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今すぐ見られる! アカデミー賞短編ドキュメンタリー部門受賞作(2018年~22年)

こんにちは、inaho Filmです。

前回の投稿ではアカデミー賞長編ドキュメンタリー部門を取り上げましたが、今日は2018年~22年の同短編ドキュメンタリー部門受賞昨品をご紹介させてください。

主な違いとして、40分以上が長編、それ以下が短編として扱われているようです。
予告編だけではなく、全編をYouTubeで視聴できるものもありますので、ぜひご覧になってみてください!残念ながら日本語字幕はありませんが、ほとんどの作品で英語字幕の表示が可能です。

【2022年】『The Queen of Basketball』※予告編、全編/英語字幕表示可能

1976年のオリンピック女子バスケットボール競技に出場してチームに初得点をもたらし、その後女性で唯一NBAドラフトで指名された選手として知られるLusia Harris氏。現役選手当時、アメリカの女子プロバスケットボールリーグ(WNBA)がまだ設立されていなかったことから、彼女はプロの道を断念してコーチとなり、家庭に入る道を選択しました。
 
本作品は、Harris氏のインタビューが大部分を占めています。彼女は輝かしい実績と実力を持っていながらも夢を諦めざるを得なかった自身の過去を振り返り、大いに活躍すると同時に莫大な収入を得る男性プロ選手に対し、敬意と憧れ、羨望の入り混じった複雑な心情を吐露します。それでも彼女は笑顔を絶やすことなく、ユーモアあふれる語りに後悔の色は見られません。
 
時代的・社会的な背景とともに彼女の人生を映すにとどまらず、一人ひとりにとっての幸せのかたちやその多様さについて考える機会を与えてくれる作品です。

【2021年】『Colette』※予告編、全編/英語字幕表示可能

本作品の主人公であるColette Marin-Catherine氏は、第二次世界大戦中にフランスがナチス・ドイツに侵略された頃にレジスタンス組織の一員となりました。しかし、彼女の兄はドイツにある戦闘機を作る強制収容所へ送られ、そこで過酷な労働の末に命を落とします。
 
以来、ドイツに足を踏み入れることのなかったCatherine氏は、平和な未来のためにかつての歴史を研究する女学生との出会いを経て、彼女とともに兄が亡くなった地を訪れることを決心。痛ましい過去に直面せざるを得ない旅の道中、Catherine氏は戦時中におけるレジスタンス活動や家族との思い出を語ります。
 
どれだけ時間が経っても消えることのない過去の記憶と実状を受け入れることで、ある種のSalvation(救い)を得る2人の姿をとおして、「乗り越え、伝え、歩み続ける」という普遍的なテーマが描かれています。

【2020年】『Learning to Skateboard in a Warzone (If You're a Girl)』※予告編/英語字幕表示可能

長らく戦禍の続くアフガニスタン。そこで生きる女性たちは、タリバン政権の女性抑圧政策のもと、「学ぶこと」自体を制限されてきました。本作品では、アフガニスタンの特に貧しい少女たちに読み書きを教え、男性のスポーツとされるスケートボードを敢えて授業に取り入れているNPOスクールの歩みが描かれています。
 
負の時代を乗り越え自信を育んでゆく少女たちの屈託のない笑顔が非常に印象的で、日常的に命の危険や出自による壁を突きつけられることのない(筆者含む)人々にとっては目から鱗であり、視野と思慮を広げてくれるドキュメンタリー作品です。

【2019年】『Period. End of Sentence. / ピリオド -羽ばたく女性たち-』※予告編/英語字幕表示可能、本編/日本語字幕表示可能
Netflixでも予告編と本編を日本語字幕で視聴可能)

原題を直訳すると、「もうここまで、以上。」となりますが、”Period”という単語には「生理、月経」という意味もあり、二重の意味が込められたタイトルの作品です。
 
取り上げられているのは、現代においても外出や学習、労働の機会を制限されているインドの女性たち。同国では生理について語ることがタブーとされており、男女を問わず大多数の人々が、それに関する知識を(必然的に)持っていません。そうした中、生理用ナプキンを製造・販売する女性団体が立ち上げられることとなり、彼女たちは様々な困難を経ながらも、活き活きとした表情で変化を求めて突き進みます。
 
ストーリーの躍動感に加え、ヴィヴィッドなカラーやカメラワークが本作品独自の映像美を成しています。

【2018年】『Heaven is a Traffic Jam on the 405』※全編、英語字幕表示可能

もし話すことも書くことも、当たり前だと思っている動作を通じて、目の前にいる人とコミュニケーションすることができないとしたら?渦巻く感情を、自分の中だけで抱えておかなければならないとしたら?
 
そうした状況をおよそ10年にわたり続けてきたアーティスト、Mindy Alper氏が本作品の主人公です。様々な精神的ハンディキャップを抱えながら周囲の愛情を求めて生きてきた彼女は、アートという形で自らを表現する道を切り拓きます。本作品では、Alper氏の人生をとおして、アーティストに限らず、自己肯定感を持って自己を伝える(表現する)ことの尊さを美しく描き出されています。
 
ちなみに、タイトルに含まれる”Traffic Jam on the 405”は、アメリカのロサンゼルスを走る高速道路405号線の渋滞を指しており、その渋滞の中が、Alper氏にとってはアート以外で安心を得られる場であるとのこと。心安らぐ状況は、一人ひとりの個性と同様、非常に多様なものですね。

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2回に分けて、2018~2022年のアカデミー賞ドキュメンタリー部門(長編・短編)受賞作品を紹介してきましたが、どの作品も「葛藤、希望、歴史、心のつながり、女性、平等」など、内包されたテーマの力強さが印象的だと感じられました。

また、ドキュメンタリー×ストーリーテリングについても、非常に勉強になる(考えさせられる)作品ばかりで、2023年第95回アカデミー賞(3月23日開催予定)のラインナップがいよいよ楽しみです。

第95回アカデミー賞の最新情報については、ぜひ公式サイト(英語)をご覧ください。
日本語では、「AWARD WATCH」というアワード情報サイト も分かりやすくてオススメです。

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