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とある日


 日の出と共に目が醒める。南側カーテンの隙間からは朝陽が斜めに差し込む。乱反射する埃だって間接照明として美しく機能するなぁと、薄ぼんやりした脳内は今日も絶好調にロマンチストで居てくれている。
 歯を磨き洗顔をする。ラジオからは調子の良いパーソナリティが嘘のような明るさでリスナーからの便りを読み上げる。
「……それでは『ギガ山油ドカ淀み涎之助』さんからのリクエストで、青山テルマ Feat.Souljaで『そばにいるね』をどうぞ」
 およそ朝には似つかない選曲に呆れながらフライパンに卵を落とす。160℃にまで上昇したサラダ油で半身浴をする産まれ損ねた鶏のグロテスクに泡立つ様が妙にエロい。5枚切りのトーストに目玉焼きを乗せてオリーブオイルと塩をかけて頬張る。用意しておいた深煎りブラックコーヒーがマグの半分くらいになる頃には騒がしいギターソロ(80年代の洋楽ロック、らしい)がラジオから流れていた。
 食後軽い運動をしてからデスクに向かう。ドラムの打ち込み作業が終わったから、ギターを録音する。メンバーに送る程度のデモだからと言い訳をし、下手くそのままテイクを終了する。几帳面にトラックの色をわけてみる。ベースは大好きな赤色にした。赤色は沸騰して僕の顔に降り注ぐ。
 早くシャワーを浴びなくてはいけない。僕は立ち上がると外科医にビンタをされて、「今は手術中ですよ!」と怒鳴られてしまった。大人しくメス握りしめて自分の右目に思い切りよくブッ刺した所で目が醒める。


おねしょしなくて良かった。
みんなはどんな夢を見る?


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