置することにしました(「ン」に関しては喉キーを使えば他の行と同じように2打で打てるのですが、「ン」が単体で打てないというのは不便なので一応単体を配置しています)。

まとめると、もともと普通のローマ字入力で3打で打てるもの(例:カン(kan)など)は2打(「か行」+「あん」)、4or5打で打てるもの(例:ショク(syoku)など)はパッチムシフトを挟んで3打(「さ行」+「キ|ク」+「ョク」。前者はAZIKで実装されたもので、後者がこの配列で考えた拡張です。ちなみに、後者の場合は母音行を打つときに「喉」キーは必要ありません。

外来語系の発音について

外来語を打つときは、子音キーの前に「外来語シフト」キーを打つことで、子音が外来語系の子音になります。例えば、普通に「だ行」+「い」、「だ行」+「う」を打てば「ぢ」、「づ」になりますが、「外来語シフト」+「だ行」+「い」、「外来語シフト」+「だ行」+「う」とすると「ディ」「ドゥ」になります。「デュ」は「外来語シフト」+「だ行」+「ゅ」です。カタカナで書くとなんだか規則的でないように見えますが、英語の発音記号を見れば実は単純だということがわかると思います。
同様に「う゛ぁ」は「外来語シフト」+「ば行」+「あ」になります。

実装について

実装に関してですが、日本語入力は何もせずともIMEというエミュレータみたいなものを挟んでいるのに、配列を実装するためにもうひとつエミュレータを挟まないといけないとなるとやめようかな。。。となっちゃう人がいるかもしれません(ぼく)。ですが、この配列では前置シフトしか使っていないので、後置シフト(かな入力のように、例えば「か」と打ったあとに濁点キーを押したら「か」が「が」になるタイプのシフト)を実装できる機能がなくてもローマ字ルールを編集できる一般的なIMEであれば実装できるはずです。なので、エミュレータは必要ありません✌✌ヤッター!!
僕はMacのかわせみ3で実装し、問題なく機能しています。

そのほかの話

子音、母音の配置に関しては、使用頻度表を参考にはしましたが、あまり深くは考えていないのでこの並びにはそこまでこだわりはありません。ただ、薙刀式の「『あ』は利き手の人差し指に置くべき」という考え方がしっくり来たのでそこだけ少しこだわっています。

とくに「あ」を右手人差し指に置くのは、
僕のこだわりです(左利きの人は左右逆で考えてください)。
「原初の音」を「利き手の最初の指」におくべき。
自分の意志を示すのが言葉の原初だ。
暗闇に向かって私が最初に投げた言葉とは「あああああ」だ、
それが出来なくて何が筆記具か。
そういう思いからです。

【カタナ式ファミリー】カナ配列「薙刀式」

この記事の通り、右利きの方はこの配列をひっくり返した左右反転のものを使うほうがいいと思います。
日本語は子音が英語などに比べて弱いので、しゃべるときに子音に込めるパワーはあまり子音ごとに差は出ないかもしれませんが、パワーのいる子音を打鍵コストの高い位置(「p」とか「y」とかの位置)に置いたらしゃべる感じに近づくのかもしれません(まだ試してませんが)。


人が言葉をしゃべるとき、子音で音をせき止めてから解放して母音を出しますよね。つまりこれは、子音でシフトして母音を出しているということだと思うんです。

前置シフト(プリフィクスシフト)

通常の「シフトキー」でのシフトは、キーを押している間に働きます。

シフト押す → キー押す → キー離す → シフト離す

これに対してプリフィックスシフトというのは、シフトに使うキーを押した後、次のキーにシフトがかかります。

シフト押す → シフト離す → キー押す → キー離す

ローマ字入力で、子音を前置シフトだと捉える事も出来ます。(母音を後置シフトだととらえることも可能。)

中指前置シフト新JIS「月配列」
だから、ローマ字入力というのは意外と悪くない仕組みなんだと思います。

あと、左下のブランクキーは、そのままブランクです。SKKユーザーであれば、これらを変換の順次シフトキーとカタカナシフトキーに割り当てれば非常にきれいに収まるのでおすすめですが、他の使い方もあると思います(Google日本語入力みたいにzh、zj、zk、zlで←↓↑→にするとか)。

まとめ

最後に、配列の名前ですが、あんまり日本語入力の配列で自分の名前を付けてる人がいないのでおこがましいのですが、ひとまず「稲荷式」と呼ぶことにします。。

言いたいことをひと通り全部書いたつもりですが、それに囚われてあまり読みやすい文章ではないかもしれません。落ちついてきたらまたまとめ直そうと思います。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?